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1章
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「うー、突然妊娠なんてどう思う?兄ちゃん!それもなんの前触れもなくだよ!そもそも相手は誰だよーー!ってか、いつの間に…!」
母さんの爆弾発言を受けて。
母さんは言うことだけ言ってスッキリしたのか、晴れやかな顔して俺たちを学校へ送り出した。
対して、俺たち双子はモヤモヤと不安に苛まれ中。
俺は俺で、母さんへの思いが止まらず兄ちゃんに話しかけ。
兄ちゃんは兄ちゃんで思う事があるのか、少し怒りのオーラが出ている…ような。
真面目な兄ちゃんだから、出来婚とか嫌いそうだしなぁ。
特に、兄ちゃんは俺や母さんを今まで死んでしまった父さんの代わりに見守ってくれたのは父さんなわけだし。
父さん、か…。
「ねぇ、兄ちゃん。母さんの相手、誰かな」
「さぁ…、検討がつかないな。ただ、お父さんが死んでもう長いから、お母さんに彼氏がいても不思議じゃないよ…」
兄ちゃんは、俺の問いかけに自分にもいいきかけるような口調で言った。
父さんが死んで…、もう何年経つんだっけ。
写真はあるんだけど、父さんの記憶が俺には全然残ってない。
兄ちゃんもみたいで、母さん曰く、父さんが死んだ時俺と兄ちゃんは凄いショックで高熱が何日も続いて、大変だったらしい。
特に兄ちゃんの状態は深刻だったみたいで、その時の酷いショックを受けた兄ちゃんを支えてはげましたのが小さい頃の〝俺〟らしい。
小さい頃は俺が兄ちゃんを支えていたんだって。
ほんとかなーって話だけどね。
母さんから聞いた話なんだけど、しっかりものの兄ちゃんが俺なんかを頼りにするなんて、ちょっと考えられない。
今の兄ちゃんは、しっかりしすぎていて、俺や母さんを引っ張ってくれる。
甘えるより、あれこれと世話することが板についたブラコンな兄ちゃん。
母さんの結婚も寂しいけど、俺は兄ちゃんが別の誰かと一緒になるほうが寂しく感じるかも。
なにせ、俺たちは双子なわけだし。いつもほとんどの時間、一緒なのだ。
そう、学校も同じ。俺たちは王蘭高校に通っている。
そこで兄ちゃんは、生徒会長様なんてものもやっているのだ。
兄ちゃんは、しっかりしているから、いろんな人から頼られている。
俺はー?
俺はいつか、兄ちゃんみたいになれるんだろうか。
母さんが出産して弟が出来たら、そしたらーーー
「おはよー!鈴!と里桜!」
「あ、剛、おはよー!」
はぁはぁ、と息を弾ませて自転車から降りて駆け寄ってくるのは、俺たちの幼馴染。
高橋剛だ。
今日もワックスでバッチリ立たせた髪が決まっている。
高校になってから、剛は強い男というものに憧れているみたいで、いつもバッチリ髪を固めて登校してくるのだ。
髪をおろすと、結構子供っぽい感じになるのが他人になめられるようで、いやらしい。
剛は、ヤクザの跡取りの息子だったりする。
なので、うちのものに示しがつかない、なんて高校に入ってから少し外見に気を使うようになったのだ。
ただ、組のみんなは剛が大好きみたいで、いつまでたっても可愛いボンって言っているんだけどね。
俺が言うのもなんだけど、剛って結構単純でバカな熱血男だからさ。
そういうのが、見ていて楽しいらしい。
腕っ節は強いのに、結構感動しいで、困った人がいたら放っておけない。
この前も道端で重い荷物を持ったおばあさんがいたら、荷物持ちで俺との待ち合わせに遅刻したくらいお人好しなのである。
「おはよ、剛」
むくれながら、剛に挨拶した兄ちゃんに剛はおや、と俺に目配せする。
「鈴、里桜でも喧嘩したのか?」
「ううん。原因は母ちゃん。
母ちゃんが再婚して、妊娠なんだって」
「そうかそうか。再婚で妊娠…ってええええ?薫さん、妊娠してんの?相手は誰だよ」
「知らない。今度、食事会があって、その時まで秘密だって。でも凄いいい人だって言ってたよ。それと、相手にも子供がいるみたい。俺たちより上だって」
「子供…?それって、男か?女か?一緒に住むとか、そんなことしないよな?そこで、恋に芽生えたりとか…、うわー考えただけで嫌だ。でも、鈴を見て落ちない人間がいるか?
