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1、序章
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「おまえの言動にはほとほとあきれた。本日を持ってリリー・バロン伯爵令嬢との婚約を破棄する」
王子がそう言うと、それまで賑やかだったパーティー会場がしんと静まり返りました。頭上のシャンデリアだけが変わらず私たちをキラキラと照らします。
予想通りの展開に思わず笑いそうになった私は、
赤いビロードの絨毯の上で俯き、自分が着ている紺色のドレスの裾を見つめながら唇を噛み締めました。
「一体どういうことなんだ」
「婚約破棄だって」
「でも、もともとは王子から申し込んだんだろ?」
人々の囁き声が、さざ波のように広がっていきます。私はここへきて、顔を上げると王子に向き直りました。
「俺にはわかってるんだよ。おまえがこれまでどれだけローズをいじめてきたか、がな」
王子はそういうと、彼の後ろに隠れるようにしてこの流れを見ていたストロベリーブロンドの女性の方をちらりと見ました。
ローズと呼ばれた美しい女性は綺麗な青い瞳に涙をたくさん溜めて、
「そ、そんなにリリー様を責めないでください。私も至らない点がありましたから」と言いました。
私は自分に集まる鋭い視線に耐え切れない、といった風を装って俯きながら、この会場からいかにして逃げるかを考えていました。
そんな時、人ごみの中から颯爽とこちらに向かってくる足音がありました。
そして足音の主は私のところまで来ると、ひょいと私を抱き上げて
「そういうことでしたら、わたしくがこちらの麗しきレディを頂戴してもよろしいですよね?」
と言いました。
そして、私をお姫様だっこをした彼は唖然としている王子とローズの二人を残して来た時と同じく会場内を颯爽と歩いて出ていったのでした。
◇◇◇
私はなぜかある日、目が覚めたらこの世界にいました。
私が元にいた世界では、私は残業続きで恋人ともお互い忙しくてなかなか会えませんでした。そんな私がハマったのが乙女ゲームでした。
そのゲームには、王子様ルート、騎士ルート、魔法使いルート、ハーレムエンドがありました。
ちなみに私の好きなルートは王子様ルートでした。
けれども、私の推しは王子様ではありませんでした。彼に仕える側近がたまらなく私の恋人に似てて好みだったのです。
そんな私だったので、なぜかはわかりませんが、ゲームの世界に転生した時は、
びっくりしたものの、推しの側近に会えると、ものすごく喜んだことを覚えてます。
しかしながら、喜んだのも束の間、転生後の私のポジションはゲームプレイヤーである隣国の男爵令嬢をいじめる、王子様の国の伯爵令嬢でした。
ゲームプレイヤーは、この伯爵令嬢のいじめから救ってくれた王子様と結ばれて幸せになるのですが、
いじめてた側の伯爵令嬢はその後、王子様に婚約破棄をされて、幽閉され、挙げ句の果てには魔法使いによってこの世から消されてしまうのです。
私はせめて推しとの恋は諦めて、自分の生き残りをかけて、あわよくば元の世界に戻れることを祈って、
物語がゲームのストーリー通りに進まないように奮闘はしたのですが、
なぜか私が物語を妨害しようとしても事は上手く行きませんでした。
その結果はみなさんもご存知のとおり、上記の婚約破棄が物語っているでしょう?
ただし、なぜかここにきてゲームのストーリーとは違って幽閉される前に私は何者かによってパーティ会場から連れ出されてしまいます。
果たして、私のこれからの運命はいかに…
◇◇◇
王子がそう言うと、それまで賑やかだったパーティー会場がしんと静まり返りました。頭上のシャンデリアだけが変わらず私たちをキラキラと照らします。
予想通りの展開に思わず笑いそうになった私は、
赤いビロードの絨毯の上で俯き、自分が着ている紺色のドレスの裾を見つめながら唇を噛み締めました。
「一体どういうことなんだ」
「婚約破棄だって」
「でも、もともとは王子から申し込んだんだろ?」
人々の囁き声が、さざ波のように広がっていきます。私はここへきて、顔を上げると王子に向き直りました。
「俺にはわかってるんだよ。おまえがこれまでどれだけローズをいじめてきたか、がな」
王子はそういうと、彼の後ろに隠れるようにしてこの流れを見ていたストロベリーブロンドの女性の方をちらりと見ました。
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そんな時、人ごみの中から颯爽とこちらに向かってくる足音がありました。
そして足音の主は私のところまで来ると、ひょいと私を抱き上げて
「そういうことでしたら、わたしくがこちらの麗しきレディを頂戴してもよろしいですよね?」
と言いました。
そして、私をお姫様だっこをした彼は唖然としている王子とローズの二人を残して来た時と同じく会場内を颯爽と歩いて出ていったのでした。
◇◇◇
私はなぜかある日、目が覚めたらこの世界にいました。
私が元にいた世界では、私は残業続きで恋人ともお互い忙しくてなかなか会えませんでした。そんな私がハマったのが乙女ゲームでした。
そのゲームには、王子様ルート、騎士ルート、魔法使いルート、ハーレムエンドがありました。
ちなみに私の好きなルートは王子様ルートでした。
けれども、私の推しは王子様ではありませんでした。彼に仕える側近がたまらなく私の恋人に似てて好みだったのです。
そんな私だったので、なぜかはわかりませんが、ゲームの世界に転生した時は、
びっくりしたものの、推しの側近に会えると、ものすごく喜んだことを覚えてます。
しかしながら、喜んだのも束の間、転生後の私のポジションはゲームプレイヤーである隣国の男爵令嬢をいじめる、王子様の国の伯爵令嬢でした。
ゲームプレイヤーは、この伯爵令嬢のいじめから救ってくれた王子様と結ばれて幸せになるのですが、
いじめてた側の伯爵令嬢はその後、王子様に婚約破棄をされて、幽閉され、挙げ句の果てには魔法使いによってこの世から消されてしまうのです。
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なぜか私が物語を妨害しようとしても事は上手く行きませんでした。
その結果はみなさんもご存知のとおり、上記の婚約破棄が物語っているでしょう?
ただし、なぜかここにきてゲームのストーリーとは違って幽閉される前に私は何者かによってパーティ会場から連れ出されてしまいます。
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