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1、序章
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「え、えーと、もう下ろしてもらってもいいですか?」
私を抱え上げた男性がパーティ会場を遠ざかり、城の周りを取り囲む静かな森に差し掛かったところに着く頃、
お姫様抱っこという状況に、私の中で恥ずかしさが爆発しそうになったので、
私はずっと伏せていた顔をそっと上げてそう言いました。
けれど、顔を上げたとて相手の男性はフードを被っていて顔はよく見えません。
しかし、ちょうど森の中の湖に反射された月明かりがフードの中に射し込んだ瞬間、
相手の黒曜石のような瞳がじっとこちらを見てるのに気づきました。
「っ…!」
私はその目を見た瞬間、息を飲んで身動ぎしました。
なぜなら、このストーリーで黒曜石の瞳を持つ男性といえば、伯爵令嬢を消してしまう王子傘下の魔法使いしかいなかったからです。
このままこの世界から消されるなんて、まっぴらごめん、
そう思った私は懐に忍ばせておいた、短剣を取り出して、さっとフードの隙間から見えてる魔法使いの首元にあてがいます。
魔法使いと目が合ってから、ここまでおよそ1秒弱といったところでしょうか。
我ながら素早い身のこなしに、心のなかで自分自身にちょっと関心しながら、その一方で表面上は私は相手を睨みつけて、
「降ろしなさい」
と今度は命令口調で言いました。だって、術か何かをかけられてるのか、この状況下で私は自分ではわずかに身体を動かすことしかできなかったんですもの。
そんな私の行動に相手は一瞬キョトンとしてから、笑いだしました。
「まったく、大衆の面前で婚約破棄を言い渡されるという、あんな無様な状況から白馬の王子様の如く救い出してあげたっていうのに、そんな態度はないだろう?」
魔法使いはケラケラと笑いながら、私をそっと地面に降ろしました。
ただし、私を地面に下ろした瞬間に短剣を持つ私の手を掴むのを忘れずに…
「こんな可愛い子が、こーんな危ない物を持ってちゃダメでしょ?」
そう言いながら、彼は短剣を持つ私の手から素早く短剣を抜き取ると
今度は私の首元へとその短剣を突きつけようとした瞬間、
私はさっと身を翻して、相手の懐に入ると、フードからわずかに見えてる魔法使いの首筋に、自身の指にはめてる刻印付きの指輪をあてがいました。
途端に指輪に刻まれてる小さな刻印が魔法使いの首元にも浮かび上がります。
確かに私はこの世界のストーリーにこれまで逆らうことができませんでした。
しかしながら、これまで生きてきた人生で色々とこの作られた異世界で生き残る方法を考えてきたのです。
私を抱え上げた男性がパーティ会場を遠ざかり、城の周りを取り囲む静かな森に差し掛かったところに着く頃、
お姫様抱っこという状況に、私の中で恥ずかしさが爆発しそうになったので、
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けれど、顔を上げたとて相手の男性はフードを被っていて顔はよく見えません。
しかし、ちょうど森の中の湖に反射された月明かりがフードの中に射し込んだ瞬間、
相手の黒曜石のような瞳がじっとこちらを見てるのに気づきました。
「っ…!」
私はその目を見た瞬間、息を飲んで身動ぎしました。
なぜなら、このストーリーで黒曜石の瞳を持つ男性といえば、伯爵令嬢を消してしまう王子傘下の魔法使いしかいなかったからです。
このままこの世界から消されるなんて、まっぴらごめん、
そう思った私は懐に忍ばせておいた、短剣を取り出して、さっとフードの隙間から見えてる魔法使いの首元にあてがいます。
魔法使いと目が合ってから、ここまでおよそ1秒弱といったところでしょうか。
我ながら素早い身のこなしに、心のなかで自分自身にちょっと関心しながら、その一方で表面上は私は相手を睨みつけて、
「降ろしなさい」
と今度は命令口調で言いました。だって、術か何かをかけられてるのか、この状況下で私は自分ではわずかに身体を動かすことしかできなかったんですもの。
そんな私の行動に相手は一瞬キョトンとしてから、笑いだしました。
「まったく、大衆の面前で婚約破棄を言い渡されるという、あんな無様な状況から白馬の王子様の如く救い出してあげたっていうのに、そんな態度はないだろう?」
魔法使いはケラケラと笑いながら、私をそっと地面に降ろしました。
ただし、私を地面に下ろした瞬間に短剣を持つ私の手を掴むのを忘れずに…
「こんな可愛い子が、こーんな危ない物を持ってちゃダメでしょ?」
そう言いながら、彼は短剣を持つ私の手から素早く短剣を抜き取ると
今度は私の首元へとその短剣を突きつけようとした瞬間、
私はさっと身を翻して、相手の懐に入ると、フードからわずかに見えてる魔法使いの首筋に、自身の指にはめてる刻印付きの指輪をあてがいました。
途端に指輪に刻まれてる小さな刻印が魔法使いの首元にも浮かび上がります。
確かに私はこの世界のストーリーにこれまで逆らうことができませんでした。
しかしながら、これまで生きてきた人生で色々とこの作られた異世界で生き残る方法を考えてきたのです。
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