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第9章 12 フランシスの告白
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「どうぞ、まだ誰にも食べさせた事が無い新作のスイーツなんだ。まぁ…学校の課題なんだけど…」
フランシスが照れながらヒルダの前に置いたスイーツはコーヒーカップに入った生クリームたっぷりのケーキだった。
「まぁ、珍しいわね。カップに入ったケーキなんて」
「ああ。生地がすごく柔らかいからスプーンで食べれるようにしてあるんだ」
「フフ…おいしそう。それじゃ早速頂くわ」
ヒルダはスプーンですくって早速一口、口に入れた。途端に甘いスポンジの味が口の中に広がる」
「…美味しい。それにやわらかくて口の中で溶けそうだわ。こんなケーキ初めて。私、このケーキ大好きよ」
ヒルダは満足そうに笑みを浮かべた。
「良かった…ヒルダにそう言って貰えて…」
フランシスは不覚にもヒルダの『大好き』という言葉に反応して顔を赤らめた。自分に対して言った言葉では無い事は分っていたけれども、それでも意識してしまった。
「よ、よし。俺も食べようかな」
「ええ。食べて?」
フランシスも早速スプーンですくって口にいれた。
「…うん。自画自賛になってしまうけど…美味いな」
「自画自賛て事は無いわよ。だって本当に美味しいもの。きっと売り物にすれば沢山の人が気に入ってくれると思うわ」
「ヒルダ…ありがとう」
フランシスは照れくさい気持ちを押さえながら向かい側に座って美味しそうにケーキを食べているヒルダをチラリと見た。
太陽の光が窓から差し込み、ヒルダの金色の髪をキラキラと光らせている。その姿はまるで女神の様にさえ見えた。
「御馳走様でした。フフ…美味しかったわ。ありがとう」
笑顔で笑みを浮かべるヒルダについに、フランシスは自分の気持ちを押さえていることが出来なくなった。
「ヒ、ヒルダ」
「何?」
「い、今…ヒルダには恋人とか…好きな男はいるのか?」
「恋人…」
一瞬、ヒルダの脳裏にエドガーの姿が浮かび…すぐに消えてしまった。
「恋人…はいない…わ…」
「ほ、本当か?」
「ええ、本当よ」
(そうか…ヒルダには恋人がいないのか…良かった…)
フランシスは気付いていなかった。恋人がいないと言う事実を知っただけで有頂天になってしまい、ヒルダが悲し気な表情を浮かべていたと言う事に。
「そ、それじゃ…好きな男は?」
「好きな男性…?」
そこでヒルダは口を閉ざしてしまった。何故かノワールの事が頭に浮かんでしまったからだ。
「うん。も、もしいないなら…」
フランシスは一度そこで言葉を切り、意を決したかのように言った。
「ヒルダ。俺は…高校生時代からヒルダの事が好きだった。もしよければ…俺と付き合ってくれっ!」
フランシスは頭を下げて来た―。
****
午後2時―
ノワールは落ち着かない気持ちでリビングで執筆作業をしていた。けれども少しも作業が進まない。
「くそっ!」
書き損じてしまった何枚目かの原稿用紙をくしゃくしゃに丸めてダストボックスに投げ込むと溜息をついて席を立ち、何気なく窓の外を眺めて驚いた。
「ヒルダ?もう帰って来たのか?」
そこには馬車から手すりにつかまりながら、おぼつかない足取りで馬車から降りるヒルダの姿があった。
「あの御者…ヒルダは足が悪いのだから手を貸してやればいいのに…」
ノワールは苛立ち紛れに窓から離れ、玄関へ向かった。
玄関の扉を開けて外を見ると、丁度ヒルダが杖をついてこちらへ向かって歩いて来る姿だった。
「あ…ノワール様」
ヒルダはノワールの姿に気付き、声を掛けた。
「お帰り、ヒルダ。随分早かったな?もっとゆっくりして来るかと思っていたのに」
