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第5章 8 ヒルダの夏休み ⑧
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エドガーが『ロータス』に滞在中、ヒルダとエドガーは朝から夜まで一緒に過ごしていた。エドガーはホテルで朝食を取り終えると、ヒルダの住むアパートメントを訪れた。その後、2人は一緒に出掛けた。まず初めにヒルダが連れて行ったのは自分のアルバイト先の診療所だった。そこでアレンを紹介し、エドガーはヒルダをアルバイトに雇ってくれたことに感謝を述べた。そしてこれからもヒルダの事をお願いしますと頭を下げたのだった。
次に2人は初めてバスに乗った。『ロータス』の市街地を走るバスに乗り、牧場で降りたヒルダ達は牛の乳しぼり体験や、新鮮なミルクやチーズを味わった。
翌日は観光船に乗って前回とは違う島に行った。その島は小さな無人島で真っ白な砂浜に、エメラルドグリーンのそれは美しい海だった。そこで2人は貝殻を拾ったり、ヤシの実のジュースを味わったりと楽しい時間を過ごした。
そしてあっという間に時は流れた―。
夜7時―
カミラに今夜は兄妹水入らずで外食してきてくださいと言われ、今2人は港の見えるレストランへと来ていた。そこはフランシスの両親が経営するレストランだった。
ヒルダとエドガーは窓際の、夜の港が一望できる席に座りシーフード料理を味わっていた。
「うん。ここのシュリンプはとても美味しいな。」
エドガーは満足そうに言いながら窓の景色を眺めた。
「はい、とても美味しですね。」
ヒルダはシーフードパスタを食べている。
「それにしてもやはり、たった2日の滞在は・・・短すぎるな。」
エドガーは溜息をつきながら言う。
「お兄様・・・。」
「普段の俺は学校と、領主になる為の勉強・・・それにもう一部の父の仕事は俺が引き受けているんだ。毎日がとても忙しくて・・・ゆっくり過ごす時間も取れないんだ。」
普段、弱みを見せないエドガーからは信じられない言葉が出てきたのでヒルダは正直驚いていた。
「お兄様・・・。」
「父には内緒でここ、『ロータス』に来ているのだが・・・。」
そしてヒルダを見ると言った。
「ヒルダと過ごす時間は・・・とても幸せを感じるよ。出来れば・・こんな形では会いたくなかったな。もっと早く・・・別の形で出会っていれば・・。」
「お兄様・・・。」
ヒルダはフォークを置くと、テーブルの上に乗せたエドガーの手に自分の手を重ねると言った。
「でも、私たちはこうして出会うことが出来ました。お兄様は離れていても、私の事を気にかけてくれて・・会いに来て下さって感謝しています。私は・・・自分の故郷では・・皆から嫌われているのに・・・。」
するとエドガーはヒルダの手を握りしめると言った。
「いや、そんなことは無い。ヒルダ。『カウベリー』にいる母はヒルダの事が大好きだし、俺もそうだ。それに俺だけじゃなく他にも・・・。」
そこで何か言いかけたエドガーは、口を閉ざした。
「お兄様・・・・?」
ヒルダは首を傾げた。
「い、いや・・何でもない。そろそろ食事も食べ終えた頃だし・・出ようか?」
「はい、そうですね。」
エドガーはヒルダに手を差し伸べ、ヒルダはその手につかまると立ち上がった。
店を出た2人は夜の街を歩いていた。その道すがら、ヒルダに言う。
「ヒルダ、明日の朝は早く出発しなくてはならないんだ。だから見送りに来なくていいからな。」
「お兄様、ですが・・・。」
ヒルダは顔を上げ、エドガーを見た。するとエドガーは優しい笑みを浮かべて言う。
「ヒルダと過ごした3日間・・・とても楽しかったよ。おかげで母に良い土産話を聞かせる事が出来るよ。」
「お兄様・・・。」
そこでエドガーは足を止めた。いつの間にか、2人はヒルダの住むアパートメントの前に着いていたのだ。エドガーはヒルダに言った。
「ヒルダ。俺の口から・・・詳しい事は言えないが新学期・・クラス分けテストがあるだろう?頑張って特別進学クラスに入れるように勉強頑張れよ?きっと・・良い事が起こるから。」
エドガーは意味深な事を言う。
「は、はい・・・分かりました。」
ヒルダは首を傾げながらも返事をする。そんなヒルダを見つめながらエドガーは言った。
「ヒルダ・・・一度でいいから・・・笑ってみてくれないか?」
「え・・?わ、分かりました。」
そして・・・ヒルダは笑みを浮かべた。それは・・心からの笑みでは無かったが、自然に微笑むことが出来た。
「・・・!」
それを見たエドガーは一瞬苦し気に顔を歪めると、ヒルダを自分に引き寄せると、強く抱きしめ、言った。
「さよなら。ヒルダ・・・元気でな・・・。」
「え・・?お兄様・・・?」
エドガーはすぐにヒルダから離れると言った。
「じゃあな、お休み。ヒルダ。」
そしてエドガーは身を翻すと自分の滞在先のホテルへと走って行く。
(ヒルダ・・・本当は俺・・・兄としてではなく、1人の男として・・・お前の事が大好きだったよ・・・。)
だが、それは決して叶わぬ思い。エドガーはフィールズ家の跡取り息子として養子となったのだ。一方のヒルダはフィールズ家から縁を切られてしまった身なので絶対に父の許しを得る事は出来ない。そして最後の理由は・・・エドガーは『カウベリー』に戻れば・・正式に見合いをした伯爵令嬢と婚約を結ぶ事が決定していた。
