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引っ越し初日
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黒く長い髪を靡かせる日本人形のように美しい少女、原井 尊(はらい みこと)二十三歳は最近就職をして一人暮らしをする為に不動産屋に連れられて部屋の内覧に来ていた。
何軒か周りその中で希望の立地で一番安い物件を見ている。築年数十年で綺麗な部屋に階数も六階で防音もしっかりしている部屋だが、この地域の相場より格段に安い賃料。
「しかも家具付きで、この金額で住めるんですか?」
驚きの声をあげる尊だったが、担当の女性は顔をしかめながら安い理由を彼女に説明した。
「この部屋が安いのはこの部屋はいわゆる事故物件だからなんです」
担当の説明では部屋の主である若い男性が交通事故に遭ってしまったというものだ、その後不思議な事が立て続けに起こっているという。
前契約者の両親が部屋の荷物を引き払い誰もいないはずの家、しかし隣に住んでいた住人が自分の家に入ろうとした時。
ガチャッ
「ん?」
不意に聞こえた鍵を開ける音、そして。
キィー
「え、え? ここ、誰も、いないんじゃ」
勝手に開くドアに一瞬見えた白い影。
バタン
「っ、きゃーーーっっっ!」
誰もいないのに誰か入っていくような扉の動きに、こそれを見てしまった隣の住人は叫び、そして数日後には引っ越して行った。
なんだかそんな事が続き試しに不動産屋の従業員が寝泊まりすることになったのだが。
「怖いですよー、先輩」
「怖くないっ、これも仕事だから」
従業員の中でもガタイがいい男二人が一泊しただけで。
パリン、パリン
「ひいっ」
ドンドンドンッ
「ギャーーー、おばけー」
「え、ちょっ、先輩置いていかないでぇぇぇ」
ラップ音や激しく壁を叩くような音にすぐ家を飛び出したそうだ。
その後専門家に頼んでもお祓いはできない物件だと断られ、大家と不動産はどうしようもできず格安で貸し出す事にしたらしい。
つまり部屋で人が亡くなったわけではないが心霊現象が起きるため事故物件扱いとなっているのだ。
「何が起きるうかわからないので正直おすすめしていないと言うのが実際の所でして」
「あ~、なるほど、大丈夫です。私そう言うの気にしないんで、ここに決めます!」
「え?」
心霊現象の説明まで受けたにもかかわらずあっけらかんとそういう彼女に担当の方が驚く、尊は構わずこの部屋を契約する事を即決した。店員に何度も事故物件の説明を受け心配もされたが、彼女の決意が変わることはなかった。
契約を交わし数週間後の今日、尊は引っ越しのため新居に来ていた。まもなく引っ越し業者により前の家から荷物が届けられる、その前にどうしてもやらないといけないことがある。
ピンポーン
誰もいない部屋のチャイムを鳴らし少し待つと扉が僅かに開き中の空気が尊の鼻を掠めた、少し淀んだおどろおどろしい空気。
「っ、大丈夫、警戒しないで。今日から同居する尊だよ、よろしくね」
誰もいない部屋だが尊には透明だけどうっすらと気配を感じている、彼女は霊感が強くこの事故物件に【何か】がいる事を知っていたのだ。
散々不動産屋の担当が説明してくれていたが、もう部屋に入った瞬間から部屋に住み着く存在に気づいていた。
そんな尊が引っ越し業者が来る前に先住民である【何か】に挨拶を済ませなければ無かった、この世のものではない存在でも生きていた頃は人間だった。
そんな【何か】達に挨拶をするのは当然だし、逆にしなければ怒るモノもいる。その証拠に今も少し間はあったものの尊は許されたのかゆっくりとドアが開く。
尊は誘われるように部屋の中に入ると先程までの嫌悪感を感じられるような空気ではなく、人が住んでいないはずなのに生活の匂いがするような雰囲気に変わっていた。
おそらく【何か】が生活していた頃の匂いが染み付いているのだろう。尊はその匂い、嫌いじゃないと思った。
その後引っ越しの荷物を搬入しても業者が帰った後、尊一人にになっても不動産屋が言っていたラップ音などなることはなかった。
ただ
カタリ
そんな音がして振り向くとこれから飾ろうと思っていた小物が棚の上に移動していたり、まだ開けていない段ボールの箱の蓋が全て開けられていたりとまるで引っ越しを手伝うような不思議現象が起きていた。