こんな可愛い子が1つ屋根の下にいて、何もしない男がいるか?いや、いないだろう…」
ぶつくさ呟く剛に、呆れた視線を送る兄ちゃん。
そっか、再婚ってことは、相手の子供と一緒に住むかもってこともあるのか。
「り、鈴。どんなに再婚相手の子供がいい人でも、自分の部屋にあげるんじゃないぞ。男でも、女でも、だ」
「なんで?」
「なんででも!
ケーキとかに釣られて部屋に招いたら最後、美味しく食べられるのは鈴なんだからな」
「??ケーキ食べるんじゃないの?なんで、俺が食べられるのさ?へんな剛ー」
俺がケラケラ笑うと、剛は「鈍感」といってガックリと肩を落とした。
「ま、俺が日々餌付けしとけばいいか。ってことで、鈴。今日、ケーキショップ行かないか?駅前の」
「駅前のって、最近できたところだよねー!行きたかったんだー!行く行くー!」
「剛、あまり鈴にケーキ食べさせないでよ。鈴、いつも食べ過ぎて夕食たべれなくなるんだから…」
「兄ちゃん、余計なこと言わない!って、携帯鳴ってるよ?」
ピルピルと着信を告げる音に、兄ちゃんはごそごそとカバンを探る。
俺たちが何かあった時用に、母さんが兄ちゃんには携帯をもたせてるのだ。
俺は大体、剛か兄ちゃんと一緒にいるから、まだ持たせて貰えていない。
兄ちゃんは画面に映る文字を見て、一瞬、顔を潜めた。
「ちょっと寄るとこ有るから、鈴、剛と先に教室へ行っていて」
「兄ちゃんは?」
「雑用頼まれた」
そう云って、兄ちゃんは小走りに駆け出した。
「進級してから、やたら扱き使われてるよな里桜の奴」
「生徒会って忙しいんじゃない?」
なにせ、兄ちゃんは歴代の生徒会長の中でも優秀らしいからさ。
兄ちゃんが変えた改革のおかげで、校内での喧嘩は減ったし美化活動も盛んになったから去年に比べて凄く綺麗になった。 学校での問題も減ったようで、先生からも一目置かれている。
特に、担当であり生徒会顧問の小早川疾風先生は兄ちゃんのことをすごく頼りにしてて、校舎内でもよく2人でいるところを見かけた。
「それよりさ~鈴明日から3連休だぜ? どっか行かないか?」
「遊びに?」
昇降口で上履きに履き替えながら、剛を見上げる。
一重瞼にすっきりとした顔立ち。
家ではボン、なんて言って可愛がられれている剛だけど、空手もやっていて身体は凄く引き締まっている。小さい頃からやっている空手も、結構強いみたい。
そんな剛は、ワイルドなところが素敵、なんて女の子のファンもいる。
だけど、休みの日は女の子と遊んだりせず、大抵俺とかクラスメートの友達と遊んでいる。
女の子に興味、ないのかなー。
「明日7月14日じゃん?、2人でさ~出掛けねぇ? それとほら。もう直ぐ夏休みだし。里桜の方は夏休みでも、生徒会ってあるだろうし…俺と泊まりで、さ」
頬を染めながら、尋ねる剛。
「泊まりかー。うん、良いよ? 何処行こうか」
「やった! 絶対だぞ?」
嬉しそうに破顔する剛に、ハタと思い出す。
出がけに母親から言われた言葉をーー
《この3連休で、再婚相手の人と会うつもりだから。予定入れないでよね》
「ごめん、やっぱり駄目だ。この3連休で再婚相手とあう算段つけてるみたい。多分断ったら、母さん怒りそう。っていうか、泣くかも?結婚に賛成できないのーって」
「ああ。薫さんなら言いそうだな。」
「ごめんね。剛」
「良いって。今日のケーキ屋は絶対行こうな」
「うん!」
俺の言葉に嬉しそうに破顔する剛。
ほんと、ケーキ屋なんて女の子といけば良いのに。
剛は俺を女の子かなにかと勘違いしているのかな。
高校に入って直ぐの頃。
剛からこんなことを言われた。
『鈴はさ、すっごい可愛いから、誰かが守ってやらなきゃいけないんだ。じゃないと、この高校じゃ、鈴は泣くことになる。だからさ、俺が守るよ。
俺が、絶対、鈴を守ってやる。
鈴がいつでも笑顔でいられるように。鈴の笑顔が曇らないように。鈴がいつでも、鈴らしくあり続けるように。
鈴は笑顔でいるのが1番似合っているから』って。
『俺、そんなに頼りない? 守るのは女の子だよ。』
『そうじゃなくて…、ああ、だから、俺は…』
剛は何か決意したように口を開くも、言葉にならず。
結局、はぁ、っと溜息をついてポンと俺の頭を撫でた。
守る、か。
そういえば、昔誰かにも似たようなことを言われた気がする。
あれはー、誰だったかな。
凄く、俺にとって大事な人だった気がする。
『俺が、絶対、お前を守ってやる…。何度、生まれ変わっても。何度、お前と離れ離れになったとしてもーー。俺はーーー、お前を愛している。
何度、輪廻転生を繰り返しても。
この呪いが、たとえもう解けないものであったとしても、俺は何度だってお前を見つけてーーーお前をーーー』
そう、あれは…、あれは?
