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第22話
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ジョシアと共に諸外国にルズベリー帝国の第二皇子夫妻として視察に向かうことが決まってから三日後に、エレオノーラはサミュエルの他にとりわけ自分と親しくしていた友人達へと手紙を認めた。
サミュエルには一度結婚式の時に会って話もしているが、近いうちにルズベリー帝国の第二皇子夫妻として諸外国をまわることになり、その中でオルレーヌ王国に視察で向かうことになったことを書き記す。
サミュエルはシモンとマリアンの結婚式とジョシアとエレオノーラの結婚式が同時期に行われるようにリチャードをはじめとするジョシアの家族側と話を通している為、シモンとマリアンの結婚式はエレオノーラの喪が明けていないという理由で欠席し、ジョシアとエレオノーラの結婚式に参加する為に極秘でルズベリー帝国に向かって花嫁の父として結婚式に参加した。
極秘でしかも宰相の仕事に穴を開ける訳にもいかなかったから、ルズベリー帝国でゆっくり過ごすことは出来ず、結婚式が終わったらとんぼ帰りしたのだ。
エレオノーラと親しくしていた友人達へは、エレオノーラは死刑執行されたことになっているが実は生きており、ルズベリー帝国の第二皇子と結婚したことと近いうちにオルレーヌ王国へ視察に行くということを書き記した。
ついでに出来ればエレオノーラが学園の卒業パーティーで退場した後の出来事と今のオルレーヌ王国の様子も教えて欲しいということをお願いした。
死亡した人物が実は生きているといきなり手紙を送っても信憑性はないので、エレオノーラとその人しか知らないエピソードも手紙の本文中に盛り込んでいる。
手紙を出してから数日後、サミュエルからも友人達からも手紙の返事がエレオノーラの元へ届く。
サミュエルの方の手紙にはそろそろクリスティーンを毒殺した罪でルイズを逮捕するということが書かれていた。
エレオノーラから実の母を奪って、さらにはブロワ公爵邸で好き勝手していたルイズがようやく裁かれるのかと思うと胸がすく思いだ。
エレオノーラがまだオルレーヌ王国にいた頃、サミュエルとエレオノーラは王宮のサミュエルの執務室で会って話をすることが多かったが、そこでの話でサミュエルがルイズと再婚して然程時間を経ずに証拠を掴んだことをエレオノーラは知っていた。
サミュエルの考えもその時に聞いて理解していたので、エレオノーラからすればやっと相応しい時が来たのかという感覚だ。
ルイズの件はサミュエルが自分自身の手で彼女を追い詰めて地獄へ叩き落したいだろうから、全てサミュエルに任せておけば万事上手くだろう。
一方、友人達からの手紙は総じてエレオノーラが生きていてよかったというものだった。
手紙の筆跡とその人しか知らないエピソードが書かれていたことで、本当にエレオノーラからの手紙だと信じてもらえたようである。
友人達からの手紙によると、卒業パーティーでエレオノーラの退場後、シモンとマリアンはエレオノーラの処断を言い渡した時の表情から一転して笑顔で二人の新たな婚約を発表。
その一ヶ月後、確かに結婚式は行われたが、出席する貴族なんて皆無で王太子の結婚式としてはあり得ないほど小規模なものだったという。
詳しく状況を記されている手紙には、シモンとマリアンは新たな婚約を発表した時、”自分達は真実の愛で結ばれた相手”や”悪を倒して真実の愛で結ばれた”と言っていたということも書かれていた。
その時の様子から二人がエレオノーラを悪だと決めつけて陥れたのではないかという疑念と、笑顔全開で自分達の婚約を発表していたので、二人の障害になるエレオノーラが死刑になって喜んでいるようにしか見えず、結果、シモンに対して不信や疑念を募らせることになったようである。
今のシモンとマリアンは社交界の中で浮いた存在である。
ルイズの事件が公表された後は、それがまた新たな呼び水を貴族社会に齎すだろう。