尊はその度にびっくりしているものの怖がる様子はなく。
「手伝ってくれるのはありがたいんだけど、開けられると恥ずかしいものもあるんだよね」
少し顔を赤くし、勝手に開かれた下着が入っている箱を見つめてそう呟いた。
引っ越し後ご飯を食べてお風呂に入り部屋着に着替えてやっとゆっくりする、肩が落ちそうなくらいゆったりとした長袖のTシャツと、ホットパンツが尊のパジャマ代わりだ。
彼女はスタイルも良く家なのでブラもはめてない胸は大きく揺れ、スラリと伸びた足は美しい。
゛はぁ、ごくり゛
部屋の中にはそんな音と不快ではないがいやらしい気配を常に感じ、視線も感じていたが尊は気にせず新居ですごす初めての夜に思いを馳せていた。
一人暮らしにしては広いこの部屋は寝室もあり、セミダブルベッドも備え付けられていた。というのも前回住んでいた男性が使っていた家具家電は家族の意向でこの部屋の備え付けとして置かれたままだ。
前住居者は家具にはこだわっていたらしく、処分するのは勿体無いとそのまま置かれている。
「はぁ、流石に一人だとこのベッドは広いか」
そう呟いてベッド端に横たわり、小さく丸まってから眠りについた。
えーん、えーん
小さな少女が泣いているその姿は自分自身だと尊は気づき、いつも見る夢だとすぐ理解した。幼い頃から霊感が強く、不用意な発言をして周りからはいつもいじめられていた。
そんな昔の出来事を今でも夢に見ていた尊だが、今日見た夢では泣いている彼女の頭を優しい手が撫でていた。不思議そうに顔を上げれば。
『あっ』
優しい手が急にいやらしく顔や耳を撫でる、幼い尊はその感覚に体を震わせ。
『ひゃあ、あんっ』
と声を上げたところで、夢から目が覚めた。
ギシッ
〝はぁ、はぁ〝
開けた目から見えた時計の針は深夜二時、耳元に荒い息遣いとも言えない気配がする。すぐ隣でまるで添い寝されているような近さだった。
ギシ、ギシ
ベッドが軋む音が聞こえいやらしい手が夢と同じように彼女の胸を撫でている、意識は半分夢の続きような状態で体は動かず金縛りにあっていた。
尊は【何か】の気配に対して拒否することはなかった、いや・・・そもそも抵抗する気なんて最初から持っていない。
何軒か周りその中で希望の立地で一番安い物件を見ている。築年数十年で綺麗な部屋に階数も六階で防音もしっかりしている部屋だが、この地域の相場より格段に安い賃料。
「しかも家具付きで、この金額で住めるんですか?」
驚きの声をあげる尊だったが、担当の女性は顔をしかめながら安い理由を彼女に説明した。
「この部屋が安いのはこの部屋はいわゆる事故物件だからなんです」
担当の説明では部屋の主である若い男性が交通事故に遭ってしまったというものだ、その後不思議な事が立て続けに起こっているという。
前契約者の両親が部屋の荷物を引き払い誰もいないはずの家、しかし隣に住んでいた住人が自分の家に入ろうとした時。
ガチャッ
「ん?」
不意に聞こえた鍵を開ける音、そして。
キィー
「え、え? ここ、誰も、いないんじゃ」
勝手に開くドアに一瞬見えた白い影。
バタン
「っ、きゃーーーっっっ!」
誰もいないのに誰か入っていくような扉の動きに、こそれを見てしまった隣の住人は叫び、そして数日後には引っ越して行った。
なんだかそんな事が続き試しに不動産屋の従業員が寝泊まりすることになったのだが。
「怖いですよー、先輩」
「怖くないっ、これも仕事だから」
従業員の中でもガタイがいい男二人が一泊しただけで。
パリン、パリン
「ひいっ」
ドンドンドンッ
「ギャーーー、おばけー」
「え、ちょっ、先輩置いていかないでぇぇぇ」
ラップ音や激しく壁を叩くような音にすぐ家を飛び出したそうだ。
その後専門家に頼んでもお祓いはできない物件だと断られ、大家と不動産はどうしようもできず格安で貸し出す事にしたらしい。
つまり部屋で人が亡くなったわけではないが心霊現象が起きるため事故物件扱いとなっているのだ。
「何が起きるうかわからないので正直おすすめしていないと言うのが実際の所でして」
「あ~、なるほど、大丈夫です。私そう言うの気にしないんで、ここに決めます!」
「え?」
