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18 2人の友人
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クラスごとのオリエンテーリングの間・・私の隣に座ったヘンリーとキャロルは仲良さげに話をしていた。ヘンリーはキャロルを私に近付けたいくないのか、左隣に座る私にわざと背を向け、キャロルの方を向いて楽し気に話をしている。そのあからさまに露骨な態度は私とヘンリーの事を知る高等学校の頃から知り合いの学生達には奇異な目で映っていた。彼らは皆私とヘンリーが許嫁同士である事を知っている為、好奇心旺盛でヒソヒソと囁き合っているのが聞こえてきた。
「ヘンリー・・相変わらず冷たい態度を取ってるな・・。」
「誰かしら・・・あの女子学生は・・?」
「あの3人知り合い同士なのか?」
「テアが可愛そうだわ・・・。」
しかし、そんな周囲の話が耳に入らない程にヘンリーは頬を染めて嬉しそうにキャロルと話をしていた。私は溜息をつきながら思った。こんなあからさまな態度を取らなくたって私はもうキャロルとヘンリーの仲を祝福するつもりでいるのに・・と―。
****
「え・・?一緒に食堂へ行けなくなったの?」
「どうして?」
各クラスのオリエンテーリング終了後、フリーダとレオナが教室の前まで迎えに来てくれた。だけど、私はキャロルとの約束を守らなければいけない。そして・・キャロルのお願いを聞かなければ、私はヘンリーに憎まれてしまう。
今、私たちはCクラスの教室の前の廊下に出て話をしている。廊下の窓からはじっとこちらを教室の椅子に座って見つめているキャロルとヘンリーの姿があった。
「実はキャロルが私を探しに行ったときに転んで足首をくじいてしまったの。それでヘンリーに責められたのよ。キャロルが怪我をしたのは私がいなくなったからだって・・。」
私の話に途端に2人の顔色が変わった。
「まあ・・・何ですって・・・!」
「テアの幼馴染もそう言ってるのっ?!」
フリーダとレオナが怒りを露にする。
「待って、2人とも落ち着いて?キャロルはそんな事は一言も言ってないわ。私がヘンリーに腕を強くつかまれて痣が出来てしまったのを逆に心配してくれたくらいなのよ。」
言いながら私はそっと右袖を上にあげた。そこには医務室の先生に治療してもらった包帯が巻かれている。
「ちょ、ちょとどうしたのっ?!この腕はっ!」
レオナが私の包帯を巻かれた腕に触れると声を荒げた。
「まさか・・・ヘンリーにやられたの?」
フリーダは怒りを抑えた声で尋ねてくる。
「え、ええ・・そうなんだけど・・・。」
小さくうなずくとレオナがキッとヘンリーの方を睨みつけながら言った。
「あいつ・・・!女性にこんな乱暴な真似するなんて・・もう我慢出来ないわっ!」
そしてレオナがヘンリーに近づこうとするのを必死で引き留めた。
「待って、レオナッ。きっと・・ヘンリーはそんなに悪気があってやった
わけではないと思うのよ。多分・・一瞬頭に血が上って、それで・・。」
「だからと言って、仮にも許嫁の貴女にこんな酷い真似をしていいはずないわ。」
フリーダも私に言う。けど・・・。
「お願い、2人とも・・落ち着て聞いてくれる。私の事でヘンリーを責めたら・・・もっと彼の機嫌が悪くなってしまうかもしれないから・・ここは黙っていてもらえる?キャロルもヘンリーに言うと言ったけど・・私が止めたのよ。」
「え・?」
「そうだったの・・?」
レオナとフリーダは意外そうな目でヘンリーと話をしているキャロルを見た。
「ええ、そうなの・・。そのキャロルにお願いされたの。足が治るまではそばにいてねと。だから・・ごめんなさい。2人とは一緒に行動出来なくて・・。」
項垂れて話す私にレオナが言った。
「分かったわ・・・。テア。」
「今回は引くけど・・何か理不尽な目に合わされたら、私たちにいつでも相談してね?」
フリーダは私の右手にそっと触れると言った。
「ええ・・・・ありがとう、2人とも。」
「いいのよ、テア。」
「またね。」
そしてフリーダとレオナは手を振って、去って行った。
「私も・・2人の元へ戻らないと・・・。」
憂鬱なため息を一つつくと私は教室へ入り、ヘンリーとキャロルの元へ向かった―。
「ヘンリー・・相変わらず冷たい態度を取ってるな・・。」
「誰かしら・・・あの女子学生は・・?」
「あの3人知り合い同士なのか?」
「テアが可愛そうだわ・・・。」
しかし、そんな周囲の話が耳に入らない程にヘンリーは頬を染めて嬉しそうにキャロルと話をしていた。私は溜息をつきながら思った。こんなあからさまな態度を取らなくたって私はもうキャロルとヘンリーの仲を祝福するつもりでいるのに・・と―。
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「え・・?一緒に食堂へ行けなくなったの?」
「どうして?」
各クラスのオリエンテーリング終了後、フリーダとレオナが教室の前まで迎えに来てくれた。だけど、私はキャロルとの約束を守らなければいけない。そして・・キャロルのお願いを聞かなければ、私はヘンリーに憎まれてしまう。
今、私たちはCクラスの教室の前の廊下に出て話をしている。廊下の窓からはじっとこちらを教室の椅子に座って見つめているキャロルとヘンリーの姿があった。
「実はキャロルが私を探しに行ったときに転んで足首をくじいてしまったの。それでヘンリーに責められたのよ。キャロルが怪我をしたのは私がいなくなったからだって・・。」
私の話に途端に2人の顔色が変わった。
「まあ・・・何ですって・・・!」
「テアの幼馴染もそう言ってるのっ?!」
フリーダとレオナが怒りを露にする。
「待って、2人とも落ち着いて?キャロルはそんな事は一言も言ってないわ。私がヘンリーに腕を強くつかまれて痣が出来てしまったのを逆に心配してくれたくらいなのよ。」
言いながら私はそっと右袖を上にあげた。そこには医務室の先生に治療してもらった包帯が巻かれている。
「ちょ、ちょとどうしたのっ?!この腕はっ!」
レオナが私の包帯を巻かれた腕に触れると声を荒げた。
「まさか・・・ヘンリーにやられたの?」
フリーダは怒りを抑えた声で尋ねてくる。
「え、ええ・・そうなんだけど・・・。」
小さくうなずくとレオナがキッとヘンリーの方を睨みつけながら言った。
「あいつ・・・!女性にこんな乱暴な真似するなんて・・もう我慢出来ないわっ!」
そしてレオナがヘンリーに近づこうとするのを必死で引き留めた。
「待って、レオナッ。きっと・・ヘンリーはそんなに悪気があってやった
わけではないと思うのよ。多分・・一瞬頭に血が上って、それで・・。」
「だからと言って、仮にも許嫁の貴女にこんな酷い真似をしていいはずないわ。」
フリーダも私に言う。けど・・・。
「お願い、2人とも・・落ち着て聞いてくれる。私の事でヘンリーを責めたら・・・もっと彼の機嫌が悪くなってしまうかもしれないから・・ここは黙っていてもらえる?キャロルもヘンリーに言うと言ったけど・・私が止めたのよ。」
「え・?」
「そうだったの・・?」
レオナとフリーダは意外そうな目でヘンリーと話をしているキャロルを見た。
「ええ、そうなの・・。そのキャロルにお願いされたの。足が治るまではそばにいてねと。だから・・ごめんなさい。2人とは一緒に行動出来なくて・・。」
項垂れて話す私にレオナが言った。
「分かったわ・・・。テア。」
「今回は引くけど・・何か理不尽な目に合わされたら、私たちにいつでも相談してね?」
フリーダは私の右手にそっと触れると言った。
「ええ・・・・ありがとう、2人とも。」
「いいのよ、テア。」
「またね。」
そしてフリーダとレオナは手を振って、去って行った。
「私も・・2人の元へ戻らないと・・・。」
憂鬱なため息を一つつくと私は教室へ入り、ヘンリーとキャロルの元へ向かった―。
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