エレオノーラが視察でオルレーヌ王国へ向かう時。
その時こそがエレオノーラの残した毒が回る時だ。
エレオノーラはオルレーヌ王国へ向かう日を指折り数えて楽しみにしていた。
サミュエルには一度結婚式の時に会って話もしているが、近いうちにルズベリー帝国の第二皇子夫妻として諸外国をまわることになり、その中でオルレーヌ王国に視察で向かうことになったことを書き記す。
サミュエルはシモンとマリアンの結婚式とジョシアとエレオノーラの結婚式が同時期に行われるようにリチャードをはじめとするジョシアの家族側と話を通している為、シモンとマリアンの結婚式はエレオノーラの喪が明けていないという理由で欠席し、ジョシアとエレオノーラの結婚式に参加する為に極秘でルズベリー帝国に向かって花嫁の父として結婚式に参加した。
極秘でしかも宰相の仕事に穴を開ける訳にもいかなかったから、ルズベリー帝国でゆっくり過ごすことは出来ず、結婚式が終わったらとんぼ帰りしたのだ。
エレオノーラと親しくしていた友人達へは、エレオノーラは死刑執行されたことになっているが実は生きており、ルズベリー帝国の第二皇子と結婚したことと近いうちにオルレーヌ王国へ視察に行くということを書き記した。
ついでに出来ればエレオノーラが学園の卒業パーティーで退場した後の出来事と今のオルレーヌ王国の様子も教えて欲しいということをお願いした。
死亡した人物が実は生きているといきなり手紙を送っても信憑性はないので、エレオノーラとその人しか知らないエピソードも手紙の本文中に盛り込んでいる。
手紙を出してから数日後、サミュエルからも友人達からも手紙の返事がエレオノーラの元へ届く。
サミュエルの方の手紙にはそろそろクリスティーンを毒殺した罪でルイズを逮捕するということが書かれていた。
エレオノーラから実の母を奪って、さらにはブロワ公爵邸で好き勝手していたルイズがようやく裁かれるのかと思うと胸がすく思いだ。
エレオノーラがまだオルレーヌ王国にいた頃、サミュエルとエレオノーラは王宮のサミュエルの執務室で会って話をすることが多かったが、そこでの話でサミュエルがルイズと再婚して然程時間を経ずに証拠を掴んだことをエレオノーラは知っていた。
サミュエルの考えもその時に聞いて理解していたので、エレオノーラからすればやっと相応しい時が来たのかという感覚だ。
ルイズの件はサミュエルが自分自身の手で彼女を追い詰めて地獄へ叩き落したいだろうから、全てサミュエルに任せておけば万事上手くだろう。
一方、友人達からの手紙は総じてエレオノーラが生きていてよかったというものだった。
手紙の筆跡とその人しか知らないエピソードが書かれていたことで、本当にエレオノーラからの手紙だと信じてもらえたようである。
友人達からの手紙によると、卒業パーティーでエレオノーラの退場後、シモンとマリアンはエレオノーラの処断を言い渡した時の表情から一転して笑顔で二人の新たな婚約を発表。
その一ヶ月後、確かに結婚式は行われたが、出席する貴族なんて皆無で王太子の結婚式としてはあり得ないほど小規模なものだったという。
詳しく状況を記されている手紙には、シモンとマリアンは新たな婚約を発表した時、”自分達は真実の愛で結ばれた相手”や”悪を倒して真実の愛で結ばれた”と言っていたということも書かれていた。
その時の様子から二人がエレオノーラを悪だと決めつけて陥れたのではないかという疑念と、笑顔全開で自分達の婚約を発表していたので、二人の障害になるエレオノーラが死刑になって喜んでいるようにしか見えず、結果、シモンに対して不信や疑念を募らせることになったようである。
今のシモンとマリアンは社交界の中で浮いた存在である。
ルイズの事件が公表された後は、それがまた新たな呼び水を貴族社会に齎すだろう。
エレオノーラが視察でオルレーヌ王国へ向かう時。
その時こそがエレオノーラの残した毒が回る時だ。
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