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第4部 第1章 1 卒業
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季節は5月―
あれから時が流れ、ヒルダは18歳になっていた。
ガチャ…
「ただいま」
扉が開かれ、ヒルダが学校から帰って来た。
「お帰りなさいませ、ヒルダ様。卒業式はどうでしたか?」
カミラは笑顔で玄関まで出迎えると声を掛けて来た。
「ええ。久しぶりに学校へ行ったけど、皆と会えて嬉しかったわ。」
ヒルダは早々に単位を取ることが出来ていたので昨年の12月に高校を卒業していた。そして今日はその高校の卒業式の為、5カ月ぶりに高校へ行ったのである。
ヒルダは背負っていた通学用リュックから卒業証書が入ったアルバムを取り出すとカミラに手渡した。
「まあ、卒業証書ですか?」
「ええ。主席卒業と言う事で講堂で代表して卒業証書を1番に受け取ったの。恥ずかしくて緊張してしまったわ。」
カミラはパラリと卒業証書が納められたアルバムをめくった。するとそこには高校を無事卒業した事と、首席の卒業をたたえる文章が記載されていた。
「ヒルダ様‥本当に素晴らしいです。カウベリーの旦那様も奥様も大層喜んでおられましたし。」
「ええ…そうね。私、ルドルフの分まで頑張ろうと思ったから…」
ヒルダは寂しげに言った。
「ヒルダ様…。とにかくまずはお部屋にお入りください。マドレーヌさんのご自宅のケーキを買って来てあるのですよ?」
「まぁ、そうなの?」
ヒルダは少しだけ笑みを浮かべた。
「すぐにお茶を淹れますのでリビングへお入りください」
「ええ、でもその前に荷物を置きに行って来るわ」
ヒルダはカバンを持ったまま自室へと向かった。
カチャリ‥
部屋の扉を開けると机の上にはルドルフの写真が木枠の写真立てに飾られている。この写真はマルコがヒルダの為にくれた写真だ。
「ただいま。ルドルフ」
ヒルダはそっと写真に触れると、カバンを置いてリビングへと向かった。
リビングではすでにカミラがカップにカウベリーティーを淹れてくれていた。目の前のテーブルにはヒルダの好きなチェリーパイが乗っている。
「まぁ。チェリーパイだわ」
ヒルダが嬉しそうに言いながら椅子を引いて座った。
「はい、今日はおめでたい日ですから」
カミラも笑顔でヒルダに返事をする。そして2人分のお茶とケーキの用意が出来た。
「では、頂きましょう。ヒルダ様」
「ええ」
ヒルダは早速フォークでチェリーパイをサクッと切って口に入れた。途端にチェリーの甘い味が口の中に広がる。
「フフ…とても美味しいわ」
「それは良かったです」
カミラはヒルダを見つめると笑みを浮かべながら思った。
(本当に、ヒルダ様がここまで元気になられたのは…全てアレン先生のお陰だわ。あの先生には改めてお礼を言いに行かなくては‥)
そう、ヒルダがここまで元気になれたのは、全てアレンのお陰だったのだ。
失意のまま、ロータスに戻って来たヒルダはまるで抜け殻の様になっていた。食事も殆ど取れず、何とか学校へは通っていたけれども、すぐに貧血を起こしてしまい、いつしか医務室がヒルダの居場所の様になっていた。そしてそんなヒルダに寄り添い、元気づけてくれたのが、医務室に週2回勤務医として務め、アルバイト先の雇用主でもあるアレンだったのだ。そこで学校側もヒルダの体調を考慮し、アレンが勤務医の時は医務室で自習する事を許可したのだ。学校側も、優秀なヒルダの退学だけは避けたかった為、特例として認めたのだった。
「ヒルダ様、今夜は18時から卒業パーティーがフランシスさんの御両親のレストランで開催されるのですよね?」
「ええ、そうよ」
「エスコートして下さる方はいらっしゃるのですか?」
「いいえ、いないわ。私はパーティーには参加するけど、ダンスは踊らないから」
ルドルフが亡くなった後、ヒルダには交際を申し込んでくる男子学生が後を絶たなかった。しかし、ヒルダは誰の申し込みにも首を縦にふらなかったのだ。その為、恋人はいない。
「そうですか…ではお1人で行かれるのですか?」
「いいえ、マドレーヌがパートナーのジャスティンと一緒に来てくれるわ」
「ジャスティン…その方はマドレーヌさんの…?」
「ええ。ボーイフレンドよ。元々2人は2年生の時、オリエンテーリングでペアを組んでいたの」
「まぁ、それが御縁だったのですね?」
「そうなの。それに2人は同じ大学に進学する事が決まっているし」
「左様でございましたか。あ…そう言えば今思い出しました。実はコリンさんから小包が届いていたのでした」
「え?コリンさんから?」
「はい、こちらです」
カミラはサイドボードに乗っていた小包を持ってくるとテーブルの上に乗せた。
「何かしら…?」
ヒルダは木箱の麻ひもをほどき、中を開けて驚いた。そこには手回しオルゴールが入っていた。そしてメモが同封されている。ヒルダはそのメモを広げてみた。
『ヒルダ様。卒業おめでとうございます。俺の初めて作ったオルゴールです。卒業祝いのプレゼントです。どうか受け取ってください。 コリン』
