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第8章 17 退院後初のアルバイト
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翌朝―
ヒルダは久々にアレンの診療所にアルバイトの為に訪れた。
「おはようございます…」
扉を開けて診療所の中へ入ると既に出勤していた受付のリンダと看護師のレイチェルが慌ててヒルダの元へ駆け寄って来た。
「ヒルダちゃん!」
「もう大丈夫なのっ?!」
リンダとレイチェルはヒルダを同時に抱きしめてきた。
「は、はい…すみません。ご心配をおかけしました」
ヒルダは2人の背中に腕を回し、謝罪した。
「本当に無事でよかったわ」
リンダはヒルダの金の髪を撫でながら言う。
「ヒルダちゃん…駄目よ?命を大切にしなくちゃ…」
看護師のレイチェルは目に涙をためながらヒルダを見た。
「はい…もう二度とあんな真似はしません…」
(だって…ルドルフを心配かけさせたくないから…)
ヒルダが意識を亡くしている時に現れたルドルフ。あれは夢だったのかもしれないが、ヒルダの中では本物のルドルフとして認識していた。
そこへアレンが診察室から現れた。
「ヒ、ヒルダ…」
「アレン先生…」
ヒルダとアレンは見つめ合った―。
****
「ヒルダ。本当に心配したんだぞ?カミラから泣きながら診療所に電話がかかってきた時は本当に驚いた。しかもゴミ箱に紙片が大量に捨てられていると言う話を聞いた時は心臓が止まるかと思ったぞ。何故そんなに大量に睡眠薬を服用したんだ?」
アレンはヒルダを向かい側に座らせると尋ねてきた。
「すみません…眠れなくて…沢山飲んでしまいました…」
ヒルダは項垂れた。
「目が覚めたから良かったものの…下手をすれば眠りについたまま死んでしまったかもしれないんだぞ?」
「…はい…もう二度と…あんな真似はしません」
「ああ、頼むぞ?」
アレンは笑みを浮かべ…そしてゴホンと咳払いすると言った。
「ところでヒルダ…カミラの話なのだが…」
「はい、聞いています。プロポーズの返事、カミラがしたそうですね」
「あ、ああ。受けてはくれたのだが…随分ヒルダのことを気にかけていた。それで…俺からの提案なのだが…俺たちと一緒に…」
するとヒルダが口を開いた。
「アレン先生」
「何だ?」
「先生の提案はとても嬉しかったです。まさか赤の他人の私までカミラと結婚した時には一緒に暮らす事を考えて下さっていたなんて。でも、私なら大丈夫です。ある方が私と一緒に暮らす為の家を借りてくれたんです。なので私の事はどうか気にせずにカミラと結婚して下さい」
「ヒルダ…」
アレンは驚きの眼差しでヒルダを見た―。
****
午後5時―
ヒルダのアルバイトの退勤時間がやってきた。
「アレン先生、それではお先に失礼します」
「ヒルダ。それじゃ…カミラに伝えてくれるか?明日、19時にアパートメントに行くことを」
「はい、分かりました。伝えて起きますね?」
ヒルダは返事をすると診察室を出た。
「ヒルダちゃん。いよいよアレン先生とカミラさんの結婚が近いのかしら?」
診察室を出ると受付いるリンダが声を掛けてきた。
「はい、私はそう信じています。では失礼致します」
そしてヒルダは診療所を後にした―。
ヒルダは久々にアレンの診療所にアルバイトの為に訪れた。
「おはようございます…」
扉を開けて診療所の中へ入ると既に出勤していた受付のリンダと看護師のレイチェルが慌ててヒルダの元へ駆け寄って来た。
「ヒルダちゃん!」
「もう大丈夫なのっ?!」
リンダとレイチェルはヒルダを同時に抱きしめてきた。
「は、はい…すみません。ご心配をおかけしました」
ヒルダは2人の背中に腕を回し、謝罪した。
「本当に無事でよかったわ」
リンダはヒルダの金の髪を撫でながら言う。
「ヒルダちゃん…駄目よ?命を大切にしなくちゃ…」
看護師のレイチェルは目に涙をためながらヒルダを見た。
「はい…もう二度とあんな真似はしません…」
(だって…ルドルフを心配かけさせたくないから…)
ヒルダが意識を亡くしている時に現れたルドルフ。あれは夢だったのかもしれないが、ヒルダの中では本物のルドルフとして認識していた。
そこへアレンが診察室から現れた。
「ヒ、ヒルダ…」
「アレン先生…」
ヒルダとアレンは見つめ合った―。
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「ヒルダ。本当に心配したんだぞ?カミラから泣きながら診療所に電話がかかってきた時は本当に驚いた。しかもゴミ箱に紙片が大量に捨てられていると言う話を聞いた時は心臓が止まるかと思ったぞ。何故そんなに大量に睡眠薬を服用したんだ?」
アレンはヒルダを向かい側に座らせると尋ねてきた。
「すみません…眠れなくて…沢山飲んでしまいました…」
ヒルダは項垂れた。
「目が覚めたから良かったものの…下手をすれば眠りについたまま死んでしまったかもしれないんだぞ?」
「…はい…もう二度と…あんな真似はしません」
「ああ、頼むぞ?」
アレンは笑みを浮かべ…そしてゴホンと咳払いすると言った。
「ところでヒルダ…カミラの話なのだが…」
「はい、聞いています。プロポーズの返事、カミラがしたそうですね」
「あ、ああ。受けてはくれたのだが…随分ヒルダのことを気にかけていた。それで…俺からの提案なのだが…俺たちと一緒に…」
するとヒルダが口を開いた。
「アレン先生」
「何だ?」
「先生の提案はとても嬉しかったです。まさか赤の他人の私までカミラと結婚した時には一緒に暮らす事を考えて下さっていたなんて。でも、私なら大丈夫です。ある方が私と一緒に暮らす為の家を借りてくれたんです。なので私の事はどうか気にせずにカミラと結婚して下さい」
「ヒルダ…」
アレンは驚きの眼差しでヒルダを見た―。
****
午後5時―
ヒルダのアルバイトの退勤時間がやってきた。
「アレン先生、それではお先に失礼します」
「ヒルダ。それじゃ…カミラに伝えてくれるか?明日、19時にアパートメントに行くことを」
「はい、分かりました。伝えて起きますね?」
ヒルダは返事をすると診察室を出た。
「ヒルダちゃん。いよいよアレン先生とカミラさんの結婚が近いのかしら?」
診察室を出ると受付いるリンダが声を掛けてきた。
「はい、私はそう信じています。では失礼致します」
そしてヒルダは診療所を後にした―。
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