『君を、愛している…。愛しくて愛しくて、たまらない。前世からの呪いが、何度消えてくれればと思ったでしょう。
私が愛する度に、君は傷ついていく。私は、ただ、君を守りたかっただけなのに…。私はーーー君をーーーー』
「…おい、天音、天音鈴!聞いてるか」
「は、はい…!」
ビシッと背筋をたてて、立ち上がれば担任・小早川疾風先生の端正な顔。
そうだ、〝あの人〟も先生に似た顔をしていて…ー。
〝あの人〟って誰だ…?
「おお、またトリップしやがって。器用なやつだな、お前。なんだ、寝不足か?」
「あははーそんな感じです。えへへ」
「ったく、お前の前世はきっと寝てばっかりのコアラかなんかだな。駅前の占い行ってこい。絶対、そう言われるからよ」
「先生ー、あの占い行ったんですかー!今話題の人気占い師がいるー」
先生の占い発言に、クラスメートが湧く。
先生は、「おう。俺も恋に悩む大人だからな」なんて苦笑した。
「駅前の占い?って知ってる?剛」
「俺は言ったことないけど…、なんでも凄く当たる占い師がいるらしいぜ。
前世まで見えるらしくて、自分の好きな人が前世とどういう因果があるか占ってくれるらしい」
「ふぅん…」
「ちなみに、俺は馬だったようだ。人ですらねぇ!笑えねえよ。主人を庇って死んだうまです、って言われてどういう反応すりゃいいんだよ…と」
どうやら先生は、その占いで馬だと言われたらしい。
なんか面白そう。話によるとその占い、結構あたるらしい。
剛と話し合い、駅前のケーキ屋によるついでに占いのほうにも行くこととなった。
占いは、今話題ってこともあって凄く混んでいた。
やっぱり女の子が多くて、男二人じゃ浮く。
少しでも存在を消すように、小さく肩をすくめていると、剛が俺の肩を抱いた。
「剛?」
「いやぁ、鈴がいて良かった。クラスのやつらときてたら絶対、浮くところだった」
「なんで?」
「鈴が可愛いから」
「はぁ?」
訳のわからないことを言う剛に、「お前はわからないままでいいよ」と言われた。
それから待つこと、2時間。
ようやく俺たちの番が回ってきた。
通された部屋には、水晶といかにも占い師という出で立ちの人がいた。
黒のベールを被っていて、口元だけかろうじて見えるようになっている。
「何を占うのかしら?」
占い師は、開口一番に、俺たちに問いかけた。
「えっと、やっぱり恋愛のことを!俺たちラブラブになれますかね?」
「貴方達?そうね…、君は…」
占い師は、剛を一瞥し水晶玉に視線を移す。
見たところ、何の変哲もない水晶玉だ。
占い師はその水晶玉に手を翳しながら、「見えるわ」と呟く。
「対の位置にある…。貴方、気は強いわね。
それでいて、いつも周りの環境で損をする…。そんな髪型をしているけど、貴方はとても繊細で、他人思いな人。それでいて、馬鹿」
「当たってる、当たってるよ、剛!!」
「おい、最後…」
剛のツッコミなどスルーし、占いは続いていく。
「貴方の運命の恋人は、もうすでに出会っているわ。貴方のすぐ側にいる」
「え…、それって…!」
ちら…と俺のほうへ視線を移す剛。
「でも、まだ遠い位置にある。貴方の恋はとても複雑ね…。2つになったり3つになったり…。前世からそうみたい」
「は、はぁ?」
「貴方は人がいいから、前世からモテていたみたいね。そこで…、愛されすぎて断ることができず2股、3股当たり前だったみたい。
何人もの人間と恋に落ちていた。惚れっぽいのね。何人もの人と関係を持ってる。波乱に満ちた恋を何度もしてきたようね」
「剛、最低」
「最低って、俺じゃないし。俺はそんなことしないし!
