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第8章 2 新しいクラス委員長
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その日・・マイクは自らクラス委員長の座を降りたいと担任教師に申し出て、急遽朝のホームルームで推薦による新しいクラス委員長が選抜されることになった。
クラス担任のブルーノが教壇に立つと特進クラスの生徒達を見渡した。
「では・・立候補、推薦を問わずに誰がクラス委員長にふさわしいか手を挙げてくれ。」
「はい、先生!」
するとザックがすぐに手を挙げた。
「ザック、どうした?それは立候補か?」
「いいえ、俺は新しいクラス委員長に推薦したい人物がいます。」
「ほう・・・それは誰だ?」
ブルーノは腕組みするとザックに尋ねる。
「はい、俺はルドルフが適任だと思います。」
途端にクラス中がざわめき、一斉に視線がルドルフに集中する。一方のルドルフは少し困った顔をして前をじっと見つめている。
「そうだな・・・ルドルフが適任かもな。」
「ええ、そうね。ルドルフは頭もいいしね。」
「ああ。それに何より・・・。」
そこで何故かクラスメイトの視線が一斉にヒルダに集まる。
「?」
(え・・・?皆・・・何故私を見るのかしら・・?)
ヒルダは訳が分からず首を傾げた。しかし、それもそのはず。クラスメイト達は崖下へ転落して意識を失ったヒルダを誰が助けたのかはヒルダ以外、全員知っているからである。
「そうだな・・責任感の強いルドルフ。お前にやって貰おう、いいな?ルドルフ。」
クラス中の生徒が期待を込めた目でルドルフを見つめているのである。そして担任教師からの言葉に、ルドルフは頷くしかなかった。
「はい・・・分かりました。」
そしてクラス中の拍手の下、ルドルフが新しいクラス委員長に抜擢されたのだった。
そんな様子をマイクは1人悲し気に見ていた―。
一方のヒルダはルドルフがクラス委員長に任命されて、誇らしい気持ちになっていた。
(流石はルドルフだわ・・・転校生なのに、特進クラスのクラス委員長に選ばれるんですもの・・。)
それにしても謎が残った。オリエンテーリングが終わってからルドルフのクラスでの評価がグンと上がったのだ。そしてそれに比例するかのように。女子生徒たちはルドルフから何故か距離を取り、代わりに男子学生たちがルドルフの周囲に集まるようになっていたのだ。
ヒルダはその理由を知らなかったが、オリエンテーリングのあの日・・。
土砂降りの雨が上がった後、クラスメイト達はルドルフとヒルダの落ちた場所へ駆け寄って見下ろした時、ルドルフは太陽の光を浴びながらヒルダを抱き上げていた。
生徒たちはその姿を見た時に、これ以上お似合いの2人はいないだろうと判断したからであった。
そう周囲に思わせる程に・・ルドルフはヒルダを大事そうに抱きかかえていたのだ。
だからこそ、女生徒達はルドルフから距離を置き・・・代わりに男子学生達が一目置くようになっていたのだった。
その日の放課後―
「ねえ、ヒルダ。悪いけど今日は一緒に帰れないの。進路の事で先生と話があるのよ。」
マドレーヌがヒルダに声を掛けてきた。
「あら、もうそんな時期なの?」
スクールカバンに教科書をしまっていたヒルダは顔を上げてマドレーヌを見た。
「ええ、そうなのよ。だから、ごめんね。一緒に帰れなくて。」
マドレーヌは申し訳なさそうに言う。
「ええ、分ったわ。それじゃまた明日ね。」
ヒルダはスクールカバンを背負い、マドレーヌに手を振ると教室を出て行った。
昇降口を抜けて正門へ行こうとしたときに、突然女子生徒の声が聞こえてきた。
「あ、あの・・ルドルフさん・・。」
(え?ルドルフ?)
ヒルダは慌てて廊下の壁に隠れて、そっと様子を伺うとそこにはルドルフと見慣れない女子生徒が立っていた。
(誰かしら・・見たことがない女生徒だわ・・?)
