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第3章 6 赤十字病院にて

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ガラガラガラガラ・・・

馬車の車内でルドルフがヒルダに言う。

「ヒルダ様、この馬車は今日僕たちが『ロータス』に帰るまで貸切る事になっているんです。今から行く赤十字病院でノラを受け入れてくれると良いのですが、他を当たらなければらない場合、又馬車が必要になってしまうので」

「そうね・・確かに貴方の言う通りかもしれないわね。今から行く赤十字病院でノラさんが入院できればいいのだけど・・・」

「ええ。本当に・・そう思います・・あの病院にいたら、ただ死を待つのみになってしまいますからね」

「ノラさん・・・家族を皆結核で亡くしてしまうなんて・・気の毒すぎるわ」

すると突然馬車が止まり、御者が2人に声を掛けてきた。

「赤十字病院に到着致しました」

「ありがとうございます」

ルドルフは礼を述べるとヒルダの方を向いた。

「ヒルダ様。到着したようなので降りましょう」

「ええ、分ったわ」

ルドルフはドアを開けて先に降りるとヒルダに手を差し伸べた。

「降りましょう、ヒルダ様」

「ええ・・」

そしていつもの如く、ルドルフはヒルダを抱き上げると馬車から降ろした。
2人が馬車から降りるとルドルフは御者に声を掛けた。

「すみません。今から病院に行ってきます。僕達が戻ってくる間、ここで待っていて頂けませんか?」

すると御者はニコニコしながら返事をした。

「ええ。勿論です。1日分の馬車代と、チップとして金貨1枚も頂いているのですから。本当に貴族の方は気前がよろしくて助かります」

「それではよろしくお願いします。行きましょうヒルダ様」

ルドルフに手を取られ、ヒルダは頷く。そして2人は赤十字病院の建物の中へと入って行った。



****

 赤十字病院はノラが入院している病院とは違って雲泥の差があった。病院内はボイラーが行き届いているのか温かくて、内部は広々としていた。南向きの窓からは外の景色が良く見えた。


「何所へ行けばいいのかしら・・・」

ヒルダは広すぎる病院内をキョロキョロ見渡しながら、ルドルフンの上着の袖を握りしめた。病院内は患者でごった返している。

「そうですね・・・とりあえずあそこに総合受付があります。そこにいって相談してみましょうか?」

「ええ、そうね。行ってみましょう」

2人は総合受付へと向かった―。



「すみません。お尋ねしたい事があるのですが」

ルドルフは総合受付にカウンターに座っている女性事務員に声を掛けた。

「あ、は・はいっ!どのようなご用件でしょうか?」

目の前に現れた身なりの良い服を着た美しい少年と少女を目にした女性は緊張した面持ちで返事をした。

「あの・・僕達の知り合いの少女が結核で施設に入れられているのですが、こちらで治療の為に入院させて頂く事は可能でしょうか?」

ルドルフは丁寧に質問した。

「え?あ、それはですね・・やはり一度先生の相談を受けてからでないと難しいですね」

ヒルダとルドルフは互いに顔を合わすと、ルドルフは再度女性に尋ねた。

「どうすれば相談出来ますか?」

「そうですね・・まずは一度先生の診察を受けて頂かないとなりませんね・・」

「そうですか・・それは難しいですね・・。もうベッドから起き上がることも出来ないんですよ」

ルドルフは困ったように答える。

「・・・」

(困ったわ・・何とかしてあげたいけど、私はただの事務員でしかすぎないし・・)

すると今まで黙って様子を見ていたヒルダが言った。

「あの・・・どなたか先生を入院施設まで往診をお願いする事は出来ませんか?」

「あ・・・そうですね。それでしたら可能かもしれません。ではこちらの問診票にご記入をお願いします。」

ルドルフは自分の知りうる限りのノラの情報を問診表に書いた―。


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