メモにはそう書かれていた―。
あれから時が流れ、ヒルダは18歳になっていた。
ガチャ…
「ただいま」
扉が開かれ、ヒルダが学校から帰って来た。
「お帰りなさいませ、ヒルダ様。卒業式はどうでしたか?」
カミラは笑顔で玄関まで出迎えると声を掛けて来た。
「ええ。久しぶりに学校へ行ったけど、皆と会えて嬉しかったわ。」
ヒルダは早々に単位を取ることが出来ていたので昨年の12月に高校を卒業していた。そして今日はその高校の卒業式の為、5カ月ぶりに高校へ行ったのである。
ヒルダは背負っていた通学用リュックから卒業証書が入ったアルバムを取り出すとカミラに手渡した。
「まあ、卒業証書ですか?」
「ええ。主席卒業と言う事で講堂で代表して卒業証書を1番に受け取ったの。恥ずかしくて緊張してしまったわ。」
カミラはパラリと卒業証書が納められたアルバムをめくった。するとそこには高校を無事卒業した事と、首席の卒業をたたえる文章が記載されていた。
「ヒルダ様‥本当に素晴らしいです。カウベリーの旦那様も奥様も大層喜んでおられましたし。」
「ええ…そうね。私、ルドルフの分まで頑張ろうと思ったから…」
ヒルダは寂しげに言った。
「ヒルダ様…。とにかくまずはお部屋にお入りください。マドレーヌさんのご自宅のケーキを買って来てあるのですよ?」
「まぁ、そうなの?」
ヒルダは少しだけ笑みを浮かべた。
「すぐにお茶を淹れますのでリビングへお入りください」
「ええ、でもその前に荷物を置きに行って来るわ」
ヒルダはカバンを持ったまま自室へと向かった。
カチャリ‥
部屋の扉を開けると机の上にはルドルフの写真が木枠の写真立てに飾られている。この写真はマルコがヒルダの為にくれた写真だ。
「ただいま。ルドルフ」
ヒルダはそっと写真に触れると、カバンを置いてリビングへと向かった。
リビングではすでにカミラがカップにカウベリーティーを淹れてくれていた。目の前のテーブルにはヒルダの好きなチェリーパイが乗っている。
「まぁ。チェリーパイだわ」
ヒルダが嬉しそうに言いながら椅子を引いて座った。
「はい、今日はおめでたい日ですから」
カミラも笑顔でヒルダに返事をする。そして2人分のお茶とケーキの用意が出来た。
「では、頂きましょう。ヒルダ様」
「ええ」
ヒルダは早速フォークでチェリーパイをサクッと切って口に入れた。途端にチェリーの甘い味が口の中に広がる。
「フフ…とても美味しいわ」
「それは良かったです」
カミラはヒルダを見つめると笑みを浮かべながら思った。
(本当に、ヒルダ様がここまで元気になられたのは…全てアレン先生のお陰だわ。あの先生には改めてお礼を言いに行かなくては‥)
そう、ヒルダがここまで元気になれたのは、全てアレンのお陰だったのだ。
失意のまま、ロータスに戻って来たヒルダはまるで抜け殻の様になっていた。食事も殆ど取れず、何とか学校へは通っていたけれども、すぐに貧血を起こしてしまい、いつしか医務室がヒルダの居場所の様になっていた。そしてそんなヒルダに寄り添い、元気づけてくれたのが、医務室に週2回勤務医として務め、アルバイト先の雇用主でもあるアレンだったのだ。そこで学校側もヒルダの体調を考慮し、アレンが勤務医の時は医務室で自習する事を許可したのだ。学校側も、優秀なヒルダの退学だけは避けたかった為、特例として認めたのだった。
「ヒルダ様、今夜は18時から卒業パーティーがフランシスさんの御両親のレストランで開催されるのですよね?」
「ええ、そうよ」
「エスコートして下さる方はいらっしゃるのですか?」
「いいえ、いないわ。私はパーティーには参加するけど、ダンスは踊らないから」
ルドルフが亡くなった後、ヒルダには交際を申し込んでくる男子学生が後を絶たなかった。しかし、ヒルダは誰の申し込みにも首を縦にふらなかったのだ。その為、恋人はいない。
「そうですか…ではお1人で行かれるのですか?」
「いいえ、マドレーヌがパートナーのジャスティンと一緒に来てくれるわ」
「ジャスティン…その方はマドレーヌさんの…?」
「ええ。ボーイフレンドよ。元々2人は2年生の時、オリエンテーリングでペアを組んでいたの」
「まぁ、それが御縁だったのですね?」
「そうなの。それに2人は同じ大学に進学する事が決まっているし」
「左様でございましたか。あ…そう言えば今思い出しました。実はコリンさんから小包が届いていたのでした」
「え?コリンさんから?」
「はい、こちらです」
カミラはサイドボードに乗っていた小包を持ってくるとテーブルの上に乗せた。
「何かしら…?」
ヒルダは木箱の麻ひもをほどき、中を開けて驚いた。そこには手回しオルゴールが入っていた。そしてメモが同封されている。ヒルダはそのメモを広げてみた。
『ヒルダ様。卒業おめでとうございます。俺の初めて作ったオルゴールです。卒業祝いのプレゼントです。どうか受け取ってください。 コリン』
メモにはそう書かれていた―。
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