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4話/臭いについて聞き込み、考察
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とりあえず、席に着き各々飲み物を頼む。
店員が去ると以前まで〇〇アパートに住んでいたという女性は口を開く。
「えーと…2人とも名前はなんて言うの?」
「私は、二瀬香織です。こっちは…」
私と楓美は軽く自己紹介を済ませる。
「へぇー。2人とも大学生なんだぁ。私は藤崎かれん。社会人2年目。よろしくね~。それで、2人は何を調べてるの?」
私たちは藤崎さんに102号室の臭いのことを全て話した。
何か、藤崎さんからも情報を得られればいいのだけれど…
「人肉が焼ける臭い…うーん…ごめんね、何も分からない。私が住んでいる部屋は、そんな臭いしなかったよ。」
「そうですか…住んでいた人とかも、わかりませんか?」
「うん…あまり、関わりなかったかな」
「そうなんですね…」
またもや情報なしか…
しかし、先ほどの椎葉さんよりも親身になって聞いてくれてありがたい。椎葉さんに冷たくされたので、少しの優しさが身に染みる。
「2人の力になれなくてごめんなさい。こちらから話を聞いておいて」
「そんなそんな!こちらこそ、喫茶店にまで来ていただいて…」
2人してぺこぺこと藤崎さんに頭を下げる。
「そうだ!私の連絡先渡しておくよ。何か聞きたいことがあったらいつでも聞いて?」
藤崎はボールペンで紙ナプキンに電話番号を書いていく。
「ごめんね、字汚いけど。利き手怪我しててさ。」
そういって、藤崎は包帯で巻かれた右手を見せる。
「骨折ですか?痛そう…」
「そうなの。社会人にもなって、ダメダメで…。はい、これ。」
藤崎さんから紙ナプキンを受け取る。
「ありがとうございます…!本当に藤崎さんには感謝しかないです…!何か分かったら、連絡させていただきます」
「うんうん。じゃあ、そろそろお暇するね。」
藤崎さんはひらひらと手を振って席を立つ。
と、思ったら壁に腕をぶつけている。
「いてて、あは、恥ずかしいところ見せちゃった」
そう言うと藤崎さんは照れて笑う。
少し天然なところがあるのかもしれない。
だから骨折したのかも。たった今知り合った私たちにもすごく親切だし、本当、良い人だ。
「藤崎さん、良い人だったね…」
「だね…ていうか、楓美ごめんね。付き合わせたのに何も分からなかった」
「いやいや、藤崎さんの連絡先ゲットできたのはでかいって。また私の家に戻って、これからのこと考えよ?」
そう話をしてから、私たちもそろそろ帰るかと、お会計に向かった。
・
「はぁ~。臭いについては何も分からなかったね~」
楓美の家に戻り、お互い脱力する。
色々と疲れたのに、何も達成感がない。
「そうだね~。またネットで調べてみようか…事件は起こってなくても、何か有力な情報があるかもしれない。」
楓美はキーボードにカタカタと打ち込んでいく。
「楓美ありがと~。私はXで情報収集するね」
そうは言ったが、スマホを開いたフリをしていた。
ある可能性を、思いついてしまったのだ。
私たちは誰かが人を燃やすことで臭いを発生させたと決めつけていたが、そうではないのかもしれない…。
人ひとりだけでも、その臭いをだすことができるとしたら?
「ねぇ、楓美…」
「んー?何、なんかあった?」
「私たちはさ、あの臭いは、誰かが誰かに放火されて発生したって考えていたじゃない?」
「え?」
「1人だけでも、自分自身を焼けば、その臭いを出すことができるんだよ…!!」
完全に盲点だった。傷害だとか、殺人とか…そんなことを考えすぎていたのかもしれない。
「自傷行為ってことね…それ、あり得るかも。」
「だよね?」
もう、それしか考えられなくなってきた。
こんなワンルームに、人を運んできて燃やさなくても、異臭が部屋につくことはある。
「根性焼きも、人の肉を焼いているのと同じよね…。でも、あんなに強く臭いが部屋につくかな…?」
楓美は考え込み、黙りこんでしまった。
「臭いは、自傷行為一回だけじゃつかないかもしれない。でもさ、煙草依存者が短期間に何十本も煙草を吸うように、何回も何回も自分を焼いていたとしたら…臭いがついても、不思議じゃないかも。」
「うん…そう、だね。そうかもしれない。」
自分自身を火で燃やしてしまう心理は分からない。
けれども、前住居者に何か苦しい出来事があったのかもしれない。それを知る由はない。
少々無理やりではあるものの、私たちは臭いの真実を“誰かの自傷行為だった”と結論づけた。
「あ、そうだ、藤崎さんにも報告しなきゃ」
私は藤崎さんに電話をかける。
私たちが至った結論について話し、お世話になったことを告げる。
