半分異世界

月野槐樹

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第1章 圭

第20話 僕なりに向き合った

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「その使い物にならない足で俺に立ち向かおうってか。」

本木に向かって行こうとする僕を見て本木が鼻で笑った。僕は拳を握りしめて本木をじっと睨みながら言った。

「‥‥この足を怪我した事故は、御前が引き起こしたんじゃないか。それを親の力と金で隠蔽したくせに。」
「‥なっ‥‥!」

本木の顔色が変わった。

「優等生ぶりながら、何時も陰で俺をいたぶって楽しかったか?」
「何だと!」

僕はじんじんとする唇の端に指を触れた。指に血がついた。

「今日のはどうだ?これは立派な暴力だよ。僕に公衆の面前で恥をかかせる為に皆を集めたのか?失敗だったな。目撃者多数だ。
今日は隠蔽できないよ。暴行で警察に訴えようかな。」
「貴様!」

本木が突進して来て僕の胸ぐらを再び掴んだ。

「もう一度殴るのか。いいよ、やってみろよ。ずっと言いたかったことを言ってやる!」
「何?」

至近距離にある本木の眉が不審気に動いた。僕は口元に力を入れ口角をにっと上げた。
ずっと、逃げてたかもしれない。言いたい事を言わずに。気持ちを半分異世界に向けて。怒りとか悲しみとか全部そらして。でも、今日は、今日こそは目を逸らさない。
いつも明確ないじめの証拠を残さない本木に、敢えて殴られてやった。
これで証拠になる? 何か本木に処分がくだされるとかそんなことはどうでもいいけど。
こいつに復讐したいわけじゃない。でも言いたい事は言ってやる。

「いつも判らないくらいの嫌みを言って僕をからかって楽しかったかよ。
僕が気に食わないならはっきりそういえば良かったじゃないか。今みたいに! 腑抜けの卑怯者が!
御前なんか、御前なんか大嫌いだよ!!」

腑抜けは僕も一緒だ。

この程度の事がずっと言えなかった。ずっと色んな事を言えずに、まともに向き合おうとせずに逃げてた。
でも、やっと言えた!
殴られたからどうだというんだ。ただ痛いだけじゃないか。
ずっと、ずっと抱えていた苦しい気持ちに比べたらどうってことないじゃないか。

帰ったら、兄さんとちゃんと話そう。母さんの帰りも待って、母さんとも話そう。
父さんとも‥‥。

半分異世界に逃げたりなんかしないで、現実に向かい合おう。

「この野郎!」

本木が僕の胸ぐらを掴んだまま、もう一方の手で僕の顔を殴った。顔だけ吹っ飛ばされそうな衝撃が走った。
本木が僕の胸ぐらから手を離した。足が床に着いてバランスを取ろうとしたタイミングで思いっきり突き飛ばされた。
怒りで真っ赤になったような本木の憎々しげな顔。何か叫んでいる瑛太。戸惑った顔をしている広田。
泣きだしそうな顔の藍ちゃん。呆然としたような顔の絵琉ちゃん、いや絵琉でいいか。
ゆっくりと彼らの姿が遠くなって行くように見えた。凄く長い時間に感じる。入り口の方に飛ばされたらしくて中途半端に開いていたドアに背中をぶつけた。

ちらりと顔を動かすと、廊下に立っていたらしい悠宇と目があった。
何か言おうと口を開きかけたとき、凄くまぶしい光と衝撃を感じた。

‥‥それから何もわからなくなった。
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