婚約が決定すれば、それこそ身動きが取れない身となってしまう。だから・・最後に愛するヒルダに会っておきたかったのだ。
翌朝―
エドガーはヒルダへの思いを捨て、『カウベリー』へと帰って行った―。
次に2人は初めてバスに乗った。『ロータス』の市街地を走るバスに乗り、牧場で降りたヒルダ達は牛の乳しぼり体験や、新鮮なミルクやチーズを味わった。
翌日は観光船に乗って前回とは違う島に行った。その島は小さな無人島で真っ白な砂浜に、エメラルドグリーンのそれは美しい海だった。そこで2人は貝殻を拾ったり、ヤシの実のジュースを味わったりと楽しい時間を過ごした。
そしてあっという間に時は流れた―。
夜7時―
カミラに今夜は兄妹水入らずで外食してきてくださいと言われ、今2人は港の見えるレストランへと来ていた。そこはフランシスの両親が経営するレストランだった。
ヒルダとエドガーは窓際の、夜の港が一望できる席に座りシーフード料理を味わっていた。
「うん。ここのシュリンプはとても美味しいな。」
エドガーは満足そうに言いながら窓の景色を眺めた。
「はい、とても美味しですね。」
ヒルダはシーフードパスタを食べている。
「それにしてもやはり、たった2日の滞在は・・・短すぎるな。」
エドガーは溜息をつきながら言う。
「お兄様・・・。」
「普段の俺は学校と、領主になる為の勉強・・・それにもう一部の父の仕事は俺が引き受けているんだ。毎日がとても忙しくて・・・ゆっくり過ごす時間も取れないんだ。」
普段、弱みを見せないエドガーからは信じられない言葉が出てきたのでヒルダは正直驚いていた。
「お兄様・・・。」
「父には内緒でここ、『ロータス』に来ているのだが・・・。」
そしてヒルダを見ると言った。
「ヒルダと過ごす時間は・・・とても幸せを感じるよ。出来れば・・こんな形では会いたくなかったな。もっと早く・・・別の形で出会っていれば・・。」
「お兄様・・・。」
ヒルダはフォークを置くと、テーブルの上に乗せたエドガーの手に自分の手を重ねると言った。
「でも、私たちはこうして出会うことが出来ました。お兄様は離れていても、私の事を気にかけてくれて・・会いに来て下さって感謝しています。私は・・・自分の故郷では・・皆から嫌われているのに・・・。」
するとエドガーはヒルダの手を握りしめると言った。
「いや、そんなことは無い。ヒルダ。『カウベリー』にいる母はヒルダの事が大好きだし、俺もそうだ。それに俺だけじゃなく他にも・・・。」
そこで何か言いかけたエドガーは、口を閉ざした。
「お兄様・・・・?」
ヒルダは首を傾げた。
「い、いや・・何でもない。そろそろ食事も食べ終えた頃だし・・出ようか?」
「はい、そうですね。」
エドガーはヒルダに手を差し伸べ、ヒルダはその手につかまると立ち上がった。
店を出た2人は夜の街を歩いていた。その道すがら、ヒルダに言う。
「ヒルダ、明日の朝は早く出発しなくてはならないんだ。だから見送りに来なくていいからな。」
「お兄様、ですが・・・。」
ヒルダは顔を上げ、エドガーを見た。するとエドガーは優しい笑みを浮かべて言う。
「ヒルダと過ごした3日間・・・とても楽しかったよ。おかげで母に良い土産話を聞かせる事が出来るよ。」
「お兄様・・・。」
そこでエドガーは足を止めた。いつの間にか、2人はヒルダの住むアパートメントの前に着いていたのだ。エドガーはヒルダに言った。
「ヒルダ。俺の口から・・・詳しい事は言えないが新学期・・クラス分けテストがあるだろう?頑張って特別進学クラスに入れるように勉強頑張れよ?きっと・・良い事が起こるから。」
エドガーは意味深な事を言う。
「は、はい・・・分かりました。」
ヒルダは首を傾げながらも返事をする。そんなヒルダを見つめながらエドガーは言った。
「ヒルダ・・・一度でいいから・・・笑ってみてくれないか?」
「え・・?わ、分かりました。」
そして・・・ヒルダは笑みを浮かべた。それは・・心からの笑みでは無かったが、自然に微笑むことが出来た。
「・・・!」
それを見たエドガーは一瞬苦し気に顔を歪めると、ヒルダを自分に引き寄せると、強く抱きしめ、言った。
「さよなら。ヒルダ・・・元気でな・・・。」
「え・・?お兄様・・・?」
エドガーはすぐにヒルダから離れると言った。
「じゃあな、お休み。ヒルダ。」
そしてエドガーは身を翻すと自分の滞在先のホテルへと走って行く。
(ヒルダ・・・本当は俺・・・兄としてではなく、1人の男として・・・お前の事が大好きだったよ・・・。)
だが、それは決して叶わぬ思い。エドガーはフィールズ家の跡取り息子として養子となったのだ。一方のヒルダはフィールズ家から縁を切られてしまった身なので絶対に父の許しを得る事は出来ない。そして最後の理由は・・・エドガーは『カウベリー』に戻れば・・正式に見合いをした伯爵令嬢と婚約を結ぶ事が決定していた。
婚約が決定すれば、それこそ身動きが取れない身となってしまう。だから・・最後に愛するヒルダに会っておきたかったのだ。
翌朝―
エドガーはヒルダへの思いを捨て、『カウベリー』へと帰って行った―。
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