心霊現象の説明まで受けたにもかかわらずあっけらかんとそういう彼女に担当の方が驚く、尊は構わずこの部屋を契約する事を即決した。店員に何度も事故物件の説明を受け心配もされたが、彼女の決意が変わることはなかった。
契約を交わし数週間後の今日、尊は引っ越しのため新居に来ていた。まもなく引っ越し業者により前の家から荷物が届けられる、その前にどうしてもやらないといけないことがある。
ピンポーン
誰もいない部屋のチャイムを鳴らし少し待つと扉が僅かに開き中の空気が尊の鼻を掠めた、少し淀んだおどろおどろしい空気。
「っ、大丈夫、警戒しないで。今日から同居する尊だよ、よろしくね」
誰もいない部屋だが尊には透明だけどうっすらと気配を感じている、彼女は霊感が強くこの事故物件に【何か】がいる事を知っていたのだ。
散々不動産屋の担当が説明してくれていたが、もう部屋に入った瞬間から部屋に住み着く存在に気づいていた。
そんな尊が引っ越し業者が来る前に先住民である【何か】に挨拶を済ませなければ無かった、この世のものではない存在でも生きていた頃は人間だった。
そんな【何か】達に挨拶をするのは当然だし、逆にしなければ怒るモノもいる。その証拠に今も少し間はあったものの尊は許されたのかゆっくりとドアが開く。
尊は誘われるように部屋の中に入ると先程までの嫌悪感を感じられるような空気ではなく、人が住んでいないはずなのに生活の匂いがするような雰囲気に変わっていた。
おそらく【何か】が生活していた頃の匂いが染み付いているのだろう。尊はその匂い、嫌いじゃないと思った。
その後引っ越しの荷物を搬入しても業者が帰った後、尊一人にになっても不動産屋が言っていたラップ音などなることはなかった。
ただ
カタリ
そんな音がして振り向くとこれから飾ろうと思っていた小物が棚の上に移動していたり、まだ開けていない段ボールの箱の蓋が全て開けられていたりとまるで引っ越しを手伝うような不思議現象が起きていた。
尊はその度にびっくりしているものの怖がる様子はなく。
「手伝ってくれるのはありがたいんだけど、開けられると恥ずかしいものもあるんだよね」
少し顔を赤くし、勝手に開かれた下着が入っている箱を見つめてそう呟いた。
引っ越し後ご飯を食べてお風呂に入り部屋着に着替えてやっとゆっくりする、肩が落ちそうなくらいゆったりとした長袖のTシャツと、ホットパンツが尊のパジャマ代わりだ。
彼女はスタイルも良く家なのでブラもはめてない胸は大きく揺れ、スラリと伸びた足は美しい。
゛はぁ、ごくり゛
部屋の中にはそんな音と不快ではないがいやらしい気配を常に感じ、視線も感じていたが尊は気にせず新居ですごす初めての夜に思いを馳せていた。
一人暮らしにしては広いこの部屋は寝室もあり、セミダブルベッドも備え付けられていた。というのも前回住んでいた男性が使っていた家具家電は家族の意向でこの部屋の備え付けとして置かれたままだ。
前住居者は家具にはこだわっていたらしく、処分するのは勿体無いとそのまま置かれている。
「はぁ、流石に一人だとこのベッドは広いか」
そう呟いてベッド端に横たわり、小さく丸まってから眠りについた。
えーん、えーん
小さな少女が泣いているその姿は自分自身だと尊は気づき、いつも見る夢だとすぐ理解した。幼い頃から霊感が強く、不用意な発言をして周りからはいつもいじめられていた。
そんな昔の出来事を今でも夢に見ていた尊だが、今日見た夢では泣いている彼女の頭を優しい手が撫でていた。不思議そうに顔を上げれば。
『あっ』
優しい手が急にいやらしく顔や耳を撫でる、幼い尊はその感覚に体を震わせ。
『ひゃあ、あんっ』
と声を上げたところで、夢から目が覚めた。
ギシッ
〝はぁ、はぁ〝
開けた目から見えた時計の針は深夜二時、耳元に荒い息遣いとも言えない気配がする。すぐ隣でまるで添い寝されているような近さだった。
ギシ、ギシ
ベッドが軋む音が聞こえいやらしい手が夢と同じように彼女の胸を撫でている、意識は半分夢の続きような状態で体は動かず金縛りにあっていた。
尊は【何か】の気配に対して拒否することはなかった、いや・・・そもそも抵抗する気なんて最初から持っていない。
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