半分異世界

月野槐樹

文字の大きさ
226 / 305
第22章 広田3

第225話 森で見つけたもの

しおりを挟む
どのくらい、その場に座り込んでいたのだろうか。辺りが暗くなって来ていた。
武井さんが徐に立ち上がり、杖と短剣を拾い上げた。
そして、放り投げられていた毛布を畳み始めた。

「‥‥逃げられないにしてもさ。ちょっとでも居心地が良い場所に移動するのはできるだろう。
横になるにしたって、苔だとか落ち葉だとかがある辺りが良いし。」

確かに足下はごつごつした石が転がっていて、座り心地はよくなかった。
移動か。立ち上がってみたけど、呪具は反応しなかった。逃げたいという気持ちにならないように気をつけて移動をすることにした。
周辺を歩き回っていたら、開けた場所に出た。地面がこんもりと盛り上がっている場所もあり平坦ではないけど、草が沢山生えているので寝転ぶのには向いているかもしれない。

「ここにしてみるか‥‥。お、薬草が生えているぞ。」

武井さんはそう言って足下に生えていた植物を採って俺に見せてくれた。
ミントのような何となくスッキリした匂いがする草だ。細長い尖った葉っぱで、葉脈に黒っぽい線が入っている。

「葉っぱを揉んで傷口にぬるといいらしいよ。」

そう言われて俺もその薬草を探してみた。薬草の知識はないから、他にも薬草が生えているかもしれないが判断ができない。
途中で、武井さんが「これも薬草」と教えてくれたものをじっくりみて覚えて、探して採取する。
採取した薬草を一カ所にまとめて積み上げていたのだが、途中で、ふっと笑いがこみ上げてきた。

「何で、俺達薬草集めてるんですかね。死ぬって言うのに‥‥。」
「魔獣が来ない間はさ、生き長らえるわけだよ。そのときに飢え死にしたり、転んだ怪我が化膿したなんて理由で死ぬのも嫌だろう?」
「魔獣‥‥出ないってことですか?」
「そうとは限らないけど、今迄、遠吠え一つ聞いていないじゃないか?もしかして、森の浅い場所には、あまり魔獣がいないんじゃないかな。」

毛布に巻かれて連れて来られてしまったので、現在地が森の浅い場所なのか深い場所なのかはわからない。
しかし、武井さんは森の浅い場所、という認識のようだ。
騎士達もあまり森の奥には行かないのかもしれない。森の出口が見えない程度の浅い場所なのだろうか。
そう言われて魔獣が出て来ない場合の事を考える。
薬草はあるけど、他の食糧は?騎士がお情けでくれたパンと水筒だけだ。

「‥‥食べられる草とかは‥‥。」
「知らん。」
「餓死コースじゃないですか!」
「毒じゃなきゃ食べられるんじゃない?一般的な毒草はわかるよ。」
俺は溜め息をついた。

「一瞬、森の中暮らしを思い描きましたが‥‥。」
「森の中暮らし、いいねぇ。‥‥お?なんだ?」

薬草を探してしゃがみ込んでいた武井さんが意外そうな声を上げた。

「どうしました?」

俺は手を止めて、武井さんの方を見た。
武井さんは土が盛り上がった辺りの上にいて、草をかき分けている。

「なにか、木の棒が地面に突き刺さっているんだけどさ。ちょっと人工物っぽくて。‥‥あ‥‥。」

武井さんの手が突然止まった。そして、そろそろと四つん這い状態で後退をし始めた。

「え?どうしたんですか?」
「‥‥墓だよ、これ、多分‥‥。」
「ええ?」

姿勢を正して両手を合わせ拝んでいる武井さんに恐る恐る近付く。

「木の棒がさ、ナイフで削ったみたいになってるんで、よく見たら、文字っぽいものが書いてあるみたいにみえたんだよね。そういうのって、お墓でしょ。」
「文字って、人の名前ですか?」
「土がついててよく見えなかったんだよね。うーん‥‥。少しだけ水を使ってもよい? 布で吹いてみよう。」
「え?拭くんですか?誰のだか判らないお墓を?」
「供養してあげないとね。お墓だったら、その上を踏んじゃったみたいだし。」
「そ、そうですね‥‥。」

いまのままだと、墓場を荒らしたみたいな状態になっている。それはちょっと怖いというか、悪い事をした感じがする。
布の切れ端を少し水で濡らして、地面から突き出ていた木の棒を武井さんがそっと拭っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

処理中です...