「本当に、ありがとうございました。」
そして、私たちはその部屋や近隣の事件について、調べるのをやめた。
店員が去ると以前まで〇〇アパートに住んでいたという女性は口を開く。
「えーと…2人とも名前はなんて言うの?」
「私は、二瀬香織です。こっちは…」
私と楓美は軽く自己紹介を済ませる。
「へぇー。2人とも大学生なんだぁ。私は藤崎かれん。社会人2年目。よろしくね~。それで、2人は何を調べてるの?」
私たちは藤崎さんに102号室の臭いのことを全て話した。
何か、藤崎さんからも情報を得られればいいのだけれど…
「人肉が焼ける臭い…うーん…ごめんね、何も分からない。私が住んでいる部屋は、そんな臭いしなかったよ。」
「そうですか…住んでいた人とかも、わかりませんか?」
「うん…あまり、関わりなかったかな」
「そうなんですね…」
またもや情報なしか…
しかし、先ほどの椎葉さんよりも親身になって聞いてくれてありがたい。椎葉さんに冷たくされたので、少しの優しさが身に染みる。
「2人の力になれなくてごめんなさい。こちらから話を聞いておいて」
「そんなそんな!こちらこそ、喫茶店にまで来ていただいて…」
2人してぺこぺこと藤崎さんに頭を下げる。
「そうだ!私の連絡先渡しておくよ。何か聞きたいことがあったらいつでも聞いて?」
藤崎はボールペンで紙ナプキンに電話番号を書いていく。
「ごめんね、字汚いけど。利き手怪我しててさ。」
そういって、藤崎は包帯で巻かれた右手を見せる。
「骨折ですか?痛そう…」
「そうなの。社会人にもなって、ダメダメで…。はい、これ。」
藤崎さんから紙ナプキンを受け取る。
「ありがとうございます…!本当に藤崎さんには感謝しかないです…!何か分かったら、連絡させていただきます」
「うんうん。じゃあ、そろそろお暇するね。」
藤崎さんはひらひらと手を振って席を立つ。
と、思ったら壁に腕をぶつけている。
「いてて、あは、恥ずかしいところ見せちゃった」
そう言うと藤崎さんは照れて笑う。
少し天然なところがあるのかもしれない。
だから骨折したのかも。たった今知り合った私たちにもすごく親切だし、本当、良い人だ。
「藤崎さん、良い人だったね…」
「だね…ていうか、楓美ごめんね。付き合わせたのに何も分からなかった」
「いやいや、藤崎さんの連絡先ゲットできたのはでかいって。また私の家に戻って、これからのこと考えよ?」
そう話をしてから、私たちもそろそろ帰るかと、お会計に向かった。
・
「はぁ~。臭いについては何も分からなかったね~」
楓美の家に戻り、お互い脱力する。
色々と疲れたのに、何も達成感がない。
「そうだね~。またネットで調べてみようか…事件は起こってなくても、何か有力な情報があるかもしれない。」
楓美はキーボードにカタカタと打ち込んでいく。
「楓美ありがと~。私はXで情報収集するね」
そうは言ったが、スマホを開いたフリをしていた。
ある可能性を、思いついてしまったのだ。
私たちは誰かが人を燃やすことで臭いを発生させたと決めつけていたが、そうではないのかもしれない…。
人ひとりだけでも、その臭いをだすことができるとしたら?
「ねぇ、楓美…」
「んー?何、なんかあった?」
「私たちはさ、あの臭いは、誰かが誰かに放火されて発生したって考えていたじゃない?」
「え?」
「1人だけでも、自分自身を焼けば、その臭いを出すことができるんだよ…!!」
完全に盲点だった。傷害だとか、殺人とか…そんなことを考えすぎていたのかもしれない。
「自傷行為ってことね…それ、あり得るかも。」
「だよね?」
もう、それしか考えられなくなってきた。
こんなワンルームに、人を運んできて燃やさなくても、異臭が部屋につくことはある。
「根性焼きも、人の肉を焼いているのと同じよね…。でも、あんなに強く臭いが部屋につくかな…?」
楓美は考え込み、黙りこんでしまった。
「臭いは、自傷行為一回だけじゃつかないかもしれない。でもさ、煙草依存者が短期間に何十本も煙草を吸うように、何回も何回も自分を焼いていたとしたら…臭いがついても、不思議じゃないかも。」
「うん…そう、だね。そうかもしれない。」
自分自身を火で燃やしてしまう心理は分からない。
けれども、前住居者に何か苦しい出来事があったのかもしれない。それを知る由はない。
少々無理やりではあるものの、私たちは臭いの真実を“誰かの自傷行為だった”と結論づけた。
「あ、そうだ、藤崎さんにも報告しなきゃ」
私は藤崎さんに電話をかける。
私たちが至った結論について話し、お世話になったことを告げる。
「本当に、ありがとうございました。」
そして、私たちはその部屋や近隣の事件について、調べるのをやめた。
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