326 / 566
第3章 6 赤十字病院にて
しおりを挟む
ガラガラガラガラ・・・
馬車の車内でルドルフがヒルダに言う。
「ヒルダ様、この馬車は今日僕たちが『ロータス』に帰るまで貸切る事になっているんです。今から行く赤十字病院でノラを受け入れてくれると良いのですが、他を当たらなければらない場合、又馬車が必要になってしまうので」
「そうね・・確かに貴方の言う通りかもしれないわね。今から行く赤十字病院でノラさんが入院できればいいのだけど・・・」
「ええ。本当に・・そう思います・・あの病院にいたら、ただ死を待つのみになってしまいますからね」
「ノラさん・・・家族を皆結核で亡くしてしまうなんて・・気の毒すぎるわ」
すると突然馬車が止まり、御者が2人に声を掛けてきた。
「赤十字病院に到着致しました」
「ありがとうございます」
ルドルフは礼を述べるとヒルダの方を向いた。
「ヒルダ様。到着したようなので降りましょう」
「ええ、分ったわ」
ルドルフはドアを開けて先に降りるとヒルダに手を差し伸べた。
「降りましょう、ヒルダ様」
「ええ・・」
そしていつもの如く、ルドルフはヒルダを抱き上げると馬車から降ろした。
2人が馬車から降りるとルドルフは御者に声を掛けた。
「すみません。今から病院に行ってきます。僕達が戻ってくる間、ここで待っていて頂けませんか?」
すると御者はニコニコしながら返事をした。
「ええ。勿論です。1日分の馬車代と、チップとして金貨1枚も頂いているのですから。本当に貴族の方は気前がよろしくて助かります」
「それではよろしくお願いします。行きましょうヒルダ様」
ルドルフに手を取られ、ヒルダは頷く。そして2人は赤十字病院の建物の中へと入って行った。
****
赤十字病院はノラが入院している病院とは違って雲泥の差があった。病院内はボイラーが行き届いているのか温かくて、内部は広々としていた。南向きの窓からは外の景色が良く見えた。
「何所へ行けばいいのかしら・・・」
ヒルダは広すぎる病院内をキョロキョロ見渡しながら、ルドルフンの上着の袖を握りしめた。病院内は患者でごった返している。
「そうですね・・・とりあえずあそこに総合受付があります。そこにいって相談してみましょうか?」
「ええ、そうね。行ってみましょう」
2人は総合受付へと向かった―。
「すみません。お尋ねしたい事があるのですが」
ルドルフは総合受付にカウンターに座っている女性事務員に声を掛けた。
「あ、は・はいっ!どのようなご用件でしょうか?」
目の前に現れた身なりの良い服を着た美しい少年と少女を目にした女性は緊張した面持ちで返事をした。
「あの・・僕達の知り合いの少女が結核で施設に入れられているのですが、こちらで治療の為に入院させて頂く事は可能でしょうか?」
ルドルフは丁寧に質問した。
「え?あ、それはですね・・やはり一度先生の相談を受けてからでないと難しいですね」
ヒルダとルドルフは互いに顔を合わすと、ルドルフは再度女性に尋ねた。
「どうすれば相談出来ますか?」
「そうですね・・まずは一度先生の診察を受けて頂かないとなりませんね・・」
「そうですか・・それは難しいですね・・。もうベッドから起き上がることも出来ないんですよ」
ルドルフは困ったように答える。
「・・・」
(困ったわ・・何とかしてあげたいけど、私はただの事務員でしかすぎないし・・)
すると今まで黙って様子を見ていたヒルダが言った。
「あの・・・どなたか先生を入院施設まで往診をお願いする事は出来ませんか?」
「あ・・・そうですね。それでしたら可能かもしれません。ではこちらの問診票にご記入をお願いします。」
ルドルフは自分の知りうる限りのノラの情報を問診表に書いた―。
馬車の車内でルドルフがヒルダに言う。
「ヒルダ様、この馬車は今日僕たちが『ロータス』に帰るまで貸切る事になっているんです。今から行く赤十字病院でノラを受け入れてくれると良いのですが、他を当たらなければらない場合、又馬車が必要になってしまうので」
「そうね・・確かに貴方の言う通りかもしれないわね。今から行く赤十字病院でノラさんが入院できればいいのだけど・・・」
「ええ。本当に・・そう思います・・あの病院にいたら、ただ死を待つのみになってしまいますからね」