女子生徒は顔を真っ赤にするとルドルフに言った。
「あ、あの・・・私、貴方が好きですっ!付き合って下さい!」
「・・・。」
(ルドルフが・・・告白されてる・・。)
すると・・・。
「ごめん。君の気持には答えられないんだ。僕には・・・好きな人がいるから。」
そしてルドルフは頭を下げた。
「う・・・。」
女子生徒は涙ぐむと、そのまま走り去って行ってしまった。
そんな様子をヒルダはドキドキしながら見ていた。
(どうしよう・・・・見てはいけないものを見てしまったわ・・・。)
しかし・・・・。
ヒルダは思った。
(やっぱり・・ルドルフは・・好きな人がいたのね・・・・。きっと相手はグレースさんなんでしょうね・・。)
そう思うと、ヒルダの胸は締め付けられそうなほど苦しくなるのだった―。
クラス担任のブルーノが教壇に立つと特進クラスの生徒達を見渡した。
「では・・立候補、推薦を問わずに誰がクラス委員長にふさわしいか手を挙げてくれ。」
「はい、先生!」
するとザックがすぐに手を挙げた。
「ザック、どうした?それは立候補か?」
「いいえ、俺は新しいクラス委員長に推薦したい人物がいます。」
「ほう・・・それは誰だ?」
ブルーノは腕組みするとザックに尋ねる。
「はい、俺はルドルフが適任だと思います。」
途端にクラス中がざわめき、一斉に視線がルドルフに集中する。一方のルドルフは少し困った顔をして前をじっと見つめている。
「そうだな・・・ルドルフが適任かもな。」
「ええ、そうね。ルドルフは頭もいいしね。」
「ああ。それに何より・・・。」
そこで何故かクラスメイトの視線が一斉にヒルダに集まる。
「?」
(え・・・?皆・・・何故私を見るのかしら・・?)
ヒルダは訳が分からず首を傾げた。しかし、それもそのはず。クラスメイト達は崖下へ転落して意識を失ったヒルダを誰が助けたのかはヒルダ以外、全員知っているからである。
「そうだな・・責任感の強いルドルフ。お前にやって貰おう、いいな?ルドルフ。」
クラス中の生徒が期待を込めた目でルドルフを見つめているのである。そして担任教師からの言葉に、ルドルフは頷くしかなかった。
「はい・・・分かりました。」
そしてクラス中の拍手の下、ルドルフが新しいクラス委員長に抜擢されたのだった。
そんな様子をマイクは1人悲し気に見ていた―。
一方のヒルダはルドルフがクラス委員長に任命されて、誇らしい気持ちになっていた。
(流石はルドルフだわ・・・転校生なのに、特進クラスのクラス委員長に選ばれるんですもの・・。)
それにしても謎が残った。オリエンテーリングが終わってからルドルフのクラスでの評価がグンと上がったのだ。そしてそれに比例するかのように。女子生徒たちはルドルフから何故か距離を取り、代わりに男子学生たちがルドルフの周囲に集まるようになっていたのだ。
ヒルダはその理由を知らなかったが、オリエンテーリングのあの日・・。
土砂降りの雨が上がった後、クラスメイト達はルドルフとヒルダの落ちた場所へ駆け寄って見下ろした時、ルドルフは太陽の光を浴びながらヒルダを抱き上げていた。
生徒たちはその姿を見た時に、これ以上お似合いの2人はいないだろうと判断したからであった。
そう周囲に思わせる程に・・ルドルフはヒルダを大事そうに抱きかかえていたのだ。
だからこそ、女生徒達はルドルフから距離を置き・・・代わりに男子学生達が一目置くようになっていたのだった。
その日の放課後―
「ねえ、ヒルダ。悪いけど今日は一緒に帰れないの。進路の事で先生と話があるのよ。」
マドレーヌがヒルダに声を掛けてきた。
「あら、もうそんな時期なの?」
スクールカバンに教科書をしまっていたヒルダは顔を上げてマドレーヌを見た。
「ええ、そうなのよ。だから、ごめんね。一緒に帰れなくて。」
マドレーヌは申し訳なさそうに言う。
「ええ、分ったわ。それじゃまた明日ね。」
ヒルダはスクールカバンを背負い、マドレーヌに手を振ると教室を出て行った。
昇降口を抜けて正門へ行こうとしたときに、突然女子生徒の声が聞こえてきた。
「あ、あの・・ルドルフさん・・。」
(え?ルドルフ?)
ヒルダは慌てて廊下の壁に隠れて、そっと様子を伺うとそこにはルドルフと見慣れない女子生徒が立っていた。
(誰かしら・・見たことがない女生徒だわ・・?)
女子生徒は顔を真っ赤にするとルドルフに言った。
「あ、あの・・・私、貴方が好きですっ!付き合って下さい!」
「・・・。」
(ルドルフが・・・告白されてる・・。)
すると・・・。
「ごめん。君の気持には答えられないんだ。僕には・・・好きな人がいるから。」
そしてルドルフは頭を下げた。
「う・・・。」
女子生徒は涙ぐむと、そのまま走り去って行ってしまった。
そんな様子をヒルダはドキドキしながら見ていた。
(どうしよう・・・・見てはいけないものを見てしまったわ・・・。)
しかし・・・・。
ヒルダは思った。
(やっぱり・・ルドルフは・・好きな人がいたのね・・・・。きっと相手はグレースさんなんでしょうね・・。)
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