一筋な男だし!硬派なヤクザだし」
必死に弁明する剛に、占い師は「貴方は前世は貴族の女だった」と伝えた。
「そして貴方が1番想っていた男はー、貴族ではないけれど、とてもお金を持っていた男だったみたい。
そう…貴方達は敵対していたのね。
貴族な貴方に対し、その男は位が低くて…ロミオとジュリエットのような恋をしていた。
貴方は愛していたのに素直になれずーーー。
相手も同じ。あなたを1番好きでいたのに、傷つけてばかりで、本当の想いを言えずに。
結局、最後は…ーー」
「ああ、言わないでくれ。俺悲劇に弱いんだよ。そうだ、鈴。こいつはどうですか?」
占い師の前に、ずずいっと俺の背中を押す剛。
「この子は…?」
「こんななりしてますけど、男です」
「こんななり、って余計だよ!」
「男の子なのね…。そうね、貴方の恋も複雑そう。いくつも前世が見えるの。とても不思議ね。基本的に、前世は1つしか見えないものなのに…」
もっと側に、と言われて占い師に近づく。占い師は俺の頬に手を添えると
「貴方は…呪われているのかもしれないわね…」と呟いた。
「えー、呪われてるって…どういうことですか?」
俺の気持ちを代弁するように剛が声をあげる。
「貴方は人の中心に立っている運命にある。クラスでも中心。人気者。みんなが貴方の虜になる。
貴方という、存在がほかの人の人生を大きく動かすの。
あなたという存在に惹かれ、癒やされ…
そして、時にそれは悲劇にもなる…ーーー。」
「悲劇…ーー?」
「正しい道を選ばなければ、皆不幸になる。
近々、貴方は、記憶に苦しめられる。
そして、選ぶことになるの。2つに、1つを。選び取らなくてはいけない」
「2つに1つ?」
「ええ。覚えておいて。貴方の決断が、ほかの人にも影響するってことを。
貴方の考え次第で、貴方の存在で他の誰かが不幸になることを…。貴方の行動が“呪い”を生んでしまうと」
占い師の静かな声が、部屋に重く残る。
ジジジジ、と占い終了のベルが鳴って、俺たちは占いの館を出た。
「へっ、あんなの絶対当たらないし。俺が女なんて…!」
「うん…」
「まだ、先生みたいに馬って言われたほうがネタになったのに」
「うん…」
「なんだ、鈴。信じてるのか?あんなん、子供騙しだって。
信じれば信じるほど、占いって些細なことでもそうかな、って思えてくるらしいぞ」
「そうなんだ…。でもさ、誰かを不幸にって…」
「絶対ないない。鈴はみんなを笑顔にするひまわりみたいなやつなんだから。占いがハズレてんの。」
「でも…」
もし。ほんとうだったら。
俺はこれから、誰かを傷つけちゃうのかな。
俺の言動で、誰かを不幸にしちゃうんだろうか。
俺は馬鹿だから気づかないけど、俺の言動で今までもし、誰かを傷つけていたらーー。
ズブズブと思い込んだ俺を励ますように、剛はぎゅっと俺の手を握ると
「少なくとも俺は、絶対にずっとお前の味方でいるよ。なんてったって、俺たちは親友なんだからな。
誰になんと言われようと、俺はお前を信じる。お前が俺を信じてくれたように」
「剛…」
「ガキの頃さ、ヤクザの息子だって言われてみんなから白い目見られた時、お前だけは側にいてくれた。お前だけは、俺をヤクザの息子だからって遠ざけたりしなかった。お前の存在に俺は救われたんだ。あの占い師に言えばよかったな。鈴は人を不幸せにするやつじゃない。ちゃんと俺は、救われて幸せになってます、ってな」
青臭いこと言ってるかな、と剛が笑う。
剛の言葉が嬉しくて、俺も、釣られて笑った。
母さんの爆弾発言を受けて。
母さんは言うことだけ言ってスッキリしたのか、晴れやかな顔して俺たちを学校へ送り出した。
対して、俺たち双子はモヤモヤと不安に苛まれ中。
