563 / 566
第9章 12 フランシスの告白
しおりを挟む
「どうぞ、まだ誰にも食べさせた事が無い新作のスイーツなんだ。まぁ…学校の課題なんだけど…」
フランシスが照れながらヒルダの前に置いたスイーツはコーヒーカップに入った生クリームたっぷりのケーキだった。
「まぁ、珍しいわね。カップに入ったケーキなんて」
「ああ。生地がすごく柔らかいからスプーンで食べれるようにしてあるんだ」
「フフ…おいしそう。それじゃ早速頂くわ」
ヒルダはスプーンですくって早速一口、口に入れた。途端に甘いスポンジの味が口の中に広がる」
「…美味しい。それにやわらかくて口の中で溶けそうだわ。こんなケーキ初めて。私、このケーキ大好きよ」
ヒルダは満足そうに笑みを浮かべた。
「良かった…ヒルダにそう言って貰えて…」
フランシスは不覚にもヒルダの『大好き』という言葉に反応して顔を赤らめた。自分に対して言った言葉では無い事は分っていたけれども、それでも意識してしまった。
「よ、よし。俺も食べようかな」
「ええ。食べて?」
フランシスも早速スプーンですくって口にいれた。
「…うん。自画自賛になってしまうけど…美味いな」
「自画自賛て事は無いわよ。だって本当に美味しいもの。きっと売り物にすれば沢山の人が気に入ってくれると思うわ」
「ヒルダ…ありがとう」
フランシスは照れくさい気持ちを押さえながら向かい側に座って美味しそうにケーキを食べているヒルダをチラリと見た。
太陽の光が窓から差し込み、ヒルダの金色の髪をキラキラと光らせている。その姿はまるで女神の様にさえ見えた。
「御馳走様でした。フフ…美味しかったわ。ありがとう」
笑顔で笑みを浮かべるヒルダについに、フランシスは自分の気持ちを押さえていることが出来なくなった。
「ヒ、ヒルダ」
「何?」
「い、今…ヒルダには恋人とか…好きな男はいるのか?」
「恋人…」
一瞬、ヒルダの脳裏にエドガーの姿が浮かび…すぐに消えてしまった。
「恋人…はいない…わ…」
「ほ、本当か?」
「ええ、本当よ」
(そうか…ヒルダには恋人がいないのか…良かった…)
フランシスは気付いていなかった。恋人がいないと言う事実を知っただけで有頂天になってしまい、ヒルダが悲し気な表情を浮かべていたと言う事に。
「そ、それじゃ…好きな男は?」
「好きな男性…?」
そこでヒルダは口を閉ざしてしまった。何故かノワールの事が頭に浮かんでしまったからだ。
「うん。も、もしいないなら…」
フランシスは一度そこで言葉を切り、意を決したかのように言った。
「ヒルダ。俺は…高校生時代からヒルダの事が好きだった。もしよければ…俺と付き合ってくれっ!」
フランシスは頭を下げて来た―。
****
午後2時―
ノワールは落ち着かない気持ちでリビングで執筆作業をしていた。けれども少しも作業が進まない。
「くそっ!」
書き損じてしまった何枚目かの原稿用紙をくしゃくしゃに丸めてダストボックスに投げ込むと溜息をついて席を立ち、何気なく窓の外を眺めて驚いた。
「ヒルダ?もう帰って来たのか?」
そこには馬車から手すりにつかまりながら、おぼつかない足取りで馬車から降りるヒルダの姿があった。
「あの御者…ヒルダは足が悪いのだから手を貸してやればいいのに…」
ノワールは苛立ち紛れに窓から離れ、玄関へ向かった。
玄関の扉を開けて外を見ると、丁度ヒルダが杖をついてこちらへ向かって歩いて来る姿だった。
「あ…ノワール様」
ヒルダはノワールの姿に気付き、声を掛けた。
「お帰り、ヒルダ。随分早かったな?もっとゆっくりして来るかと思っていたのに」
ノワールの問いかけにヒルダはためらいがちに返事をした。
「え?ええ…ちょっと訳があって…」
「訳?」
ノワールは首を傾げた―。
フランシスが照れながらヒルダの前に置いたスイーツはコーヒーカップに入った生クリームたっぷりのケーキだった。
「まぁ、珍しいわね。カップに入ったケーキなんて」
「ああ。生地がすごく柔らかいからスプーンで食べれるようにしてあるんだ」
「フフ…おいしそう。それじゃ早速頂くわ」
ヒルダはスプーンですくって早速一口、口に入れた。途端に甘いスポンジの味が口の中に広がる」
「…美味しい。それにやわらかくて口の中で溶けそうだわ。こんなケーキ初めて。私、このケーキ大好きよ」
ヒルダは満足そうに笑みを浮かべた。
「良かった…ヒルダにそう言って貰えて…」
フランシスは不覚にもヒルダの『大好き』という言葉に反応して顔を赤らめた。自分に対して言った言葉では無い事は分っていたけれども、それでも意識してしまった。
「よ、よし。俺も食べようかな」
「ええ。食べて?」
フランシスも早速スプーンですくって口にいれた。
「…うん。自画自賛になってしまうけど…美味いな」
「自画自賛て事は無いわよ。だって本当に美味しいもの。きっと売り物にすれば沢山の人が気に入ってくれると思うわ」
