嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

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第7章 5 オリエンテーリング ②

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(マイク・・・またヒルダ様に近付いているな・・。)

ルドルフはマイクをじっと見ていると、意外な事にマイクがルドルフの方へとやって来た。

「おはよう、ルドルフ。さわやかな朝だね。天気もいいし・・まさに絶好のオリエンテーリング日和だと思わないかい?」

白々しい態度で接して来るマイクにルドルフは警戒心を露わに返事をする。

「ああ・・そうだね。今日は本当にオリエンテーリング日和だね。」

「ルドルフ・・・君はさっきの僕とヒルダの様子を見ていたんだろう?どうしてそんなにヒルダの事を気にしているのかな?」

「それは君が嫌がる彼女にしつこく付きまとっているからだよ。クラス委員長としてはどうかと思うけどね。」

ルドルフはフイと視線を逸らすと、特進クラスの集合場所へと歩いて行った。そんな後ろ姿を見つめながらマイクは呟いた。

「ルドルフ・・・君がどこからやって来たのか僕が知らないとでも思っているんだろうね・・。だけど僕は知っているんだよ。君とヒルダが同じ西部の出身だって事が・・。」

何故2人が知らない者同士の振りをしているのかマイクには分からないが、そこには何か大きな理由があるに違いない、いつか必ず2人の秘密を暴いてやろうとマイクは心に決めていた―。


 セロニア学園高等学校の2年生を乗せた蒸気船は離れ小島『ニトル』へ向けて内海を進んでいた。生徒達の大半はデッキに出て美しい海を眺めていたが、ヒルダとマドレーヌは船内のベンチに座って話をしていた。

「ねえ、ヒルダは今までに蒸気船に乗った事はあるの?」

「ええ。これで3回目だわ。」

「まあ、そうだったの。実は私は初めてなのよ。」

「え?そうだったの?」

ヒルダは少し驚いた。マドレーヌの家は裕福である。てっきりマイクのように小島に別荘を所有し、『ロータス』と別荘を何度も行き来していただろうと勝手に思い込んでいたのだ。

「うちはね、商売人でしょう?お店を経営しているから、まとまったお休みを取るわけにはいかないのよ。だから当然家族で旅行にも行った事が無いしね。」

少し寂し気にマドレーヌは言う。

「そうだったの・・・。」

その時、話しをしている2人の前にマイクが姿を現した。

「ヒルダ、少し2人きりで話がしたいんだけど・・・。いいかな?」

マイクはニコニコしながら話しかけて来る。

「マイク・・・。」

ヒルダは警戒心を露わにマイクを見た。

「あら、何よ。マイク。今私たちは2人で話をしているのよ。貴方は、向こうへ行っていてくれない?」

マドレーヌはマイクを一瞥すると言った。しかし、マイクはそれだけでは動じない。

「それは無理な話だよ。だってこれから僕はヒルダにオリエンテーリングについての説明をする為にここへ来たんだから。だって現地に着いたらすぐに明日のコースの下見をするから今しか説明する時間が取れないんだよ。」

それを聞いたヒルダが言う。

「その事なんだけど・・・マイク。私は足が思うように動かせないから・・コースの内容によっては参加は無理だと思うの。今更こんな事を言ってマイクには悪いと思っているわ。」

するとマイクが言った。

「それなら大丈夫。僕が事前に先生に相談して、僕とヒルダだけは他の人達とは違うコースに変えさせて貰ったんだよ?だから僕達だけの打ち合わせが必要なのさ。」

マイクは無邪気に笑いながら言うが、ヒルダの心は不安で揺れるのだった―。



 

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