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第1章 圭
第14話 「美味しい」の言葉だけで
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テーブルの上には今日の晩ご飯は用意してある。
今日は、サバの味噌煮とパプリカとキノコのガーリック炒め。ほうれん草と油揚げの味噌汁。キュウリの梅和えだ。和風よりだね!
まだ少し温かいと思う。
兄さんがテーブルについたので、味噌汁の温めだけやってあげよう。
タッパーを全部冷蔵庫にしまい終わって、味噌汁をお椀に注ぎ入れていたら、料理を見つめていた兄さんが言った。
「‥‥今日は卵焼きないのか?」
「え、食べたかったの?」
「ああ‥‥あれ美味いから。」
「え?」
「いや‥‥全部美味いよ? 卵焼きは特に好きなだけで‥‥。」
兄さんが照れくさそうに言う。僕はなんだか目の周りが熱くなってきてしまった。
「美味しい?僕の料理?」
「ああ、腕上げたよな。」
「‥‥っ。」
ちょっと鼻の奥に痛みを感じる。何か泣きそう。
急に泣かれても兄さんも困るだろうから、味噌汁のお椀をテーブルの上に置いてさっさと部屋に戻ってしまおう。
そう思ってエプロンを外して台所を出ようとしたら、兄さんから更に声がかかった。
「あんなに色々作ってたのに、卵焼きはないんだ?」
「卵は半熟煮卵に全部使っちゃった。」
「あー、アレも美味いよな。」
「あ、明日!明日作るね!」
僕がそう言ったら、兄さんは笑った。
「ああ、楽しみにしてる。」
「‥‥。」
ジワリ、なにか来る。
「‥へ?泣いてんのか?」
「ち、違う‥‥。花粉症の季節だから‥‥。じゃあ、また明日ね。おやすみ!」
ごまかして急いで廊下に出た。
急いだからかバランスを崩してこけそうになる。落ち着こう。一旦落ち着こう。
ふうーーっと一回深呼吸。
落ち着け、落ち着け、落ち着いた。よし!
少しゆっくり目に歩いて部屋に戻った。
部屋に入って、ごろんとベッドの上に横たわった。天井を見つめながら考える。
「美味しい」って言われただけで、凄く嬉しくなってしまった。
僕はきっと単純なんだな。
兄さんとあんなに会話をしたのは何時ぶりだろう。明日卵焼きを作って出したらもっと話す事ができるだろうか。
‥‥母さんとも‥‥。今度卵焼きを出してみようか。それとも母さんの卵焼き食べたいって言ってみようか。
「忙しいのに!」って怒られちゃうかな。やっぱり僕が作って出すほうがいいか。
卵焼きの事考えていただけなのに、ちょっとウキウキしてきた。
ブーっとスマホが鳴った。見ると瑛太からだった。
ーーーー今日何か雰囲気違ったけど、何かあったか?大丈夫?
ほおー!鋭いなぁ~。
「ありがとう、大丈夫!っと」
返事を書いて送信した後、ついでにスマホのニュースを見た。
「関東圏学生行方不明者家族の会」という特設サイトが出来たというニュースがあった。
まだ集団家出の可能性もあると言われているから「被害者」とかって言葉も使わないんだな。
サイトを検索してみたところ、いままであちこちに分散していた事件の情報や家族からのメッセージなどがまとめられていた。
今日は、サバの味噌煮とパプリカとキノコのガーリック炒め。ほうれん草と油揚げの味噌汁。キュウリの梅和えだ。和風よりだね!
まだ少し温かいと思う。
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タッパーを全部冷蔵庫にしまい終わって、味噌汁をお椀に注ぎ入れていたら、料理を見つめていた兄さんが言った。
「‥‥今日は卵焼きないのか?」
「え、食べたかったの?」
「ああ‥‥あれ美味いから。」
「え?」
「いや‥‥全部美味いよ? 卵焼きは特に好きなだけで‥‥。」
兄さんが照れくさそうに言う。僕はなんだか目の周りが熱くなってきてしまった。
「美味しい?僕の料理?」
「ああ、腕上げたよな。」
「‥‥っ。」
ちょっと鼻の奥に痛みを感じる。何か泣きそう。
急に泣かれても兄さんも困るだろうから、味噌汁のお椀をテーブルの上に置いてさっさと部屋に戻ってしまおう。
そう思ってエプロンを外して台所を出ようとしたら、兄さんから更に声がかかった。
「あんなに色々作ってたのに、卵焼きはないんだ?」
「卵は半熟煮卵に全部使っちゃった。」
「あー、アレも美味いよな。」
「あ、明日!明日作るね!」
僕がそう言ったら、兄さんは笑った。
「ああ、楽しみにしてる。」
「‥‥。」
ジワリ、なにか来る。
「‥へ?泣いてんのか?」
「ち、違う‥‥。花粉症の季節だから‥‥。じゃあ、また明日ね。おやすみ!」
ごまかして急いで廊下に出た。
急いだからかバランスを崩してこけそうになる。落ち着こう。一旦落ち着こう。
ふうーーっと一回深呼吸。
落ち着け、落ち着け、落ち着いた。よし!
少しゆっくり目に歩いて部屋に戻った。
部屋に入って、ごろんとベッドの上に横たわった。天井を見つめながら考える。
「美味しい」って言われただけで、凄く嬉しくなってしまった。
僕はきっと単純なんだな。
兄さんとあんなに会話をしたのは何時ぶりだろう。明日卵焼きを作って出したらもっと話す事ができるだろうか。
‥‥母さんとも‥‥。今度卵焼きを出してみようか。それとも母さんの卵焼き食べたいって言ってみようか。
「忙しいのに!」って怒られちゃうかな。やっぱり僕が作って出すほうがいいか。
卵焼きの事考えていただけなのに、ちょっとウキウキしてきた。
ブーっとスマホが鳴った。見ると瑛太からだった。
ーーーー今日何か雰囲気違ったけど、何かあったか?大丈夫?
ほおー!鋭いなぁ~。
「ありがとう、大丈夫!っと」
返事を書いて送信した後、ついでにスマホのニュースを見た。
「関東圏学生行方不明者家族の会」という特設サイトが出来たというニュースがあった。
まだ集団家出の可能性もあると言われているから「被害者」とかって言葉も使わないんだな。
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