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第1章 11 ヒルダからの申し出
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実はエドガーにはまだハリスにもマーガレットにも話していない大事な事があった。それはアンナからの手紙の内容についてである。アンナからは毎週1通ずつ、必ずエドガーの元へ手紙が届いいていた。手紙の内容は高校生活の事ばかりで、2人の結婚が延期になった話については一度も触れてきたことは無かった。しかし、つい先日エドガーの元に届いたアンナからの手紙は婚約を破棄し、結婚の話も無かったことにして欲しいと書かれていたのだ。それを目にしたエドガーは驚いた。
(俺は…ひょっとして自分でも無意識のうちにアンナに嫌われることをしてしまったのだろうか?)
実の処、エドガーは何故アンナが突然結婚を延期して、外国の高校に留学してしまったのかも、結婚の話を無かったことにして欲しいと訴えて来た理由もさっぱり心当たりが無かったのだ。そしてハリスにもマーガレットにもこの話を伝えられないでいた。
エドガーとアンナの結婚は重要な意味を持っていた。アンナと結婚する事により、資金援助をして貰い、肥料の開発や苗の開発に当てようとしていたのだから、2人の結婚はどうしても進めなくてはならなかったのだ。
エドガーは少なくとも、アンナに自分が嫌われているとは思ったことは無かった。むしろ自惚れと言われようが、自分は好かれていると思っていた。それだけにこの申し出はエドガーの心を大きく揺さぶるものだった。
エドガーは酷く悩んでいた。一応手紙には婚約破棄等と言う事は言わないでほしい、どうか考え直してほしいと言う旨をしたためてアンナに送ったのだが、その反面、ほっとした気持ちになったのも事実であった。もしかすると、アンナとの結婚話が無くなれば、ヒルダとの結婚も夢ではないだろうか‥?一瞬甘い夢を見てしまった。しかし、エドガーには分っていた。アンナとの結婚話が完全に立ち消えになったとしても、別の婚約者をあてがわれるだろうと言う事を。
(結局、俺はヒルダと結ばれる事は永遠に無いのだろう…)
ふと見ると、ヒルダはマーガレットと楽し気に話をしていた。ヒルダの皿のケーキはいつの間にか綺麗いに無くなっている。
(ヒルダ…美味しく食べてくれたんだな…)
そこで、一旦ヒルダとマーガレットの会話が途切れた時にエドガーは声を掛けた。
「ヒルダ」
「はい。お兄様。何でしょう?」
「ケーキ…美味しかったみたいだな?」
するとヒルダは頬を染めながら言った。
「はい。あまりにも美味しかったので一気に食べてしまいました。‥お恥ずかしいです」
「そんな事は無いさ。ヒルダがこの屋敷にいる間にまたケーキを焼いてやろう」
するとヒルダの方から思いもかけない申し出があった。
「あ、あの…お兄様。もし差し支えなければ今のケーキの作り方を私にも教えて頂けないでしょうか?ロータスに帰ったら自分でも作ってみたいので。お兄様の御都合の宜しい時で構いませんから」
それはエドガーに取って、とても嬉しい申し出だった。
「ああ、勿論だ」
エドガーはニコニコしながらヒルダに返事をした。
「…」
そんな様子を黙って見ていたマーガレット。ハリスからはヒルダとエドガーを2人きりにしてはいけないと言われている事を思い出していた。
(でも…明らかに2人きりにさせないようにするのは余りにも露骨すぎやしないかしら…エドガーは紳士だから、間違えてもおかしな関係になるとは思えないし…)
なので、マーガレットはケーキ作りの事に関しては静観しようと心に決めた―。
(俺は…ひょっとして自分でも無意識のうちにアンナに嫌われることをしてしまったのだろうか?)
実の処、エドガーは何故アンナが突然結婚を延期して、外国の高校に留学してしまったのかも、結婚の話を無かったことにして欲しいと訴えて来た理由もさっぱり心当たりが無かったのだ。そしてハリスにもマーガレットにもこの話を伝えられないでいた。
エドガーとアンナの結婚は重要な意味を持っていた。アンナと結婚する事により、資金援助をして貰い、肥料の開発や苗の開発に当てようとしていたのだから、2人の結婚はどうしても進めなくてはならなかったのだ。
エドガーは少なくとも、アンナに自分が嫌われているとは思ったことは無かった。むしろ自惚れと言われようが、自分は好かれていると思っていた。それだけにこの申し出はエドガーの心を大きく揺さぶるものだった。
エドガーは酷く悩んでいた。一応手紙には婚約破棄等と言う事は言わないでほしい、どうか考え直してほしいと言う旨をしたためてアンナに送ったのだが、その反面、ほっとした気持ちになったのも事実であった。もしかすると、アンナとの結婚話が無くなれば、ヒルダとの結婚も夢ではないだろうか‥?一瞬甘い夢を見てしまった。しかし、エドガーには分っていた。アンナとの結婚話が完全に立ち消えになったとしても、別の婚約者をあてがわれるだろうと言う事を。
(結局、俺はヒルダと結ばれる事は永遠に無いのだろう…)
ふと見ると、ヒルダはマーガレットと楽し気に話をしていた。ヒルダの皿のケーキはいつの間にか綺麗いに無くなっている。
(ヒルダ…美味しく食べてくれたんだな…)
そこで、一旦ヒルダとマーガレットの会話が途切れた時にエドガーは声を掛けた。
「ヒルダ」
「はい。お兄様。何でしょう?」
「ケーキ…美味しかったみたいだな?」
するとヒルダは頬を染めながら言った。
「はい。あまりにも美味しかったので一気に食べてしまいました。‥お恥ずかしいです」
「そんな事は無いさ。ヒルダがこの屋敷にいる間にまたケーキを焼いてやろう」
するとヒルダの方から思いもかけない申し出があった。
「あ、あの…お兄様。もし差し支えなければ今のケーキの作り方を私にも教えて頂けないでしょうか?ロータスに帰ったら自分でも作ってみたいので。お兄様の御都合の宜しい時で構いませんから」
それはエドガーに取って、とても嬉しい申し出だった。
「ああ、勿論だ」
エドガーはニコニコしながらヒルダに返事をした。
「…」
そんな様子を黙って見ていたマーガレット。ハリスからはヒルダとエドガーを2人きりにしてはいけないと言われている事を思い出していた。
(でも…明らかに2人きりにさせないようにするのは余りにも露骨すぎやしないかしら…エドガーは紳士だから、間違えてもおかしな関係になるとは思えないし…)
なので、マーガレットはケーキ作りの事に関しては静観しようと心に決めた―。
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