230 / 566
第10章 13 海辺のレストランで
しおりを挟む
その日の夜7時―
海辺にあるフランシスの両親が経営するレストランでヒルダとカミラ、そしてアンナに侍女のコゼットは窓際のボックス席でシーフード料理を堪能していた。
「やっぱり海辺の町は魚料理がおいしいわね。」
アンナは舌平目のムニエルにご満悦だった。
「この魚介のブイヤベースも美味ですよ。アンナ様。」
コゼットは自分の食している料理をアピールする。
そしてそんな2人の様子をヒルダとカミラは微笑ましく見守っていた。その時―
「ヒルダッ!食事に来てくれていたんだなっ?!」
ウェイターの姿をしたフランシスが現れた。
「こんばんは。フランシス。ひょっとして冬休みの間はいつもここで働いていたの?」
ヒルダが尋ねるとフランシスは照れ臭そうに言った。
「いやぁ・・・いつもってわけじゃないんだけど・・買いたいものがあるんだけど最近金気味で・・・目標額に達するまではアルバイトさせて貰ってるんだよ。」
「あら・・そうなの?」
フランシスが何を買いたいのかには分からないが、きっと高価な品物なのだろうとヒルダは判断した。すると、ここで今まで黙って2人の話を聞いていたアンナが声を掛けてきた。
「あの・・・貴方はどなたかしら?」
「あ、はい。私はヒルダと同じ学校のフランシス・ランドルフと言います。お客様。」
「あら、紳士的な方なのね?」
アンナはフランシスに言う。
「いえ、とんでもございません。お客様。どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。」
フランシスは丁寧に頭を下げると去って行った
「・・・・。」
そんなフランシスの様子をヒルダは信じられない想いで見ていた。
(まさか・・あのフランシスが・・あんな挨拶をするなんて思わなかったわ・・。)
でも考えてみればフランシスも17歳。2年前からウェイターの仕事をしていれば接客業も板について当然かもしれない。
「ところでアンナ様。明日は何時の汽車でロータスを出るご予定なのでしょうか?」
カジキのソテーにナイフを入れながらカミラが尋ねてきた。
「ええ。明日は午前9時の汽車に乗って『カウベリー』へ帰るわ。ヒルダ様、準備はもうできてますか?」
「はい、一応・・数日分の着替えは用意してキャリーケースにしまってあります。」
「そうですか。それでは私たちは明日馬車を手配しますので、ヒルダ様の住むアパートに到着したら伺いますね。」
アンナはてきぱきと答える。
「はい、アンナ様。どうぞよろしくお願い致します。」
ヒルダは食事の手を止めると、丁寧に頭を下げた―。
「それではアンナ様、コゼットさん。私たちはこちらで失礼しますね。」
店を出るとヒルダは2人に頭を下げた。
「ええ、また明日ね。ヒルダ様。一応8時半に馬車でお迎えに伺いますね。」
アンナは笑みを浮かべながら言う。
「はい、それでは失礼致します。行きましょう、カミラ。」
ヒルダはカミラに声を掛けた
「はい、参りましょう。ヒルダ様。」
そしてカミラはアンナとコゼットに向き直ると頭を下げた。
「アンナ様・・コゼットさん。この度は本当に・・ありがとうございます。ヒルダ様を『カウベリー』に連れて行って下さるなんて・・。」
「カミラ・・・。」
ヒルダはカミラが涙ぐんでいることに気付いた。
(カミラ・・本当に私の事・・・心配してくれているのね・・。)
ヒルダはいつまでも自分の事を気にかけてくれるカミラに胸が熱くなるのを感じるのだった―。
そして・・彼女たちは店の前で別れを告げ・・それぞれに背を向けて歩き出した。
「ねぇ・・コゼット。」
アンナがコゼットに言う。
「何でしょう?アンナ様。」
「エドガー様はとてもお忙しい方なのに・・グレースの罪を暴こうとしているの。だから・・私、お手伝いすることに決めたわ。」
「アンナ様・・。」
「だって・・ヒルダ様がこのままではあまりにもお気の毒なんだもの・・。」
アンナの目には・・涙が浮かんでいた―。
海辺にあるフランシスの両親が経営するレストランでヒルダとカミラ、そしてアンナに侍女のコゼットは窓際のボックス席でシーフード料理を堪能していた。
「やっぱり海辺の町は魚料理がおいしいわね。」
アンナは舌平目のムニエルにご満悦だった。
「この魚介のブイヤベースも美味ですよ。アンナ様。」
コゼットは自分の食している料理をアピールする。
そしてそんな2人の様子をヒルダとカミラは微笑ましく見守っていた。その時―
「ヒルダッ!食事に来てくれていたんだなっ?!」
ウェイターの姿をしたフランシスが現れた。
「こんばんは。フランシス。ひょっとして冬休みの間はいつもここで働いていたの?」
ヒルダが尋ねるとフランシスは照れ臭そうに言った。
「いやぁ・・・いつもってわけじゃないんだけど・・買いたいものがあるんだけど最近金気味で・・・目標額に達するまではアルバイトさせて貰ってるんだよ。」
