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第2章 6 デートの報告
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夕方6時―
「ヒルダ様、ただいま戻りました。」
仕事が終わったカミラがドアを開けながら入ってきた。
「お帰りなさい、カミラ。」
ヒルダが笑顔で玄関まで出迎えにやってきた。家の中はおいしそうなにおいが漂っている。
「おいしそうな匂いがしますね。」
カミラは上着を脱ぎながら言った。
「本当?実は市場で白身魚を卸してもらったの。それでお野菜や白ワイン、ローリエ等でお魚の煮込み料理を作ったのよ。もうストーブの上で温まっているからいつでも食べられるわ。」
「それは嬉しいですね。ありがとうございます。」
「それじゃ、テーブルの上に料理の用意をしてくるわね。」
ヒルダは嬉しそうに言うと、リビングへと戻って行った。そんなヒルダの後ろ姿をカミラは微笑ましく見つめていた―。
「ヒルダ様、本当にこのお料理・・美味しいですね。」
2人でテーブルに向かい合わせに座り、鍋から煮込み料理を取り分けながらカミラが言った。
「ありがとう、やっぱり新鮮なお魚は、いい味が出るわね。」
ヒルダはスプーンでスープをすくいながら言った。
「それで?ヒルダ様・・・ルドルフさんとのデートはいかがでしたか?」
すると、途端にヒルダの頬が赤く染まる。
「え、ええ。とっても楽しかったわ。それでね、私たち・・劇場に行って、ミュージカルのお芝居を見て来たの。」
「まあ!ミュージカルを見て来たのですか?いかかでしたか?」
ミュージカルという言葉を聞いてカミラは目を輝かせた。
「とっても面白かったわ。劇も良かったけど・・生演奏や素敵な歌も聞くことができて・・ルドルフのお陰で素晴らしい体験をすることが出来たわ。」
ヒルダは本日見てきたミュージカルを思い出し、うっとりした目つきで言う。
「それはとても良かったですね。」
ヒルダが楽し気に話をする姿を見せてくれるのはとても嬉しかった。
「ねえ。カミラ・・今度2人で一緒に観に行かない?」
ヒルダは目を輝かせながらカミラに言う。
「え・・?ですがヒルダ様はルドルフさんと・・。」
「確かにルドルフとのお出かけもいいけど・・カミラも私にとっては大切な人だもの。2人で楽しいことを分け合いたいわ。」
「ヒルダ様・・・身に余るお言葉で・・とても嬉しいです。」
カミラは胸が熱くなった。
「それで?今度はいつルドルフさんと会うのですか?」
「あ、その事なのだけど・・・実は来週の土曜日にルドルフに旅行に誘われたの。」
「まあ!旅行・・ですか?!」
「ええ。そうなのよ・・・。」
2人で旅行・・さすがのカミラもこの話には驚いてしまったけれども、何故かヒルダの様子がおかしい。本来なら恋人と2人きりの旅行なら、もっと喜ぶべきか、照れるかのどちらかだと思うのだが、ヒルダの態度はそのどちらにも該当しなかった。
「ヒルダ様・・・ルドルフ様との旅行・・・楽しみではないのですか?」
カミラは遠慮がちにヒルダに尋ねた。
「ええ・・それなのだけど・・ルドルフは旅行と言ったけれども、果たして旅行とよんでいいのかどうか・・。」
「え・・・・?」
「実は、ルドルフに誘われた旅行先は『ボルト』という町らしいの。カウベリー行きの汽車に2時間ほど乗った場所にあるらしいのだけど・・そこは工場が立ち並ぶ町らしくて・・人を訪ねに行くのですって。それで・・是非私にも一緒に来てもらいたいって言うの。」
「人を訪ねに・・・?」
カミラは首を傾げた。
「一体、それは誰なのですか?」
「ノラとコリンという2人が『ボルト』の工場で働いているらしいの。」
「ノラ・・・コリン・・・?誰なのでしょう?」
「ええ・・カウベリーで・・教会の火事が起きた時・・一緒にいた2人なのよ・・。」
「まあ・・・!」
カミラは目を見開いた―。
「ヒルダ様、ただいま戻りました。」
仕事が終わったカミラがドアを開けながら入ってきた。
「お帰りなさい、カミラ。」
ヒルダが笑顔で玄関まで出迎えにやってきた。家の中はおいしそうなにおいが漂っている。
「おいしそうな匂いがしますね。」
カミラは上着を脱ぎながら言った。
「本当?実は市場で白身魚を卸してもらったの。それでお野菜や白ワイン、ローリエ等でお魚の煮込み料理を作ったのよ。もうストーブの上で温まっているからいつでも食べられるわ。」
「それは嬉しいですね。ありがとうございます。」
「それじゃ、テーブルの上に料理の用意をしてくるわね。」
ヒルダは嬉しそうに言うと、リビングへと戻って行った。そんなヒルダの後ろ姿をカミラは微笑ましく見つめていた―。
「ヒルダ様、本当にこのお料理・・美味しいですね。」
2人でテーブルに向かい合わせに座り、鍋から煮込み料理を取り分けながらカミラが言った。
「ありがとう、やっぱり新鮮なお魚は、いい味が出るわね。」
ヒルダはスプーンでスープをすくいながら言った。
「それで?ヒルダ様・・・ルドルフさんとのデートはいかがでしたか?」
すると、途端にヒルダの頬が赤く染まる。
「え、ええ。とっても楽しかったわ。それでね、私たち・・劇場に行って、ミュージカルのお芝居を見て来たの。」
「まあ!ミュージカルを見て来たのですか?いかかでしたか?」
ミュージカルという言葉を聞いてカミラは目を輝かせた。
「とっても面白かったわ。劇も良かったけど・・生演奏や素敵な歌も聞くことができて・・ルドルフのお陰で素晴らしい体験をすることが出来たわ。」
ヒルダは本日見てきたミュージカルを思い出し、うっとりした目つきで言う。
「それはとても良かったですね。」
ヒルダが楽し気に話をする姿を見せてくれるのはとても嬉しかった。
「ねえ。カミラ・・今度2人で一緒に観に行かない?」
ヒルダは目を輝かせながらカミラに言う。
「え・・?ですがヒルダ様はルドルフさんと・・。」
「確かにルドルフとのお出かけもいいけど・・カミラも私にとっては大切な人だもの。2人で楽しいことを分け合いたいわ。」
「ヒルダ様・・・身に余るお言葉で・・とても嬉しいです。」
カミラは胸が熱くなった。
「それで?今度はいつルドルフさんと会うのですか?」
「あ、その事なのだけど・・・実は来週の土曜日にルドルフに旅行に誘われたの。」
「まあ!旅行・・ですか?!」
「ええ。そうなのよ・・・。」
2人で旅行・・さすがのカミラもこの話には驚いてしまったけれども、何故かヒルダの様子がおかしい。本来なら恋人と2人きりの旅行なら、もっと喜ぶべきか、照れるかのどちらかだと思うのだが、ヒルダの態度はそのどちらにも該当しなかった。
「ヒルダ様・・・ルドルフ様との旅行・・・楽しみではないのですか?」
カミラは遠慮がちにヒルダに尋ねた。
「ええ・・それなのだけど・・ルドルフは旅行と言ったけれども、果たして旅行とよんでいいのかどうか・・。」
「え・・・・?」
「実は、ルドルフに誘われた旅行先は『ボルト』という町らしいの。カウベリー行きの汽車に2時間ほど乗った場所にあるらしいのだけど・・そこは工場が立ち並ぶ町らしくて・・人を訪ねに行くのですって。それで・・是非私にも一緒に来てもらいたいって言うの。」
「人を訪ねに・・・?」
カミラは首を傾げた。
「一体、それは誰なのですか?」
「ノラとコリンという2人が『ボルト』の工場で働いているらしいの。」
「ノラ・・・コリン・・・?誰なのでしょう?」
「ええ・・カウベリーで・・教会の火事が起きた時・・一緒にいた2人なのよ・・。」
「まあ・・・!」
カミラは目を見開いた―。
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