4 / 10
第4話
しおりを挟む
キャシーが帰った後、ジュリアンとフルールは応接室で紅茶のおかわりをする。
「何というか……凄い人でしたわね。人の話は聞かない・身分に応じた話し方も出来ない・思い込みは酷く、何でも自分の思い通りになると思っている」
「昔からあんな感じで苦労してきたんです。だから隣の国に一家で移住するって聞いた時は本当に嬉しくて。出来れば二度と会いたくない相手でした」
ジュリアンは心底うんざりした様子である。
「今回は向こうが押しかけてきたから不可抗力ですわ。それにしても随分父親の権力を過信しておりますわね。国一番の商会だろうと此方が逆にボナリー商会に圧力をかけるのは本当に簡単ですのに。今まであの方のお願い事とやらで上位貴族が絡むようなことがなかったのでしょうね。力関係がまるでわかっていないですわ」
ブロワ公爵家もベルレアン侯爵家も歴史・財力・権力といった側面で国内の貴族のランク付けをした場合、両家とも確実に上位10位以内には入る。
因みに公爵家は7家、侯爵家は15家ある。
それだけ力があるので、社交界での影響力は言わずもがな。
影響力のある家が茶会やパーティーで一言噂を流せば、上位貴族から下位貴族まであっという間に話が広まる。
ブロワ公爵家とベルレアン侯爵家を敵に回すという選択をする貴族なんてほぼいないに等しい。
「権力を使って圧力をかけるのはあまり好きではありませんが、我が家とベルレアン侯爵家連名で、貴族の方々がボナリー商会から商品を買わないよう圧力をかけます。それと同時にボナリー商会以外の商会にもボナリー商会に加担しないなら圧力をかけないが、加担するのなら容赦しないと通達します。勿論、ベルレアン侯爵家の方はお義父上とお義母上に話をして許可を得てからにします。数々の無礼な物言いと態度。今までは我慢していましたが、流石に頭に来ました。それと、もうすぐ公爵家の新しい特産品として売り出す例の商品もボナリー商会には卸しません。ボナリー商会に加担しない商会に卸します」
「私も賛成です。ベルレアン侯爵家はバンベルクにもバンベルクの貴族社会で影響力のある親戚がおりますので、親戚の方にお願いしてバンベルクの方でも圧力をかけますわ。其方こそ後で泣きついてきても知りませんというものです」
もうすぐ売り出す例の商品とは繊細な金細工の容器に入った薔薇の花びらの頬紅のことである。
ブロワ公爵家の領地は薔薇の生産地として有名である。
だからこそ公爵邸にも見事な薔薇園があり、公爵家の家紋にも薔薇のモチーフがあしらわれている。
薔薇は飾りの生花としては勿論のこと、薔薇を原料とした化粧水や香水やポプリ、はたまた乾燥させた薔薇の花びらを紅茶に浮かべるお洒落な楽しみ方をするのも貴族の夫人の間で最近流行っている。
そんな中、ジュリアンはブロワ公爵領産の薔薇を使った新しい特産品を作り出そうとした。
新しい特産品は見た目が綺麗な装飾品に薔薇を使った化粧品を入れて売ることを考えていた。
見た目が綺麗で珍しいものを持っていることは貴族社会ではある種のステータスだ。
しかし、中に入れる化粧品は既にあるありきたりなものではつまらない。
自分の母や友達の妻、領民の女性など様々な意見を聞き、たどり着いたのが薔薇の花びらの頬紅だった。
花びらの形の頬紅はまだ売り出している者はいない為、新しさを売りに出来る上、綺麗な装飾品に入れるととても映える。
何度も試行錯誤を繰り返して頬紅が完成し、装飾品の素材は何にするのか?と考えた時、ジュリアンが真っ先に思いついたのが金だ。
フルールの実家のベルレアン侯爵家の領地は金の産出地として有名で、それに付随して金細工で有名な職人も多数領内に在住している。
そこでベルレアン侯爵家と交渉し、頬紅の中身の部分はブロワ公爵家、金細工の装飾の部分はベルレアン侯爵家と合同で制作して販売するという話になり、ジュリアンとフルールは政略結婚した。
「何というか……凄い人でしたわね。人の話は聞かない・身分に応じた話し方も出来ない・思い込みは酷く、何でも自分の思い通りになると思っている」
「昔からあんな感じで苦労してきたんです。だから隣の国に一家で移住するって聞いた時は本当に嬉しくて。出来れば二度と会いたくない相手でした」
ジュリアンは心底うんざりした様子である。
「今回は向こうが押しかけてきたから不可抗力ですわ。それにしても随分父親の権力を過信しておりますわね。国一番の商会だろうと此方が逆にボナリー商会に圧力をかけるのは本当に簡単ですのに。今まであの方のお願い事とやらで上位貴族が絡むようなことがなかったのでしょうね。力関係がまるでわかっていないですわ」
ブロワ公爵家もベルレアン侯爵家も歴史・財力・権力といった側面で国内の貴族のランク付けをした場合、両家とも確実に上位10位以内には入る。
因みに公爵家は7家、侯爵家は15家ある。
それだけ力があるので、社交界での影響力は言わずもがな。
影響力のある家が茶会やパーティーで一言噂を流せば、上位貴族から下位貴族まであっという間に話が広まる。
ブロワ公爵家とベルレアン侯爵家を敵に回すという選択をする貴族なんてほぼいないに等しい。
「権力を使って圧力をかけるのはあまり好きではありませんが、我が家とベルレアン侯爵家連名で、貴族の方々がボナリー商会から商品を買わないよう圧力をかけます。それと同時にボナリー商会以外の商会にもボナリー商会に加担しないなら圧力をかけないが、加担するのなら容赦しないと通達します。勿論、ベルレアン侯爵家の方はお義父上とお義母上に話をして許可を得てからにします。数々の無礼な物言いと態度。今までは我慢していましたが、流石に頭に来ました。それと、もうすぐ公爵家の新しい特産品として売り出す例の商品もボナリー商会には卸しません。ボナリー商会に加担しない商会に卸します」
