嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
405 / 566

第1章 11 ヒルダからの申し出

しおりを挟む
 実はエドガーにはまだハリスにもマーガレットにも話していない大事な事があった。それはアンナからの手紙の内容についてである。アンナからは毎週1通ずつ、必ずエドガーの元へ手紙が届いいていた。手紙の内容は高校生活の事ばかりで、2人の結婚が延期になった話については一度も触れてきたことは無かった。しかし、つい先日エドガーの元に届いたアンナからの手紙は婚約を破棄し、結婚の話も無かったことにして欲しいと書かれていたのだ。それを目にしたエドガーは驚いた。

(俺は…ひょっとして自分でも無意識のうちにアンナに嫌われることをしてしまったのだろうか?)

実の処、エドガーは何故アンナが突然結婚を延期して、外国の高校に留学してしまったのかも、結婚の話を無かったことにして欲しいと訴えて来た理由もさっぱり心当たりが無かったのだ。そしてハリスにもマーガレットにもこの話を伝えられないでいた。

 エドガーとアンナの結婚は重要な意味を持っていた。アンナと結婚する事により、資金援助をして貰い、肥料の開発や苗の開発に当てようとしていたのだから、2人の結婚はどうしても進めなくてはならなかったのだ。
エドガーは少なくとも、アンナに自分が嫌われているとは思ったことは無かった。むしろ自惚れと言われようが、自分は好かれていると思っていた。それだけにこの申し出はエドガーの心を大きく揺さぶるものだった。

 エドガーは酷く悩んでいた。一応手紙には婚約破棄等と言う事は言わないでほしい、どうか考え直してほしいと言う旨をしたためてアンナに送ったのだが、その反面、ほっとした気持ちになったのも事実であった。もしかすると、アンナとの結婚話が無くなれば、ヒルダとの結婚も夢ではないだろうか‥?一瞬甘い夢を見てしまった。しかし、エドガーには分っていた。アンナとの結婚話が完全に立ち消えになったとしても、別の婚約者をあてがわれるだろうと言う事を。

(結局、俺はヒルダと結ばれる事は永遠に無いのだろう…)

 ふと見ると、ヒルダはマーガレットと楽し気に話をしていた。ヒルダの皿のケーキはいつの間にか綺麗いに無くなっている。

(ヒルダ…美味しく食べてくれたんだな…)

そこで、一旦ヒルダとマーガレットの会話が途切れた時にエドガーは声を掛けた。

「ヒルダ」

「はい。お兄様。何でしょう?」

「ケーキ…美味しかったみたいだな?」

するとヒルダは頬を染めながら言った。

「はい。あまりにも美味しかったので一気に食べてしまいました。‥お恥ずかしいです」

「そんな事は無いさ。ヒルダがこの屋敷にいる間にまたケーキを焼いてやろう」

するとヒルダの方から思いもかけない申し出があった。

「あ、あの…お兄様。もし差し支えなければ今のケーキの作り方を私にも教えて頂けないでしょうか?ロータスに帰ったら自分でも作ってみたいので。お兄様の御都合の宜しい時で構いませんから」

それはエドガーに取って、とても嬉しい申し出だった。

「ああ、勿論だ」

エドガーはニコニコしながらヒルダに返事をした。

「…」

そんな様子を黙って見ていたマーガレット。ハリスからはヒルダとエドガーを2人きりにしてはいけないと言われている事を思い出していた。

(でも…明らかに2人きりにさせないようにするのは余りにも露骨すぎやしないかしら…エドガーは紳士だから、間違えてもおかしな関係になるとは思えないし…)

なので、マーガレットはケーキ作りの事に関しては静観しようと心に決めた―。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。 ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。 しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。 もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが… そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。 “側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ” 死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。 向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。 深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは… ※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。 他サイトでも同時投稿しています。 どうぞよろしくお願いしますm(__)m

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

処理中です...