ノワールの問いかけにヒルダはためらいがちに返事をした。
「え?ええ…ちょっと訳があって…」
「訳?」
ノワールは首を傾げた―。
フランシスが照れながらヒルダの前に置いたスイーツはコーヒーカップに入った生クリームたっぷりのケーキだった。
「まぁ、珍しいわね。カップに入ったケーキなんて」
「ああ。生地がすごく柔らかいからスプーンで食べれるようにしてあるんだ」
「フフ…おいしそう。それじゃ早速頂くわ」
ヒルダはスプーンですくって早速一口、口に入れた。途端に甘いスポンジの味が口の中に広がる」
「…美味しい。それにやわらかくて口の中で溶けそうだわ。こんなケーキ初めて。私、このケーキ大好きよ」
ヒルダは満足そうに笑みを浮かべた。
「良かった…ヒルダにそう言って貰えて…」
フランシスは不覚にもヒルダの『大好き』という言葉に反応して顔を赤らめた。自分に対して言った言葉では無い事は分っていたけれども、それでも意識してしまった。
「よ、よし。俺も食べようかな」
「ええ。食べて?」
フランシスも早速スプーンですくって口にいれた。
「…うん。自画自賛になってしまうけど…美味いな」
「自画自賛て事は無いわよ。だって本当に美味しいもの。きっと売り物にすれば沢山の人が気に入ってくれると思うわ」
「ヒルダ…ありがとう」
フランシスは照れくさい気持ちを押さえながら向かい側に座って美味しそうにケーキを食べているヒルダをチラリと見た。
太陽の光が窓から差し込み、ヒルダの金色の髪をキラキラと光らせている。その姿はまるで女神の様にさえ見えた。
「御馳走様でした。フフ…美味しかったわ。ありがとう」
笑顔で笑みを浮かべるヒルダについに、フランシスは自分の気持ちを押さえていることが出来なくなった。
「ヒ、ヒルダ」
「何?」
「い、今…ヒルダには恋人とか…好きな男はいるのか?」
「恋人…」
一瞬、ヒルダの脳裏にエドガーの姿が浮かび…すぐに消えてしまった。
「恋人…はいない…わ…」
「ほ、本当か?」
「ええ、本当よ」
(そうか…ヒルダには恋人がいないのか…良かった…)
フランシスは気付いていなかった。恋人がいないと言う事実を知っただけで有頂天になってしまい、ヒルダが悲し気な表情を浮かべていたと言う事に。
「そ、それじゃ…好きな男は?」
「好きな男性…?」
そこでヒルダは口を閉ざしてしまった。何故かノワールの事が頭に浮かんでしまったからだ。
「うん。も、もしいないなら…」
フランシスは一度そこで言葉を切り、意を決したかのように言った。
「ヒルダ。俺は…高校生時代からヒルダの事が好きだった。もしよければ…俺と付き合ってくれっ!」
フランシスは頭を下げて来た―。
****
午後2時―
ノワールは落ち着かない気持ちでリビングで執筆作業をしていた。けれども少しも作業が進まない。
「くそっ!」
書き損じてしまった何枚目かの原稿用紙をくしゃくしゃに丸めてダストボックスに投げ込むと溜息をついて席を立ち、何気なく窓の外を眺めて驚いた。
「ヒルダ?もう帰って来たのか?」
そこには馬車から手すりにつかまりながら、おぼつかない足取りで馬車から降りるヒルダの姿があった。
「あの御者…ヒルダは足が悪いのだから手を貸してやればいいのに…」
ノワールは苛立ち紛れに窓から離れ、玄関へ向かった。
玄関の扉を開けて外を見ると、丁度ヒルダが杖をついてこちらへ向かって歩いて来る姿だった。
「あ…ノワール様」
ヒルダはノワールの姿に気付き、声を掛けた。
「お帰り、ヒルダ。随分早かったな?もっとゆっくりして来るかと思っていたのに」
ノワールの問いかけにヒルダはためらいがちに返事をした。
「え?ええ…ちょっと訳があって…」
「訳?」
ノワールは首を傾げた―。
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