俺は俺で、母さんへの思いが止まらず兄ちゃんに話しかけ。
兄ちゃんは兄ちゃんで思う事があるのか、少し怒りのオーラが出ている…ような。
真面目な兄ちゃんだから、出来婚とか嫌いそうだしなぁ。
特に、兄ちゃんは俺や母さんを今まで死んでしまった父さんの代わりに見守ってくれたのは父さんなわけだし。
父さん、か…。
「ねぇ、兄ちゃん。母さんの相手、誰かな」
「さぁ…、検討がつかないな。ただ、お父さんが死んでもう長いから、お母さんに彼氏がいても不思議じゃないよ…」
兄ちゃんは、俺の問いかけに自分にもいいきかけるような口調で言った。
父さんが死んで…、もう何年経つんだっけ。
写真はあるんだけど、父さんの記憶が俺には全然残ってない。
兄ちゃんもみたいで、母さん曰く、父さんが死んだ時俺と兄ちゃんは凄いショックで高熱が何日も続いて、大変だったらしい。
特に兄ちゃんの状態は深刻だったみたいで、その時の酷いショックを受けた兄ちゃんを支えてはげましたのが小さい頃の〝俺〟らしい。
小さい頃は俺が兄ちゃんを支えていたんだって。
ほんとかなーって話だけどね。
母さんから聞いた話なんだけど、しっかりものの兄ちゃんが俺なんかを頼りにするなんて、ちょっと考えられない。
今の兄ちゃんは、しっかりしすぎていて、俺や母さんを引っ張ってくれる。
甘えるより、あれこれと世話することが板についたブラコンな兄ちゃん。
母さんの結婚も寂しいけど、俺は兄ちゃんが別の誰かと一緒になるほうが寂しく感じるかも。
なにせ、俺たちは双子なわけだし。いつもほとんどの時間、一緒なのだ。
そう、学校も同じ。俺たちは王蘭高校に通っている。
そこで兄ちゃんは、生徒会長様なんてものもやっているのだ。
兄ちゃんは、しっかりしているから、いろんな人から頼られている。
俺はー?
俺はいつか、兄ちゃんみたいになれるんだろうか。
母さんが出産して弟が出来たら、そしたらーーー
「おはよー!鈴!と里桜!」
「あ、剛、おはよー!」
はぁはぁ、と息を弾ませて自転車から降りて駆け寄ってくるのは、俺たちの幼馴染。
高橋剛だ。
今日もワックスでバッチリ立たせた髪が決まっている。
高校になってから、剛は強い男というものに憧れているみたいで、いつもバッチリ髪を固めて登校してくるのだ。
髪をおろすと、結構子供っぽい感じになるのが他人になめられるようで、いやらしい。
剛は、ヤクザの跡取りの息子だったりする。
なので、うちのものに示しがつかない、なんて高校に入ってから少し外見に気を使うようになったのだ。
ただ、組のみんなは剛が大好きみたいで、いつまでたっても可愛いボンって言っているんだけどね。
俺が言うのもなんだけど、剛って結構単純でバカな熱血男だからさ。
そういうのが、見ていて楽しいらしい。
腕っ節は強いのに、結構感動しいで、困った人がいたら放っておけない。
この前も道端で重い荷物を持ったおばあさんがいたら、荷物持ちで俺との待ち合わせに遅刻したくらいお人好しなのである。
「おはよ、剛」
むくれながら、剛に挨拶した兄ちゃんに剛はおや、と俺に目配せする。
「鈴、里桜でも喧嘩したのか?」
「ううん。原因は母ちゃん。
母ちゃんが再婚して、妊娠なんだって」
「そうかそうか。再婚で妊娠…ってええええ?薫さん、妊娠してんの?相手は誰だよ」
「知らない。今度、食事会があって、その時まで秘密だって。でも凄いいい人だって言ってたよ。それと、相手にも子供がいるみたい。俺たちより上だって」
「子供…?それって、男か?女か?一緒に住むとか、そんなことしないよな?そこで、恋に芽生えたりとか…、うわー考えただけで嫌だ。でも、鈴を見て落ちない人間がいるか?
