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第6章 1 エドガーの悪友
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クリスマスのパーティー会場はフィールズ家の大広間で開催されていた。会場には多くの招待客と、この日ばかりはと精一杯めかしこんだ16歳以上の領民達が食事やお酒を楽しんでいた。
「ようこそお越しくださいました」
エドガーはハリスとは少し離れた場所で来賓客達に挨拶をしている。そこへ背後から突然声を掛けられた。
「よぉ、エドガー」
振り向くとそこにいたのは昨年エドガーをからかった子息だった。
「…何だ、トビアス。お前…来ていたのか?俺はお前を招待客として呼んだつもりはないが?」
「おい、待てよ」
フイと視線をそらせ、立ち去ろうとすると肩を強く掴まれた。
「…何だ?挨拶は済んだんだ。まだ何か用があるのか?」
するとトビアスと呼ばれた青年が意地の悪い笑みを浮かべながら言った。
「ああ、あるさ。エドガー。お前の妻を紹介してくれないか?随分年上の女性を妻に娶ったんだろう?」
「トビアス…お前…」
睨みつけると、大げさにトビアスは言った。
「おぉ~…何もそんなおっかない目で睨むなよ。それともあれか?紹介出来ない事情でもあるのか?」
「…」
エドガーが黙っていると、トビアスが益々面白そうに言う。
「やはり、あの噂は本当だったのか?エドガー・フィールズは、年上の妻に一度も夫としての努めを果たさない事に激怒した妻が実家に戻り、莫大な慰謝料を請求されているって話は…」
「何だって…っ?!」
エドガーの目に殺気が宿る。
(こいつ…一体何処まで知ってるんだ…っ?!)
「おいおい…今にも相手を射殺しそうな目で睨むなよ。今夜は折角のクリスマス…」
トビアスはそこまで言いかけ、ある一点を見つめて言葉を失ってしまった。
「トビアス?」
不思議に思ったエドガーはトビアスの視線を追い…目を見張った。
(ヒルダ…ッ!)
そこにはマーガレットと共にパーティー会場に現れたヒルダの姿があった。金の髪にこの世のものとは思えないほどの美しい美貌のヒルダに会場に訪れていた人々の視線は釘付けだった。
(ヒルダ…やはりパーティー会場に…来てしまったのか…)
エドガーの本心では出来ればヒルダにはパーティー会場に姿を現さないで貰いたかった。領民達がヒルダをよく思っていないこと…そして何より、会場にいる男性達が好奇心いっぱいにヒルダに向ける視線を自分自身が耐え難かったからである。現に今、目の前にいるトビアスもエドガーの存在を完全に忘れて、美しいヒルダに釘付けになっていた。
「だ、誰だ…。あの女性は…。あんなに美しい女性を見るのは初めてだ…」
しかし、ヒルダが足を引きずって歩いてる様子に気付いたトビアスはエドガーを振り返ると言った。
「お、おい。あの女性は…ひょっとして、エドガー。お前の…義理の妹か?!」
「あ、ああ…そうだ」
忌々しい気持ちになりながら、エドガーは返事をした。
「本当かよっ?!ヒルダって…あんなに美人だったのか?!」
すっかりトビアスはヒルダの美しさに興奮している。
「なぁ、ヒルダには恋人とか…将来を約束した相手とかいるのか?」
「…何でおまえにそんな事を話さなくてはならないんだ?」
イライラしながらエドガーはトビアスを見た。
「別にいいじゃないか?俺とお前の仲だろう?しかし…まさか、あれ程の美女なら足が不自由でも構わないか…」
トビアスの言葉にエドガーは目を見開いた―。
「ようこそお越しくださいました」
エドガーはハリスとは少し離れた場所で来賓客達に挨拶をしている。そこへ背後から突然声を掛けられた。
「よぉ、エドガー」
振り向くとそこにいたのは昨年エドガーをからかった子息だった。
「…何だ、トビアス。お前…来ていたのか?俺はお前を招待客として呼んだつもりはないが?」
「おい、待てよ」
フイと視線をそらせ、立ち去ろうとすると肩を強く掴まれた。
「…何だ?挨拶は済んだんだ。まだ何か用があるのか?」
するとトビアスと呼ばれた青年が意地の悪い笑みを浮かべながら言った。
「ああ、あるさ。エドガー。お前の妻を紹介してくれないか?随分年上の女性を妻に娶ったんだろう?」
「トビアス…お前…」
睨みつけると、大げさにトビアスは言った。
「おぉ~…何もそんなおっかない目で睨むなよ。それともあれか?紹介出来ない事情でもあるのか?」
「…」
エドガーが黙っていると、トビアスが益々面白そうに言う。
「やはり、あの噂は本当だったのか?エドガー・フィールズは、年上の妻に一度も夫としての努めを果たさない事に激怒した妻が実家に戻り、莫大な慰謝料を請求されているって話は…」
「何だって…っ?!」
エドガーの目に殺気が宿る。
(こいつ…一体何処まで知ってるんだ…っ?!)
「おいおい…今にも相手を射殺しそうな目で睨むなよ。今夜は折角のクリスマス…」
トビアスはそこまで言いかけ、ある一点を見つめて言葉を失ってしまった。
「トビアス?」
不思議に思ったエドガーはトビアスの視線を追い…目を見張った。
(ヒルダ…ッ!)
そこにはマーガレットと共にパーティー会場に現れたヒルダの姿があった。金の髪にこの世のものとは思えないほどの美しい美貌のヒルダに会場に訪れていた人々の視線は釘付けだった。
(ヒルダ…やはりパーティー会場に…来てしまったのか…)
エドガーの本心では出来ればヒルダにはパーティー会場に姿を現さないで貰いたかった。領民達がヒルダをよく思っていないこと…そして何より、会場にいる男性達が好奇心いっぱいにヒルダに向ける視線を自分自身が耐え難かったからである。現に今、目の前にいるトビアスもエドガーの存在を完全に忘れて、美しいヒルダに釘付けになっていた。
「だ、誰だ…。あの女性は…。あんなに美しい女性を見るのは初めてだ…」
しかし、ヒルダが足を引きずって歩いてる様子に気付いたトビアスはエドガーを振り返ると言った。
「お、おい。あの女性は…ひょっとして、エドガー。お前の…義理の妹か?!」
「あ、ああ…そうだ」
忌々しい気持ちになりながら、エドガーは返事をした。
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すっかりトビアスはヒルダの美しさに興奮している。
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「…何でおまえにそんな事を話さなくてはならないんだ?」
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「別にいいじゃないか?俺とお前の仲だろう?しかし…まさか、あれ程の美女なら足が不自由でも構わないか…」
トビアスの言葉にエドガーは目を見開いた―。
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