「私も賛成です。ベルレアン侯爵家はバンベルクにもバンベルクの貴族社会で影響力のある親戚がおりますので、親戚の方にお願いしてバンベルクの方でも圧力をかけますわ。其方こそ後で泣きついてきても知りませんというものです」
もうすぐ売り出す例の商品とは繊細な金細工の容器に入った薔薇の花びらの頬紅のことである。
ブロワ公爵家の領地は薔薇の生産地として有名である。
だからこそ公爵邸にも見事な薔薇園があり、公爵家の家紋にも薔薇のモチーフがあしらわれている。
薔薇は飾りの生花としては勿論のこと、薔薇を原料とした化粧水や香水やポプリ、はたまた乾燥させた薔薇の花びらを紅茶に浮かべるお洒落な楽しみ方をするのも貴族の夫人の間で最近流行っている。
そんな中、ジュリアンはブロワ公爵領産の薔薇を使った新しい特産品を作り出そうとした。
新しい特産品は見た目が綺麗な装飾品に薔薇を使った化粧品を入れて売ることを考えていた。
見た目が綺麗で珍しいものを持っていることは貴族社会ではある種のステータスだ。
しかし、中に入れる化粧品は既にあるありきたりなものではつまらない。
自分の母や友達の妻、領民の女性など様々な意見を聞き、たどり着いたのが薔薇の花びらの頬紅だった。
花びらの形の頬紅はまだ売り出している者はいない為、新しさを売りに出来る上、綺麗な装飾品に入れるととても映える。
何度も試行錯誤を繰り返して頬紅が完成し、装飾品の素材は何にするのか?と考えた時、ジュリアンが真っ先に思いついたのが金だ。
フルールの実家のベルレアン侯爵家の領地は金の産出地として有名で、それに付随して金細工で有名な職人も多数領内に在住している。
そこでベルレアン侯爵家と交渉し、頬紅の中身の部分はブロワ公爵家、金細工の装飾の部分はベルレアン侯爵家と合同で制作して販売するという話になり、ジュリアンとフルールは政略結婚した。
641
あなたにおすすめの小説
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?
よどら文鳥
恋愛
デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。
予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。
「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」
「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」
シェリルは何も事情を聞かされていなかった。
「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」
どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。
「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」
「はーい」
同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。
シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。
だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。
〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。
藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。
学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。
入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。
その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。
ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
【完結】私の小さな復讐~愛し合う幼馴染みを婚約させてあげましょう~
山葵
恋愛
突然、幼馴染みのハリーとシルビアが屋敷を訪ねて来た。
2人とは距離を取っていたから、こうして会うのは久し振りだ。
「先触れも無く、突然訪問してくるなんて、そんなに急用なの?」
相変わらずベッタリとくっ付きソファに座る2人を見ても早急な用事が有るとは思えない。
「キャロル。俺達、良い事を思い付いたんだよ!お前にも悪い話ではない事だ」
ハリーの思い付いた事で私に良かった事なんて合ったかしら?
もう悪い話にしか思えないけれど、取り合えずハリーの話を聞いてみる事にした。
《完結》氷の侯爵令息 あなたが子供はいらないと言ったから
ヴァンドール
恋愛
氷の侯爵令息と言われたアラン。彼は結婚相手の伯爵令嬢にとにかく冷たい態度で接する。
彼女は義姉イライザから夫が子供はいらないと言ったと聞き、衝撃を受けるが気持ちを切り替え生きていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる