半分異世界

月野槐樹

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第14章 尾市1

第175話 彼らの近況

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江角さんと柄舟さんはアパートを二人で借りているそうだ。部屋に案内されたら江角さんもいた。
「尾市、一人で商隊について来たのか?行動力あるなぁ。」

俺が商隊について来たというと江角さんは感心した様子だった。そして少し伺うように首をかしげた。

「もしかして椎名とか石倉ちゃんが気になって戻って来たの?」
「椎名の事は気になってましたけど。石倉は別に‥‥。」

三輪を救出した途端、あっさり三輪に乗り換えた感がある石倉のことは、あまり関わりたくないと思っている。そう告げると、うんうんと二人に頷かれた。

「まあ、あの娘は難しいからね。合わないなら関わり合いにならないのは正解だと思うよ。」

お茶代わりに、白湯を出してくれた。料理はしないけど、水は沸かして飲まないと腹を壊すことがあるので湯沸かしだけはするそうだ。

「江角さんと柄舟さんから見ても、石倉は合わない感じですか?」
白湯をいただきながら、聞いてみた。

すると、江角さんが、複雑そうな顔をした。
「ちょっと気分で動きすぎなところがあるからね。ああ‥‥彼女、今三輪と暮らしてるよ。」
「へぇ‥‥。」

特に驚きはしないけど、椎名はショックを受けたりしていないだろうか、とちょっと気にかかった。
どうやら俺達がツェット領に出発した直後くらいにはもう二人で同室になっていたんだそうだ。
三輪と石倉は、ここからは少し離れているけど東地区内のアパートに二人で住んでいるらしい。

「あ、椎名と連絡取りたいんですけど。住所とか分かりますか?一応ギルドにも伝言は頼んだんですけど。」
「椎名は柊と一緒に住んでるよ。ここからちょっと歩いたとこ。」

住所を教えてもらってほっとする。
お礼を言って帰りかけて、土産を持っていた事を思い出した。

「あ,お土産です。これ‥‥。」
クッキーと瓶詰めのジャムとマスタードを差し出した。

「おお!幻のマスタード!それに菓子まで!ジャムも!」
「幻?」

想像以上に感激してくれている江角さん達に聞き返した。

「人気過ぎてさ。ツェット商会の店で瓶詰めは数量限定の発売のみで、後は屋台でソーセージパンにちょっと添えられるだけなんだよ。」

ソーセージパンを追加料金なしで売るなら、瓶詰めで売った方が利益がでるのではと思ったら、ソーセージパンの類似品は他でも売られているらしく、差別化の為にマスタードを添えているそうだ。
マスタードのソーセージパンとして売ることでマスタードの宣伝も兼ねているらしい。
江角さんがマスタードの瓶のラベルを眺めて、笑みを浮かべた。

「なにげにラベルに『K』の文字がデザインされてるよね。」
「『ケイのグルメ』ってブランド展開してるらしいです。」
「へえ。そのうち全国に広まるのかね。すごいね。」

少しだけ圭君へ思いを馳せてしみじみとしていたが、ふと、重盛の事を思い出した。
「あ、ここに来る前に重盛に会ったんですけど。あと、南部って人と一緒でした。」
「ああ、彼らね‥‥。」

江角さん達は、俺達がツェット領へ旅立った後にもう一度だけ、隣国の国境を超えて救出作戦を実行したそうだ。
スマホのバッテリーが切れる前に実行しておこうって思ったんだそうだ。
そうして運良く二人救出することができたらしい。

「彼らね‥‥。助けたのはいいんだけど、宿代とか生活費とか全部俺達に払ってもらう気満々って感じだったんで、俺達は早急に部屋借りて宿を出る事にしたんだ。」

彼らの言い分では、ここに連れて来られたのは自分達のせいじゃない、被害者だ。稼げるやつが面倒見ろってことだったらしい。
実は、後から救出した三輪、柊さんについては、自立できるまで支援しようとしていたそうだ。そこに石倉さんも一人では狩猟ギルドの依頼は受けられないといって、支援して欲しいと頼まれて、江角さん達の狩猟ギルドの稼ぎから暫くの間は宿代を補助していたんだそうだ。

その後、重盛達を救出したらまるで宿代を払ってもらって当たり前とでも言うような態度で、一人部屋がいいだのと言い出したので、見切りをつけて離れたらしい。

「そうだったんですね‥‥。大変でしたね。」
「まあ出来る範囲の事しかするつもりはなかったけどね。俺ら彼らに対して責任はないからね。
一応、救出する時に逃げるかの意思だって確認したし。」
「まあ、突き放したら、それなりに狩猟ギルドでやっていけてるらしいから、突き放してよかったんじゃないかな。」

江角さんと柄舟さんは、自分の知り合いでもない召還者を救出して、宿代も暫く面倒をみたりなんて、器が広いなあと感心する。
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