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第1章 圭
第19話 対決
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藍ちゃんが怒った声をあげた。
「ちょっと!何するのよ!」
「本木!」
げらげら笑っている本木に向かって行こうとする瑛太。僕は瑛太の腕を掴んで止めた。瑛太が驚いた顔を僕に向けた。
「圭?」
「瑛太、僕が言うから。‥‥ちょっとこれ持ってて。」
サイドリリースバックルをはずして、デイバッグを瑛太に持ってもらう。重くて重くて動けなくなるからね。受け取った瑛太がガクンと腕を下げた。うん、重いんだそれ。ごめんね。
「あ、こっちも‥‥。」
床に置いたトートバックの事を思い出して拾い上げ、トートバックは藍ちゃんに手渡す。
「え、うわ。重‥‥。」
藍ちゃんが小さい声で呟いた。うん、ごめんね。そっちも超重いです。
本木の方に向き直って、左手を差し出した。
「それは、君にあげたんじゃないんだ。返してくれ。」
「ハハハ!何いっちゃってんの?仲間が増えてイキッてるのかよ。」
本木はへらへらと笑って、ゲームを高く掲げた。
「おい!君たち、何か揉め事か?」
教室の後ろのドアから広田桜威が入って来た。あれ、広田はどこかに行っていたのか。広田がこちらに向かって来ようとしている。
でも止めないで欲しい。今日は、今日こそは本木と正面から対決するつもりなんだ。
僕は本木を睨みつけて言った。
「返してくれよ。君のじゃない。」
「へへーん。ちょっと絵琉に優しくされてのぼせ上がったんだろう。欲しいって言われて、ホイホイ買って来たんじゃねえか。」
僕が睨みつけても本木はなんでもない様子でニヤニヤ笑っている。だから僕は声を強めた。
「のぼせ上がってなんかいない。返せ!」
「ええー?私がもらったのよ。一ヶ月も我慢して付き合ったんだからお駄賃でしょお。」
絵琉ちゃんの長い睫毛、ぱっちりした茶色がかった瞳。ちょっとアヒル口な薄い唇。あれ?‥‥こんなに醜かったっけ?
「絵琉ちゃんの事も普通のクラスメートでいようって、今日言うつもりだった。のぼせ上がってた訳じゃない。気がついてたよ。」
「えー?何それ、負け惜しみぃ?」
「負け惜しみでも結構だけど、からかわれて泣いたりしないってことだ!」
「はぁ?何それ~。」
絵琉ちゃんから目線を本木に戻した。ゲームは正直どうでもいい。でも本木の思い通りにはさせたくない。
「本木、そのゲームは君のじゃない。何でも思い通りになると思ったら大間違いだよ。」
「はあ?なんだ?偉そうに!」
本木が僕につかみかかった。ゲームを手にしていた左手が宙をさまよう。ゲームだけ狙って腕を振る。パーンとゲームが弾かれて床に転がった。
僕は本木に胸ぐらを掴まれて身体が少し宙に浮いた。息が苦しい。
「このオタク野郎!」
頬に衝撃が走った。殴られたようだ。
床に尻餅をつく。
はは!!
「圭!」
瑛太が駆け寄って助け起こしてくれる。
自分の力だけで本木と対峙したいけど、瑛太の手を借りて立ち上がる。今は本木との対決を優先しよう。
ズキリと足に激痛が走った。思わず顔を歪めると、本木が鼻で笑った。
「おい!何やってるんだ!」
広田が声を上げて近寄って来た。瑛太も止めに入ろうとしている。僕は制止させるように手で示した。ここは僕が対処するんだ。対処させて欲しいんだ。
「ちょっと!何するのよ!」
「本木!」
げらげら笑っている本木に向かって行こうとする瑛太。僕は瑛太の腕を掴んで止めた。瑛太が驚いた顔を僕に向けた。
「圭?」
「瑛太、僕が言うから。‥‥ちょっとこれ持ってて。」
サイドリリースバックルをはずして、デイバッグを瑛太に持ってもらう。重くて重くて動けなくなるからね。受け取った瑛太がガクンと腕を下げた。うん、重いんだそれ。ごめんね。
「あ、こっちも‥‥。」
床に置いたトートバックの事を思い出して拾い上げ、トートバックは藍ちゃんに手渡す。
「え、うわ。重‥‥。」
藍ちゃんが小さい声で呟いた。うん、ごめんね。そっちも超重いです。
本木の方に向き直って、左手を差し出した。
「それは、君にあげたんじゃないんだ。返してくれ。」
「ハハハ!何いっちゃってんの?仲間が増えてイキッてるのかよ。」
本木はへらへらと笑って、ゲームを高く掲げた。
「おい!君たち、何か揉め事か?」
教室の後ろのドアから広田桜威が入って来た。あれ、広田はどこかに行っていたのか。広田がこちらに向かって来ようとしている。
でも止めないで欲しい。今日は、今日こそは本木と正面から対決するつもりなんだ。
僕は本木を睨みつけて言った。
「返してくれよ。君のじゃない。」
「へへーん。ちょっと絵琉に優しくされてのぼせ上がったんだろう。欲しいって言われて、ホイホイ買って来たんじゃねえか。」
僕が睨みつけても本木はなんでもない様子でニヤニヤ笑っている。だから僕は声を強めた。
「のぼせ上がってなんかいない。返せ!」
「ええー?私がもらったのよ。一ヶ月も我慢して付き合ったんだからお駄賃でしょお。」
絵琉ちゃんの長い睫毛、ぱっちりした茶色がかった瞳。ちょっとアヒル口な薄い唇。あれ?‥‥こんなに醜かったっけ?
「絵琉ちゃんの事も普通のクラスメートでいようって、今日言うつもりだった。のぼせ上がってた訳じゃない。気がついてたよ。」
「えー?何それ、負け惜しみぃ?」
「負け惜しみでも結構だけど、からかわれて泣いたりしないってことだ!」
「はぁ?何それ~。」
絵琉ちゃんから目線を本木に戻した。ゲームは正直どうでもいい。でも本木の思い通りにはさせたくない。
「本木、そのゲームは君のじゃない。何でも思い通りになると思ったら大間違いだよ。」
「はあ?なんだ?偉そうに!」
本木が僕につかみかかった。ゲームを手にしていた左手が宙をさまよう。ゲームだけ狙って腕を振る。パーンとゲームが弾かれて床に転がった。
僕は本木に胸ぐらを掴まれて身体が少し宙に浮いた。息が苦しい。
「このオタク野郎!」
頬に衝撃が走った。殴られたようだ。
床に尻餅をつく。
はは!!
「圭!」
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自分の力だけで本木と対峙したいけど、瑛太の手を借りて立ち上がる。今は本木との対決を優先しよう。
ズキリと足に激痛が走った。思わず顔を歪めると、本木が鼻で笑った。
「おい!何やってるんだ!」
広田が声を上げて近寄って来た。瑛太も止めに入ろうとしている。僕は制止させるように手で示した。ここは僕が対処するんだ。対処させて欲しいんだ。
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