こんな可愛い子が1つ屋根の下にいて、何もしない男がいるか?いや、いないだろう…」
ぶつくさ呟く剛に、呆れた視線を送る兄ちゃん。
そっか、再婚ってことは、相手の子供と一緒に住むかもってこともあるのか。
「り、鈴。どんなに再婚相手の子供がいい人でも、自分の部屋にあげるんじゃないぞ。男でも、女でも、だ」
「なんで?」
「なんででも!
ケーキとかに釣られて部屋に招いたら最後、美味しく食べられるのは鈴なんだからな」
「??ケーキ食べるんじゃないの?なんで、俺が食べられるのさ?へんな剛ー」
俺がケラケラ笑うと、剛は「鈍感」といってガックリと肩を落とした。
「ま、俺が日々餌付けしとけばいいか。ってことで、鈴。今日、ケーキショップ行かないか?駅前の」
「駅前のって、最近できたところだよねー!行きたかったんだー!行く行くー!」
「剛、あまり鈴にケーキ食べさせないでよ。鈴、いつも食べ過ぎて夕食たべれなくなるんだから…」
「兄ちゃん、余計なこと言わない!って、携帯鳴ってるよ?」
ピルピルと着信を告げる音に、兄ちゃんはごそごそとカバンを探る。
俺たちが何かあった時用に、母さんが兄ちゃんには携帯をもたせてるのだ。
俺は大体、剛か兄ちゃんと一緒にいるから、まだ持たせて貰えていない。
兄ちゃんは画面に映る文字を見て、一瞬、顔を潜めた。
「ちょっと寄るとこ有るから、鈴、剛と先に教室へ行っていて」
「兄ちゃんは?」
「雑用頼まれた」
そう云って、兄ちゃんは小走りに駆け出した。
「進級してから、やたら扱き使われてるよな里桜の奴」
「生徒会って忙しいんじゃない?」
なにせ、兄ちゃんは歴代の生徒会長の中でも優秀らしいからさ。
兄ちゃんが変えた改革のおかげで、校内での喧嘩は減ったし美化活動も盛んになったから去年に比べて凄く綺麗になった。 学校での問題も減ったようで、先生からも一目置かれている。
特に、担当であり生徒会顧問の小早川疾風先生は兄ちゃんのことをすごく頼りにしてて、校舎内でもよく2人でいるところを見かけた。
「それよりさ~鈴明日から3連休だぜ? どっか行かないか?」
「遊びに?」
昇降口で上履きに履き替えながら、剛を見上げる。
一重瞼にすっきりとした顔立ち。
家ではボン、なんて言って可愛がられれている剛だけど、空手もやっていて身体は凄く引き締まっている。小さい頃からやっている空手も、結構強いみたい。
そんな剛は、ワイルドなところが素敵、なんて女の子のファンもいる。
だけど、休みの日は女の子と遊んだりせず、大抵俺とかクラスメートの友達と遊んでいる。
女の子に興味、ないのかなー。
「明日7月14日じゃん?、2人でさ~出掛けねぇ? それとほら。もう直ぐ夏休みだし。里桜の方は夏休みでも、生徒会ってあるだろうし…俺と泊まりで、さ」
頬を染めながら、尋ねる剛。
「泊まりかー。うん、良いよ? 何処行こうか」
「やった! 絶対だぞ?」
嬉しそうに破顔する剛に、ハタと思い出す。
出がけに母親から言われた言葉をーー
《この3連休で、再婚相手の人と会うつもりだから。予定入れないでよね》
「ごめん、やっぱり駄目だ。この3連休で再婚相手とあう算段つけてるみたい。多分断ったら、母さん怒りそう。っていうか、泣くかも?結婚に賛成できないのーって」
「ああ。薫さんなら言いそうだな。」
「ごめんね。剛」
「良いって。今日のケーキ屋は絶対行こうな」
「うん!」
俺の言葉に嬉しそうに破顔する剛。
ほんと、ケーキ屋なんて女の子といけば良いのに。
剛は俺を女の子かなにかと勘違いしているのかな。
高校に入って直ぐの頃。
剛からこんなことを言われた。
『鈴はさ、すっごい可愛いから、誰かが守ってやらなきゃいけないんだ。じゃないと、この高校じゃ、鈴は泣くことになる。だからさ、俺が守るよ。
俺が、絶対、鈴を守ってやる。
鈴がいつでも笑顔でいられるように。鈴の笑顔が曇らないように。鈴がいつでも、鈴らしくあり続けるように。
鈴は笑顔でいるのが1番似合っているから』って。
『俺、そんなに頼りない? 守るのは女の子だよ。』
『そうじゃなくて…、ああ、だから、俺は…』
剛は何か決意したように口を開くも、言葉にならず。
結局、はぁ、っと溜息をついてポンと俺の頭を撫でた。
守る、か。
そういえば、昔誰かにも似たようなことを言われた気がする。
あれはー、誰だったかな。
凄く、俺にとって大事な人だった気がする。
『俺が、絶対、お前を守ってやる…。何度、生まれ変わっても。何度、お前と離れ離れになったとしてもーー。俺はーーー、お前を愛している。
何度、輪廻転生を繰り返しても。
この呪いが、たとえもう解けないものであったとしても、俺は何度だってお前を見つけてーーーお前をーーー』
そう、あれは…、あれは?
