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第22章 広田3
第226話 鳴ってる
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「‥‥ああ、やっぱり‥‥。」
「やっぱり墓でしたか?」
俺はお供え用に花を摘んでいた。花といっても、この付近に咲いているものを集めているだけだけれど。
「日本語だった‥‥。」
武井さんの言葉に俺は息を呑んだ。
日本語?日本人の墓?
ドクンドクンと心臓が鳴る。
武井さんは静かな声で言った。
「『安らかに』って書いてある。裏側に名前が書いてあった。‥‥『香住圭』って。」
「あ、あああああ!!!!!」
俺は叫んだ。摘んだ花を握りしめて、駆け寄った。少し盛り上がった地面に、10センチない位の高さの木の棒が突き刺さっている。
そこにマジックで書いたような文字が、読み取れた。
「‥‥香住‥‥。」
召還されたあの日、血の海。永見と河村が手を血で汚していた。その先に居たのはやっぱり香住だったのだ。
はっきり見ていないから、受け入れられないでいた。だけど、状況的に、教室での状況と、神殿での永見と河村の態度から見ても、香住としか考えられなかった。
「香住‥‥。こんなところに‥‥。」
あの日、血で手を汚した永見達は、今日の俺と沢田さんと同じように神殿を追放されて森まで連れて来られたのだろう。
そして香住の遺体もここに運び込まれたのか。
永見達はその後どうなったんだろう。香住をこの場所に埋葬して、どこかに行ったのか。
「同級生?」
沢田さんの問いかけに俺は黙って頷いた。花を墓に供えて、手を合わせた。
「‥‥香住。あの日、何もしれやれなくてゴメン。‥‥こんな場所に一人にして、ごめんな。」
俺は、香住の墓の前で謝った。この場所に埋葬されているのは、俺のせいではないけれど、なんだか哀しい気持ちになって思わず口をついて出た。
「俺もこの場所で死ぬかもしれない。‥‥でもな‥‥。俺‥‥生きたいよ。‥‥香住は死んじゃっているのに、言うようなことじゃないのは判っているけど。
死にたくない。死にたくないんだよ。」
ボロボロと目から涙が溢れ出して来た。嗚咽が止まらなくなる。
香住の墓に向かって言う事ではないのに、感情が溢れ出してしまった。
武井さんは何も言わずに、香住の墓の前で泣いている俺を見守っていてくれた。
だいぶ時間が経って涙が収まって来た頃、肩をとトントンと叩かれた。
「広田君、鳴ってる。」
「え?」
顔を上げると、武井さんが何か神妙な顔をして俺を見つめていた。
「‥‥鳴ってるよ?」
「鳴ってるって?何が?あ、携帯‥‥。‥‥え?」
俺の懐でバイブ音が響いていた。ああ、誰かから電話かと一瞬思った後、その状況の異常さに頭が真っ白になった。
「で、電話‥‥?そんなはず‥‥。」
ポカンとして動きを止めた俺の肩を武井さんが掴んで揺すった。
「すぐ確認した方が良いよ!」
「あ、は、はい‥‥。‥‥えっと‥‥。」
携帯は革鎧の内側に布でくるんで麻袋に入れて首からぶら下げていた。取り出すには革鎧をまず脱がないといけない。
慌ててじたばたしていたら、沢田さんが手伝ってくれて、なんとか革鎧の留め具の一部を外して、携帯の入った麻袋を引っぱりだす事が出来た。
「止まった‥‥。」
結構長い間鳴り続けていたバイブ音が止まってしまった。慌てて、麻袋から携帯を取り出した。
携帯は電源が入った状態になっていた。そして、恐る恐る着信履歴のアイコンを開いたが、どこからも着信した形跡はなかった。
「やっぱり墓でしたか?」
俺はお供え用に花を摘んでいた。花といっても、この付近に咲いているものを集めているだけだけれど。
「日本語だった‥‥。」
武井さんの言葉に俺は息を呑んだ。
日本語?日本人の墓?
ドクンドクンと心臓が鳴る。
武井さんは静かな声で言った。
「『安らかに』って書いてある。裏側に名前が書いてあった。‥‥『香住圭』って。」
「あ、あああああ!!!!!」
俺は叫んだ。摘んだ花を握りしめて、駆け寄った。少し盛り上がった地面に、10センチない位の高さの木の棒が突き刺さっている。
そこにマジックで書いたような文字が、読み取れた。
「‥‥香住‥‥。」
召還されたあの日、血の海。永見と河村が手を血で汚していた。その先に居たのはやっぱり香住だったのだ。
はっきり見ていないから、受け入れられないでいた。だけど、状況的に、教室での状況と、神殿での永見と河村の態度から見ても、香住としか考えられなかった。
「香住‥‥。こんなところに‥‥。」
あの日、血で手を汚した永見達は、今日の俺と沢田さんと同じように神殿を追放されて森まで連れて来られたのだろう。
そして香住の遺体もここに運び込まれたのか。
永見達はその後どうなったんだろう。香住をこの場所に埋葬して、どこかに行ったのか。
「同級生?」
沢田さんの問いかけに俺は黙って頷いた。花を墓に供えて、手を合わせた。
「‥‥香住。あの日、何もしれやれなくてゴメン。‥‥こんな場所に一人にして、ごめんな。」
俺は、香住の墓の前で謝った。この場所に埋葬されているのは、俺のせいではないけれど、なんだか哀しい気持ちになって思わず口をついて出た。
「俺もこの場所で死ぬかもしれない。‥‥でもな‥‥。俺‥‥生きたいよ。‥‥香住は死んじゃっているのに、言うようなことじゃないのは判っているけど。
死にたくない。死にたくないんだよ。」
ボロボロと目から涙が溢れ出して来た。嗚咽が止まらなくなる。
香住の墓に向かって言う事ではないのに、感情が溢れ出してしまった。
武井さんは何も言わずに、香住の墓の前で泣いている俺を見守っていてくれた。
だいぶ時間が経って涙が収まって来た頃、肩をとトントンと叩かれた。
「広田君、鳴ってる。」
「え?」
顔を上げると、武井さんが何か神妙な顔をして俺を見つめていた。
「‥‥鳴ってるよ?」
「鳴ってるって?何が?あ、携帯‥‥。‥‥え?」
俺の懐でバイブ音が響いていた。ああ、誰かから電話かと一瞬思った後、その状況の異常さに頭が真っ白になった。
「で、電話‥‥?そんなはず‥‥。」
ポカンとして動きを止めた俺の肩を武井さんが掴んで揺すった。
「すぐ確認した方が良いよ!」
「あ、は、はい‥‥。‥‥えっと‥‥。」
携帯は革鎧の内側に布でくるんで麻袋に入れて首からぶら下げていた。取り出すには革鎧をまず脱がないといけない。
慌ててじたばたしていたら、沢田さんが手伝ってくれて、なんとか革鎧の留め具の一部を外して、携帯の入った麻袋を引っぱりだす事が出来た。
「止まった‥‥。」
結構長い間鳴り続けていたバイブ音が止まってしまった。慌てて、麻袋から携帯を取り出した。
携帯は電源が入った状態になっていた。そして、恐る恐る着信履歴のアイコンを開いたが、どこからも着信した形跡はなかった。
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