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第5章 6 ヒルダの夏休み ⑥
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ザザーン・・
ザザーン・・
波の打ち寄せる音が部屋の中に響き渡っている。
ここはマイクの別荘の一室でヒルダ達にあてがわれた客室である。大きなベッドを3台並べてもまだ余裕の広さがある客室だ。部屋は大きなアーチ形の窓があり、そこからはバルコニーに出られる。今は夜で空には満点の星が輝いている。
今、ヒルダとステラ、エミリーは部屋の中でアルコールランプを囲んで話しをしていた。
「ヒルダ。マイクは・・・危険だわ。なるべく1人にならない方がいいわ。」
ネグリジェを着たステラが真面目な顔でヒルダに言う。
「ええ。私もそう思う。ヒルダ、この別荘にいる間は・・・常に私たちと一緒にいた方がいいわ。」
ノースリーブのナイティを着たエミリーもステラの意見に同意する。
「そうね・・・。今日のマイク・・・何だか様子がおかしかったわ。」
ステラと同様、パフスリーブのネグリジェを着たヒルダがマイクに掴まれた右手首をさすりながらポツリと言った。
「ごめんね・・・ヒルダ。もっと早くに忠告しておけば良かったわ・・・。痛かったでしょう?」
ステラはヒルダの右手を取ると言った。
「大丈夫、掴まれた時は痛かったけど、今は痛くないわ。」
「それにしても・・・マイクって、もっと紳士的だと思ったけど・・ヒルダの手首を乱暴につかむなんて・・酷いわ。もう見損なったわよ。」
エミリーは腕組みをすると、ツンとした声で言う。
「実はね・・今日フランシスとヒルダが浜辺で話をしていた時・・・マイクったらすごく怖い顔で睨んでいたのよ?あれは・・絶対にフランシスに嫉妬していたに違いないわ。」
ステラは小声で言う。
「え・・?そんなことがあったの?」
ヒルダはステラに尋ねた。
「ええ、そうよ。とにかく、明日からはずっと私たちと一緒に行動するのよ?マイクが近づけないようにしてあげるからね?」
ステラの言葉にヒルダは頷くのだった。
そして、それから別荘に滞在中の2日間・・本当にステラとエミリーは始終ヒルダの傍から離れることは無かった。3人は常に一緒で行動した。
そして、明日は『ロータス』へ帰る最終日の夜―
フランシスとマイクは青いカーペットが敷かれた広々とした部屋で思い思いに過ごしていた。この部屋はフランシスとマイクの2人で使用している客室である。
「なあ・・あの3人ていつもべったりだよな?」
夜、部屋でベッドの上で寝そべりながら本をパラパラとめくっていたフランシスがマイクに言った。
「ああ・・・そうだね。」
マイクは机に向かって何か書き物をしている。
「マイク・・・お前、さっきから一体何書いてるんだ?」
フランシスは読んでいた本から顔を上げると尋ねた。
「日記を書いているんだよ。」
「へえ~どんな事を書いているんだ?見せてくれよ。」
「あのねえ・・どうして自分の日記を他の人に見せなくちゃならないんだよ・・・。駄目に決まっているだろう?」
マイクは溜息をつきながら言う。
「ふ~ん・・そうか・・・。」
そして再び、フランシスは本を読み始めた。その様子を見ながらマイクは思う。
(フン・・・・せいぜい、そうやってのんびりしていればいいさ。9月には僕たちは2年生になる。2年生になれば一般クラスと特別進学クラスに分かれるクラス編成が行われるんだ。おそらく特別進学クラスに入れるのはこの中では僕とヒルダだけだろう。そしたらフランシス達ともクラスが離れる事になるんだ・・・・。そうなると僕とヒルダの邪魔をするものは誰もいなくなるんだから・・・。)
そしてマイクは夜空を見上げると思った。
早く新学期になって欲しいと―。
ザザーン・・
波の打ち寄せる音が部屋の中に響き渡っている。
ここはマイクの別荘の一室でヒルダ達にあてがわれた客室である。大きなベッドを3台並べてもまだ余裕の広さがある客室だ。部屋は大きなアーチ形の窓があり、そこからはバルコニーに出られる。今は夜で空には満点の星が輝いている。
今、ヒルダとステラ、エミリーは部屋の中でアルコールランプを囲んで話しをしていた。
「ヒルダ。マイクは・・・危険だわ。なるべく1人にならない方がいいわ。」
ネグリジェを着たステラが真面目な顔でヒルダに言う。
「ええ。私もそう思う。ヒルダ、この別荘にいる間は・・・常に私たちと一緒にいた方がいいわ。」
ノースリーブのナイティを着たエミリーもステラの意見に同意する。
「そうね・・・。今日のマイク・・・何だか様子がおかしかったわ。」
ステラと同様、パフスリーブのネグリジェを着たヒルダがマイクに掴まれた右手首をさすりながらポツリと言った。
「ごめんね・・・ヒルダ。もっと早くに忠告しておけば良かったわ・・・。痛かったでしょう?」
ステラはヒルダの右手を取ると言った。
「大丈夫、掴まれた時は痛かったけど、今は痛くないわ。」
「それにしても・・・マイクって、もっと紳士的だと思ったけど・・ヒルダの手首を乱暴につかむなんて・・酷いわ。もう見損なったわよ。」
エミリーは腕組みをすると、ツンとした声で言う。
「実はね・・今日フランシスとヒルダが浜辺で話をしていた時・・・マイクったらすごく怖い顔で睨んでいたのよ?あれは・・絶対にフランシスに嫉妬していたに違いないわ。」
ステラは小声で言う。
「え・・?そんなことがあったの?」
ヒルダはステラに尋ねた。
「ええ、そうよ。とにかく、明日からはずっと私たちと一緒に行動するのよ?マイクが近づけないようにしてあげるからね?」
ステラの言葉にヒルダは頷くのだった。
そして、それから別荘に滞在中の2日間・・本当にステラとエミリーは始終ヒルダの傍から離れることは無かった。3人は常に一緒で行動した。
そして、明日は『ロータス』へ帰る最終日の夜―
フランシスとマイクは青いカーペットが敷かれた広々とした部屋で思い思いに過ごしていた。この部屋はフランシスとマイクの2人で使用している客室である。
「なあ・・あの3人ていつもべったりだよな?」
夜、部屋でベッドの上で寝そべりながら本をパラパラとめくっていたフランシスがマイクに言った。
「ああ・・・そうだね。」
マイクは机に向かって何か書き物をしている。
「マイク・・・お前、さっきから一体何書いてるんだ?」
フランシスは読んでいた本から顔を上げると尋ねた。
「日記を書いているんだよ。」
「へえ~どんな事を書いているんだ?見せてくれよ。」
「あのねえ・・どうして自分の日記を他の人に見せなくちゃならないんだよ・・・。駄目に決まっているだろう?」
マイクは溜息をつきながら言う。
「ふ~ん・・そうか・・・。」
そして再び、フランシスは本を読み始めた。その様子を見ながらマイクは思う。
(フン・・・・せいぜい、そうやってのんびりしていればいいさ。9月には僕たちは2年生になる。2年生になれば一般クラスと特別進学クラスに分かれるクラス編成が行われるんだ。おそらく特別進学クラスに入れるのはこの中では僕とヒルダだけだろう。そしたらフランシス達ともクラスが離れる事になるんだ・・・・。そうなると僕とヒルダの邪魔をするものは誰もいなくなるんだから・・・。)
そしてマイクは夜空を見上げると思った。
早く新学期になって欲しいと―。
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