『君を、愛している…。愛しくて愛しくて、たまらない。前世からの呪いが、何度消えてくれればと思ったでしょう。
私が愛する度に、君は傷ついていく。私は、ただ、君を守りたかっただけなのに…。私はーーー君をーーーー』
「…おい、天音、天音鈴!聞いてるか」
「は、はい…!」
ビシッと背筋をたてて、立ち上がれば担任・小早川疾風先生の端正な顔。
そうだ、〝あの人〟も先生に似た顔をしていて…ー。
〝あの人〟って誰だ…?
「おお、またトリップしやがって。器用なやつだな、お前。なんだ、寝不足か?」
「あははーそんな感じです。えへへ」
「ったく、お前の前世はきっと寝てばっかりのコアラかなんかだな。駅前の占い行ってこい。絶対、そう言われるからよ」
「先生ー、あの占い行ったんですかー!今話題の人気占い師がいるー」
先生の占い発言に、クラスメートが湧く。
先生は、「おう。俺も恋に悩む大人だからな」なんて苦笑した。
「駅前の占い?って知ってる?剛」
「俺は言ったことないけど…、なんでも凄く当たる占い師がいるらしいぜ。
前世まで見えるらしくて、自分の好きな人が前世とどういう因果があるか占ってくれるらしい」
「ふぅん…」
「ちなみに、俺は馬だったようだ。人ですらねぇ!笑えねえよ。主人を庇って死んだうまです、って言われてどういう反応すりゃいいんだよ…と」
どうやら先生は、その占いで馬だと言われたらしい。
なんか面白そう。話によるとその占い、結構あたるらしい。
剛と話し合い、駅前のケーキ屋によるついでに占いのほうにも行くこととなった。
占いは、今話題ってこともあって凄く混んでいた。
やっぱり女の子が多くて、男二人じゃ浮く。
少しでも存在を消すように、小さく肩をすくめていると、剛が俺の肩を抱いた。
「剛?」
「いやぁ、鈴がいて良かった。クラスのやつらときてたら絶対、浮くところだった」
「なんで?」
「鈴が可愛いから」
「はぁ?」
訳のわからないことを言う剛に、「お前はわからないままでいいよ」と言われた。
それから待つこと、2時間。
ようやく俺たちの番が回ってきた。
通された部屋には、水晶といかにも占い師という出で立ちの人がいた。
黒のベールを被っていて、口元だけかろうじて見えるようになっている。
「何を占うのかしら?」
占い師は、開口一番に、俺たちに問いかけた。
「えっと、やっぱり恋愛のことを!俺たちラブラブになれますかね?」
「貴方達?そうね…、君は…」
占い師は、剛を一瞥し水晶玉に視線を移す。
見たところ、何の変哲もない水晶玉だ。
占い師はその水晶玉に手を翳しながら、「見えるわ」と呟く。
「対の位置にある…。貴方、気は強いわね。
それでいて、いつも周りの環境で損をする…。そんな髪型をしているけど、貴方はとても繊細で、他人思いな人。それでいて、馬鹿」
「当たってる、当たってるよ、剛!!」
「おい、最後…」
剛のツッコミなどスルーし、占いは続いていく。
「貴方の運命の恋人は、もうすでに出会っているわ。貴方のすぐ側にいる」
「え…、それって…!」
ちら…と俺のほうへ視線を移す剛。
「でも、まだ遠い位置にある。貴方の恋はとても複雑ね…。2つになったり3つになったり…。前世からそうみたい」
「は、はぁ?」
「貴方は人がいいから、前世からモテていたみたいね。そこで…、愛されすぎて断ることができず2股、3股当たり前だったみたい。
何人もの人間と恋に落ちていた。惚れっぽいのね。何人もの人と関係を持ってる。波乱に満ちた恋を何度もしてきたようね」
「剛、最低」
「最低って、俺じゃないし。俺はそんなことしないし!