「あら・・そうなの?」
フランシスが何を買いたいのかには分からないが、きっと高価な品物なのだろうとヒルダは判断した。すると、ここで今まで黙って2人の話を聞いていたアンナが声を掛けてきた。
「あの・・・貴方はどなたかしら?」
「あ、はい。私はヒルダと同じ学校のフランシス・ランドルフと言います。お客様。」
「あら、紳士的な方なのね?」
アンナはフランシスに言う。
「いえ、とんでもございません。お客様。どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。」
フランシスは丁寧に頭を下げると去って行った
「・・・・。」
そんなフランシスの様子をヒルダは信じられない想いで見ていた。
(まさか・・あのフランシスが・・あんな挨拶をするなんて思わなかったわ・・。)
でも考えてみればフランシスも17歳。2年前からウェイターの仕事をしていれば接客業も板について当然かもしれない。
「ところでアンナ様。明日は何時の汽車でロータスを出るご予定なのでしょうか?」
カジキのソテーにナイフを入れながらカミラが尋ねてきた。
「ええ。明日は午前9時の汽車に乗って『カウベリー』へ帰るわ。ヒルダ様、準備はもうできてますか?」
「はい、一応・・数日分の着替えは用意してキャリーケースにしまってあります。」
「そうですか。それでは私たちは明日馬車を手配しますので、ヒルダ様の住むアパートに到着したら伺いますね。」
アンナはてきぱきと答える。
「はい、アンナ様。どうぞよろしくお願い致します。」
ヒルダは食事の手を止めると、丁寧に頭を下げた―。
「それではアンナ様、コゼットさん。私たちはこちらで失礼しますね。」
店を出るとヒルダは2人に頭を下げた。
「ええ、また明日ね。ヒルダ様。一応8時半に馬車でお迎えに伺いますね。」
アンナは笑みを浮かべながら言う。
「はい、それでは失礼致します。行きましょう、カミラ。」
ヒルダはカミラに声を掛けた
「はい、参りましょう。ヒルダ様。」
そしてカミラはアンナとコゼットに向き直ると頭を下げた。
「アンナ様・・コゼットさん。この度は本当に・・ありがとうございます。ヒルダ様を『カウベリー』に連れて行って下さるなんて・・。」
「カミラ・・・。」
ヒルダはカミラが涙ぐんでいることに気付いた。
(カミラ・・本当に私の事・・・心配してくれているのね・・。)
ヒルダはいつまでも自分の事を気にかけてくれるカミラに胸が熱くなるのを感じるのだった―。
そして・・彼女たちは店の前で別れを告げ・・それぞれに背を向けて歩き出した。
「ねぇ・・コゼット。」
アンナがコゼットに言う。
「何でしょう?アンナ様。」
「エドガー様はとてもお忙しい方なのに・・グレースの罪を暴こうとしているの。だから・・私、お手伝いすることに決めたわ。」
「アンナ様・・。」
「だって・・ヒルダ様がこのままではあまりにもお気の毒なんだもの・・。」
アンナの目には・・涙が浮かんでいた―。
0
お気に入りに追加
725
あなたにおすすめの小説
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。
それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。
一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。
いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。
変わってしまったのは、いつだろう。
分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。
******************************************
こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏)
7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。
大切なあのひとを失ったこと絶対許しません
にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。
はずだった。
目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う?
あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる?
でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの?
私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる