嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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第1章 7 ヒルダの為に

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「・・・・。」

ヒルダは一瞬店の中へ入ろうかと思い、入り口のドアに手を触れ・・そっと離した。

(ううん・・・やっぱりやめておきましょう。2人が仲良さそうに話をしている姿をを見るのも辛いし、もし見つかった場合後を付けていたのかと思われてしまうのも嫌だもの。)

「アパートメントに・・帰りましょう・・。)

入り口で小さな溜息をつくと、ヒルダは寂し気に足を引きずり・・トボトボと歩き始めた―。



 一方その頃、マーガレットと店の中に入ったルドルフは多くの女性客に混ざり、色とりどりの美しいケーキに目を奪われていた。

「凄い・・こんなに沢山の種類のケーキがあるなんて・・・・。」

ガラスケースに入れられていたケーキはカウベリーでは見たことも無いような見事なデコレーションケーキが並べられていた。森のきりかぶをイメージしたロールケーキや、チョコレートでコーティングしたホールケーキにはまるで星屑のようにキラキラ光る金粉がまぶしてある。生クリームがたっぷ塗られたケーキの上にリンゴを薄くスライスしてピンク色に甘く煮詰めたコンポートは薔薇を模した形で飾られている。

(ヒルダ様は薔薇の花が大好きだった・・。このケーキを見たらきっと喜ぶだろうな・・。)

ガラスケースに並んでいるケーキをまるで食い入るように真剣な目つきで見つめているルドルフにマーガレットは言った。

「ねぇ、ルドルフ。そんなにこのケーキが気に入ったならお土産に買って行ったら?」

「え?い、いや・・・。いくら何でもこのケーキは大き過ぎだよ。とてもじゃないけど食べきれない・・。」

「あのね。ここには大きいサイズのケーキしか並んでいないけど、実は小さいサイズも注文すれば作れるのよ?3人分位のサイズから作れるのだから。」

「え?本当に?」

ルドルフは顔を上げてマドレーヌを見た。

「ええ、本当よ。今すぐには用意できないけど・・注文しておく?そしたら明日ルドルフの都合の良い時間に取りにくてくれればいいから。」
マドレーヌは商売人の娘らしく、キビキビと言う。

「・・・そうだな・・・。注文・・しておこうかな・・・。」

ルドルフはじっとバラのケーキを見つめながら言う。

「了解!それじゃ注文書持ってくるから待っていて。」

「う、うん。」

ルドルフは返事をすると、店の隅の方に移動した。多くの女性客でにぎわっている店内をぼんやり見つめながら思った。

(本当に・・ロータスはなんて人で賑わっている町なんだろう・・・。ここにいるとカウベリーでの出来事が嘘みたいだ・・・。)

ルドルフは帰省してすぐに2人のかつての友人が一度に命を失った事件が今でも信じられずにいたのだ。
その時、店の奥から先ほどとは違い真っ白なエプロンを身に着けたマドレーヌが現れたのが見えた。ルドルフの姿見当たらないのかキョロキョロしている。ルドルフは慌てて近付くと声を掛けた。

「ごめん、マドレーヌ。ここだよ。」

「あら、そんなところにいたの?」

手に伝票を持ったマドレーヌが首を傾げた。

「うん。お店が混んでいたから邪魔にならない場所で待っていたんだ。」

「そうなのね。それでいつ取りに来るのかしら?お店は10時から開くわ。」

「そうか・・。じゃあ11時頃取りに行くよ。」

「了解、11時頃ね。」

マドレーヌはカウンターで伝票をめくり、間にカーボン紙を挟み込むとスラスラと注文内容を書いて、控えの伝票を切ってルドルフに渡した。

「はい、これが控えよ。明日この伝票を持ってきてね。ここだけの話だけど・・同じクラスメイトだから少し値引きしておいてあげる。本当なら銀貨1枚だけど・・銅貨4枚にしておいてあげるから。」

「ありがとう、マドレーヌ。」

そしてルドルフは店を出た―。


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