一筋な男だし!硬派なヤクザだし」
必死に弁明する剛に、占い師は「貴方は前世は貴族の女だった」と伝えた。
「そして貴方が1番想っていた男はー、貴族ではないけれど、とてもお金を持っていた男だったみたい。
そう…貴方達は敵対していたのね。
貴族な貴方に対し、その男は位が低くて…ロミオとジュリエットのような恋をしていた。
貴方は愛していたのに素直になれずーーー。
相手も同じ。あなたを1番好きでいたのに、傷つけてばかりで、本当の想いを言えずに。
結局、最後は…ーー」
「ああ、言わないでくれ。俺悲劇に弱いんだよ。そうだ、鈴。こいつはどうですか?」
占い師の前に、ずずいっと俺の背中を押す剛。
「この子は…?」
「こんななりしてますけど、男です」
「こんななり、って余計だよ!」
「男の子なのね…。そうね、貴方の恋も複雑そう。いくつも前世が見えるの。とても不思議ね。基本的に、前世は1つしか見えないものなのに…」
もっと側に、と言われて占い師に近づく。占い師は俺の頬に手を添えると
「貴方は…呪われているのかもしれないわね…」と呟いた。
「えー、呪われてるって…どういうことですか?」
俺の気持ちを代弁するように剛が声をあげる。
「貴方は人の中心に立っている運命にある。クラスでも中心。人気者。みんなが貴方の虜になる。
貴方という、存在がほかの人の人生を大きく動かすの。
あなたという存在に惹かれ、癒やされ…
そして、時にそれは悲劇にもなる…ーーー。」
「悲劇…ーー?」
「正しい道を選ばなければ、皆不幸になる。
近々、貴方は、記憶に苦しめられる。
そして、選ぶことになるの。2つに、1つを。選び取らなくてはいけない」
「2つに1つ?」
「ええ。覚えておいて。貴方の決断が、ほかの人にも影響するってことを。
貴方の考え次第で、貴方の存在で他の誰かが不幸になることを…。貴方の行動が“呪い”を生んでしまうと」
占い師の静かな声が、部屋に重く残る。
ジジジジ、と占い終了のベルが鳴って、俺たちは占いの館を出た。
「へっ、あんなの絶対当たらないし。俺が女なんて…!」
「うん…」
「まだ、先生みたいに馬って言われたほうがネタになったのに」
「うん…」
「なんだ、鈴。信じてるのか?あんなん、子供騙しだって。
信じれば信じるほど、占いって些細なことでもそうかな、って思えてくるらしいぞ」
「そうなんだ…。でもさ、誰かを不幸にって…」
「絶対ないない。鈴はみんなを笑顔にするひまわりみたいなやつなんだから。占いがハズレてんの。」
「でも…」
もし。ほんとうだったら。
俺はこれから、誰かを傷つけちゃうのかな。
俺の言動で、誰かを不幸にしちゃうんだろうか。
俺は馬鹿だから気づかないけど、俺の言動で今までもし、誰かを傷つけていたらーー。
ズブズブと思い込んだ俺を励ますように、剛はぎゅっと俺の手を握ると
「少なくとも俺は、絶対にずっとお前の味方でいるよ。なんてったって、俺たちは親友なんだからな。
誰になんと言われようと、俺はお前を信じる。お前が俺を信じてくれたように」
「剛…」
「ガキの頃さ、ヤクザの息子だって言われてみんなから白い目見られた時、お前だけは側にいてくれた。お前だけは、俺をヤクザの息子だからって遠ざけたりしなかった。お前の存在に俺は救われたんだ。あの占い師に言えばよかったな。鈴は人を不幸せにするやつじゃない。ちゃんと俺は、救われて幸せになってます、ってな」
青臭いこと言ってるかな、と剛が笑う。
剛の言葉が嬉しくて、俺も、釣られて笑った。
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