「ヒルダ…ありがとう」
フランシスは照れくさい気持ちを押さえながら向かい側に座って美味しそうにケーキを食べているヒルダをチラリと見た。
太陽の光が窓から差し込み、ヒルダの金色の髪をキラキラと光らせている。その姿はまるで女神の様にさえ見えた。
「御馳走様でした。フフ…美味しかったわ。ありがとう」
笑顔で笑みを浮かべるヒルダについに、フランシスは自分の気持ちを押さえていることが出来なくなった。
「ヒ、ヒルダ」
「何?」
「い、今…ヒルダには恋人とか…好きな男はいるのか?」
「恋人…」
一瞬、ヒルダの脳裏にエドガーの姿が浮かび…すぐに消えてしまった。
「恋人…はいない…わ…」
「ほ、本当か?」
「ええ、本当よ」
(そうか…ヒルダには恋人がいないのか…良かった…)
フランシスは気付いていなかった。恋人がいないと言う事実を知っただけで有頂天になってしまい、ヒルダが悲し気な表情を浮かべていたと言う事に。
「そ、それじゃ…好きな男は?」
「好きな男性…?」
そこでヒルダは口を閉ざしてしまった。何故かノワールの事が頭に浮かんでしまったからだ。
「うん。も、もしいないなら…」
フランシスは一度そこで言葉を切り、意を決したかのように言った。
「ヒルダ。俺は…高校生時代からヒルダの事が好きだった。もしよければ…俺と付き合ってくれっ!」
フランシスは頭を下げて来た―。
****
午後2時―
ノワールは落ち着かない気持ちでリビングで執筆作業をしていた。けれども少しも作業が進まない。
「くそっ!」
書き損じてしまった何枚目かの原稿用紙をくしゃくしゃに丸めてダストボックスに投げ込むと溜息をついて席を立ち、何気なく窓の外を眺めて驚いた。
「ヒルダ?もう帰って来たのか?」
そこには馬車から手すりにつかまりながら、おぼつかない足取りで馬車から降りるヒルダの姿があった。
「あの御者…ヒルダは足が悪いのだから手を貸してやればいいのに…」
ノワールは苛立ち紛れに窓から離れ、玄関へ向かった。
玄関の扉を開けて外を見ると、丁度ヒルダが杖をついてこちらへ向かって歩いて来る姿だった。
「あ…ノワール様」
ヒルダはノワールの姿に気付き、声を掛けた。
「お帰り、ヒルダ。随分早かったな?もっとゆっくりして来るかと思っていたのに」
ノワールの問いかけにヒルダはためらいがちに返事をした。
「え?ええ…ちょっと訳があって…」
「訳?」
ノワールは首を傾げた―。
0
お気に入りに追加
725
あなたにおすすめの小説
【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
今さら救いの手とかいらないのですが……
カレイ
恋愛
侯爵令嬢オデットは学園の嫌われ者である。
それもこれも、子爵令嬢シェリーシアに罪をなすりつけられ、公衆の面前で婚約破棄を突きつけられたせい。
オデットは信じてくれる友人のお陰で、揶揄されながらもそれなりに楽しい生活を送っていたが……
「そろそろ許してあげても良いですっ」
「あ、結構です」
伸ばされた手をオデットは払い除ける。
許さなくて良いので金輪際関わってこないで下さいと付け加えて。
※全19話の短編です。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
今度こそ穏やかに暮らしたいのに!どうして執着してくるのですか?
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のルージュは、婚約者で王太子のクリストファーから、ヴァイオレットを虐めたという根も葉もない罪で、一方的に婚約解消を迫られた。
クリストファーをルージュなりに愛してはいた。それでも別の令嬢にうつつを抜かし、自分の言う事を全く信じてくれないクリストファーに嫌気がさしたルージュは、素直に婚約解消を受け入れたのだった。
愛していた婚約者に裏切られ、心に深い傷を負ったルージュ。そんな彼女に、さらなる追い打ちをかける事件が。
義理の兄でもあるグレイソンが、あろう事かヴァイオレット誘拐の罪で捕まったのだ。ヴァイオレットを溺愛しているクリストファーは激怒し、グレイソンを公開処刑、その家族でもあるルージュと両親を国外追放にしてしまう。
グレイソンの処刑を見守った後、ルージュは荷台に乗せられ、両親と共に他国へと向かった。どうして自分がこんな目に…絶望に打ちひしがれるルージュに魔の手が。
ルージュに執拗なまでに執着するヴァイオレットは、ルージュと両親を森で抹殺する様に指示を出していたのだ。両親と共に荷台から引きずりおろされ、無残にも殺されたルージュだったが…
気が付くと10歳に戻っていて…
※他サイトでも同時投稿しています。
長めのお話しになっておりますが、どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる