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第9章 13 ヒルダからの話
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「まぁいい。話は中で聞く。寒かっただろう?」
ノワールはヒルダを招き入れると家の扉を閉めた。
「足の具合はどうだ?痛まないか?」
「はい、大丈夫です」
「そうか、なら良かった。リビングは温かいから上着を脱いだら来るといい」
「ありがとうございます」
「気にするな」
ノワールはそれだけ言うとリビングへ入ってしまった。その様子をヒルダはじっと見つめていた。
(一体ノワール様…どうしてしまったのかしら?)
ヒルダはやけにノワールが自分の事を気遣ってくれるのが不思議でならなかった―。
リビングに行くと、丁度ノワールが飲み物を淹れているところだった。
「ああ、ヒルダ。そこに座るといい。今紅茶を淹れていたところだったんだ」
見るとノワールのカップにはコーヒーが注がれていた。ヒルダは腰掛けると言った。
「あの…わざわざ私の為に紅茶を淹れて頂かなくても大丈夫ですよ?」
「だが、ヒルダはあまりコーヒーは飲まないだろう?」
「ええ…確かに以前はあまり飲みませんでしたが、最近はコーヒーも好きになってきました」
「そうなのか?」
「はい、きっとノワール様の影響を受けているのかもしれませんね」
「俺の…?」
「そうです。ノワール様はコーヒーを良く飲まれていますよね?」
「ああ、確かに…」
「コーヒーの香りが…近頃好きになってきたんです。それでだと思います」
「成程…」
答えながらノワールはヒルダの前に紅茶のカップを置いた。
「ありがとうございます」
ヒルダはカップを手に取るとフウフウと冷ましながら紅茶を一口飲んだ。
「…美味しいです。ありがとうございます」
「そうか…それは良かった。それで?一体何があったのか教えてくれるか?」
「は、はい…」
妙に話を聞きたがるノワールとは反対に、ヒルダはあまり気乗りがしなかった。何故か分からないがフランシスに告白されたことをノワールには知られたくなかったのだ。
(でも…ノワール様は話を聞きたがっている…仕方ないわ…)
ヒルダは心の中でため息をつくと、言った。
「彼が作った料理も、スイーツもとても美味しくて…食事をしている間は楽しめたのですが…」
「そうか…。楽しかったのか…。それは良かったな」
しかしノワールの表情は暗く、硬い。
「ただ…その後に気まずい雰囲気になってしまったのです」
ヒルダはうつむいた。
「気まずい雰囲気…?一体何があったんだ?」
「そ、それは…」
「そうか…言いたくないなら、もう無理には聞かない」
「い、いえ。別にそういうわけではありません。実は…フランシスに告白されたんです。高校生の時から…その、ずっと私の事が好きだったと…それで交際を申し込まれたんです…え?」
ヒルダはノワールの顔を見て驚いた。
何故ならノワールは真っ青な顔をしてヒルダを見つめていたからだった―。
ノワールはヒルダを招き入れると家の扉を閉めた。
「足の具合はどうだ?痛まないか?」
「はい、大丈夫です」
「そうか、なら良かった。リビングは温かいから上着を脱いだら来るといい」
「ありがとうございます」
「気にするな」
ノワールはそれだけ言うとリビングへ入ってしまった。その様子をヒルダはじっと見つめていた。
(一体ノワール様…どうしてしまったのかしら?)
ヒルダはやけにノワールが自分の事を気遣ってくれるのが不思議でならなかった―。
リビングに行くと、丁度ノワールが飲み物を淹れているところだった。
「ああ、ヒルダ。そこに座るといい。今紅茶を淹れていたところだったんだ」
見るとノワールのカップにはコーヒーが注がれていた。ヒルダは腰掛けると言った。
「あの…わざわざ私の為に紅茶を淹れて頂かなくても大丈夫ですよ?」
「だが、ヒルダはあまりコーヒーは飲まないだろう?」
「ええ…確かに以前はあまり飲みませんでしたが、最近はコーヒーも好きになってきました」
「そうなのか?」
「はい、きっとノワール様の影響を受けているのかもしれませんね」
「俺の…?」
「そうです。ノワール様はコーヒーを良く飲まれていますよね?」
「ああ、確かに…」
「コーヒーの香りが…近頃好きになってきたんです。それでだと思います」
「成程…」
答えながらノワールはヒルダの前に紅茶のカップを置いた。
「ありがとうございます」
ヒルダはカップを手に取るとフウフウと冷ましながら紅茶を一口飲んだ。
「…美味しいです。ありがとうございます」
「そうか…それは良かった。それで?一体何があったのか教えてくれるか?」
「は、はい…」
妙に話を聞きたがるノワールとは反対に、ヒルダはあまり気乗りがしなかった。何故か分からないがフランシスに告白されたことをノワールには知られたくなかったのだ。
(でも…ノワール様は話を聞きたがっている…仕方ないわ…)
ヒルダは心の中でため息をつくと、言った。
「彼が作った料理も、スイーツもとても美味しくて…食事をしている間は楽しめたのですが…」
「そうか…。楽しかったのか…。それは良かったな」
しかしノワールの表情は暗く、硬い。
「ただ…その後に気まずい雰囲気になってしまったのです」
ヒルダはうつむいた。
「気まずい雰囲気…?一体何があったんだ?」
「そ、それは…」
「そうか…言いたくないなら、もう無理には聞かない」
「い、いえ。別にそういうわけではありません。実は…フランシスに告白されたんです。高校生の時から…その、ずっと私の事が好きだったと…それで交際を申し込まれたんです…え?」
ヒルダはノワールの顔を見て驚いた。
何故ならノワールは真っ青な顔をしてヒルダを見つめていたからだった―。
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