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第3話
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「ねぇ、シリル様。私はシリル様と結婚してエヴァンス侯爵夫人として贅沢な暮らしがしたいの。実家の男爵家みたいな貧乏暮らしは絶対に嫌。でも何かさっきからシリル様とアイリーン様の話を聞いていたら、侯爵家はシリル様のおうちではないみたい。それでもなんとかアイリーン様を追い出してくれない? シリル様は元々親戚だから、侯爵家当主になることくらい融通してもらえるんじゃない?」
シリルが口をはさむ前に、アイリーンはエイダに話しかける。
「エイダ様。あなた、お話をちゃんと聞いていましたか? エヴァンス侯爵家の私の家で、お父様は最初からシリル様を侯爵家当主にするつもりはないのです。そして、いくら親戚と言えど融通して他家の者が当主になってその家の本来当主になり得る家人を追い出すなんてそんな馬鹿な話ないですわ。仮にあなたがご実家のバーク男爵家の一人娘とします。あなたの婚約者が外で恋人を作り、さらに恋人との間に子供まで作る。婚約者は自分がバーク男爵家次期当主となり、その恋人を男爵夫人として迎え入れ、そして生まれてくる子は男爵家の跡取りにするから、元々男爵家にいるエイダ様を追い出して男爵家に住む。侯爵家と男爵家では資産に差はありますが、エイダ様ならこの婚約者の暴挙を認めますか?」
アイリーンは、今の状況をエイダの家であるバーク男爵家に置き換えてわかりやすく説明する。
「そんなの認めません!」
「そうですわね。でもシリル様とあなたは私に対してこれと同じことを主張なさっていますわ。他家による家の乗っ取りですわね」
アイリーンが分かりやすく説明すると、エイダははっとした表情になる。
「じゃあ私とお腹の子のこれからはどうなるんですか!?」
「さぁ? 正直、私には何の関係もありませんので何とも」
「何でそんな無責任なことを!」
「だってそうではないですか? あなた自身の判断でシリル様と恋人になり、子供を作った。シリル様に婚約者がいると知ったのはどの段階だったか私はわかりかねますが。そこに私の意思や指示はありますか?」
アイリーンが意図してこのような状況にしたのなら、何らかの責任は負わねばならないが、今回のこの件は、シリルとエイダが勝手にやったことである。
自分達がしたことは自分達でどうにかすべきだ。
「それはないけど……でもシリル様と私の為に何とか便宜を図ってくれてもいいんじゃないですか?」
「それをして私に何の得がございますか? そもそも私はあなた達の恋愛沙汰の被害者ですわ。婚約をダメにされた挙句、あなた達の今後の便宜を図れですって? あなたみたいな厚顔無恥な方、初めてですわ」
「アイリーン様って意地悪な方なのね……! シリル様、こんな方と婚約してたなんて可哀そう!」
「エイダ。これ以上粘っても埒が明かない。仕方ないからマイソン伯爵家で一緒に暮らそう。侯爵家ほど財産がある訳ではないが、父上も母上もエイダを歓迎してくれるはずだ」
「本当……?」
「ああ。とっととこんな家出るぞ」
「はい!」
応接室から出る直前に二人はアイリーンの方へ振り返る。
「おい、アイリーン。後から俺の力が必要になったって泣きついてきても知らないからな!」
「そうです! 後から言っても知らないんだから!」
「そんな日は未来永劫来ませんので、ご安心下さい。お二人さん、お幸せに」
こうして二人は侯爵家邸を出て行った。
(最後まで分かり合えない方達だったわ。それにしても伯爵家で一緒に暮らすなんてそんな展開になる訳がありませんわ。おめでたい方達ですこと。さて、お父様に話して、すぐにマイソン伯爵家にも婚約解消に至った経緯を記した手紙を送りましょう)
シリルが口をはさむ前に、アイリーンはエイダに話しかける。
「エイダ様。あなた、お話をちゃんと聞いていましたか? エヴァンス侯爵家の私の家で、お父様は最初からシリル様を侯爵家当主にするつもりはないのです。そして、いくら親戚と言えど融通して他家の者が当主になってその家の本来当主になり得る家人を追い出すなんてそんな馬鹿な話ないですわ。仮にあなたがご実家のバーク男爵家の一人娘とします。あなたの婚約者が外で恋人を作り、さらに恋人との間に子供まで作る。婚約者は自分がバーク男爵家次期当主となり、その恋人を男爵夫人として迎え入れ、そして生まれてくる子は男爵家の跡取りにするから、元々男爵家にいるエイダ様を追い出して男爵家に住む。侯爵家と男爵家では資産に差はありますが、エイダ様ならこの婚約者の暴挙を認めますか?」
アイリーンは、今の状況をエイダの家であるバーク男爵家に置き換えてわかりやすく説明する。
「そんなの認めません!」
「そうですわね。でもシリル様とあなたは私に対してこれと同じことを主張なさっていますわ。他家による家の乗っ取りですわね」
アイリーンが分かりやすく説明すると、エイダははっとした表情になる。
「じゃあ私とお腹の子のこれからはどうなるんですか!?」
「さぁ? 正直、私には何の関係もありませんので何とも」
「何でそんな無責任なことを!」
「だってそうではないですか? あなた自身の判断でシリル様と恋人になり、子供を作った。シリル様に婚約者がいると知ったのはどの段階だったか私はわかりかねますが。そこに私の意思や指示はありますか?」
アイリーンが意図してこのような状況にしたのなら、何らかの責任は負わねばならないが、今回のこの件は、シリルとエイダが勝手にやったことである。
自分達がしたことは自分達でどうにかすべきだ。
「それはないけど……でもシリル様と私の為に何とか便宜を図ってくれてもいいんじゃないですか?」
「それをして私に何の得がございますか? そもそも私はあなた達の恋愛沙汰の被害者ですわ。婚約をダメにされた挙句、あなた達の今後の便宜を図れですって? あなたみたいな厚顔無恥な方、初めてですわ」
「アイリーン様って意地悪な方なのね……! シリル様、こんな方と婚約してたなんて可哀そう!」
「エイダ。これ以上粘っても埒が明かない。仕方ないからマイソン伯爵家で一緒に暮らそう。侯爵家ほど財産がある訳ではないが、父上も母上もエイダを歓迎してくれるはずだ」
「本当……?」
「ああ。とっととこんな家出るぞ」
「はい!」
応接室から出る直前に二人はアイリーンの方へ振り返る。
「おい、アイリーン。後から俺の力が必要になったって泣きついてきても知らないからな!」
「そうです! 後から言っても知らないんだから!」
「そんな日は未来永劫来ませんので、ご安心下さい。お二人さん、お幸せに」
こうして二人は侯爵家邸を出て行った。
(最後まで分かり合えない方達だったわ。それにしても伯爵家で一緒に暮らすなんてそんな展開になる訳がありませんわ。おめでたい方達ですこと。さて、お父様に話して、すぐにマイソン伯爵家にも婚約解消に至った経緯を記した手紙を送りましょう)
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