「ノラさん・・・家族を皆結核で亡くしてしまうなんて・・気の毒すぎるわ」
すると突然馬車が止まり、御者が2人に声を掛けてきた。
「赤十字病院に到着致しました」
「ありがとうございます」
ルドルフは礼を述べるとヒルダの方を向いた。
「ヒルダ様。到着したようなので降りましょう」
「ええ、分ったわ」
ルドルフはドアを開けて先に降りるとヒルダに手を差し伸べた。
「降りましょう、ヒルダ様」
「ええ・・」
そしていつもの如く、ルドルフはヒルダを抱き上げると馬車から降ろした。
2人が馬車から降りるとルドルフは御者に声を掛けた。
「すみません。今から病院に行ってきます。僕達が戻ってくる間、ここで待っていて頂けませんか?」
すると御者はニコニコしながら返事をした。
「ええ。勿論です。1日分の馬車代と、チップとして金貨1枚も頂いているのですから。本当に貴族の方は気前がよろしくて助かります」
「それではよろしくお願いします。行きましょうヒルダ様」
ルドルフに手を取られ、ヒルダは頷く。そして2人は赤十字病院の建物の中へと入って行った。
****
赤十字病院はノラが入院している病院とは違って雲泥の差があった。病院内はボイラーが行き届いているのか温かくて、内部は広々としていた。南向きの窓からは外の景色が良く見えた。
「何所へ行けばいいのかしら・・・」
ヒルダは広すぎる病院内をキョロキョロ見渡しながら、ルドルフンの上着の袖を握りしめた。病院内は患者でごった返している。
「そうですね・・・とりあえずあそこに総合受付があります。そこにいって相談してみましょうか?」
「ええ、そうね。行ってみましょう」
2人は総合受付へと向かった―。
「すみません。お尋ねしたい事があるのですが」
ルドルフは総合受付にカウンターに座っている女性事務員に声を掛けた。
「あ、は・はいっ!どのようなご用件でしょうか?」
目の前に現れた身なりの良い服を着た美しい少年と少女を目にした女性は緊張した面持ちで返事をした。
「あの・・僕達の知り合いの少女が結核で施設に入れられているのですが、こちらで治療の為に入院させて頂く事は可能でしょうか?」
ルドルフは丁寧に質問した。
「え?あ、それはですね・・やはり一度先生の相談を受けてからでないと難しいですね」
ヒルダとルドルフは互いに顔を合わすと、ルドルフは再度女性に尋ねた。
「どうすれば相談出来ますか?」
「そうですね・・まずは一度先生の診察を受けて頂かないとなりませんね・・」
「そうですか・・それは難しいですね・・。もうベッドから起き上がることも出来ないんですよ」
ルドルフは困ったように答える。
「・・・」
(困ったわ・・何とかしてあげたいけど、私はただの事務員でしかすぎないし・・)
すると今まで黙って様子を見ていたヒルダが言った。
「あの・・・どなたか先生を入院施設まで往診をお願いする事は出来ませんか?」
「あ・・・そうですね。それでしたら可能かもしれません。ではこちらの問診票にご記入をお願いします。」
ルドルフは自分の知りうる限りのノラの情報を問診表に書いた―。
0
お気に入りに追加
725
あなたにおすすめの小説
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
愛しいあなたに真実(言葉)は不要だった
cyaru
恋愛
伯爵令嬢のエリツィアナは領地で暮らしていた。
「結婚が出来る15歳になったら迎えに来る」
そこで出会った1人の少年の言葉を信じてみようとルマンジュ侯爵子息のオーウェンとの婚約話を先延ばしにしたが少年は来なかった。
領地から王都に住まうに屋敷は長兄が家族と共に住んでおり部屋がない事から父の弟(叔父)の家に厄介になる事になったが、慈善活動に力を入れている叔父の家では貧しい家の子供たちに文字の読み書きを教えていた。エリツィアナも叔父を手伝い子供たちに文字を教え、本を読みきかせながら、嫁ぎ先となる侯爵家に通う日々が始まった。
しかし、何時になっても正式な婚約が成されないばかりか、突然オーウェンから婚約破棄と慰謝料の請求が突きつけられた。
婚約もしていない状態なのに何故?マルレイ伯爵家一同は首を傾げた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる