嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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3章 8 2人からの誘い

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 放課後までヒルダはずっと左足にアレンが用意してくれた温シップを当てていたおかげで、寒さでこわばっていた足の状態は大分楽になっていた。

授業終了のチャイムが鳴るとヒルダは言った。

「アレン先生、お世話になりました。先生が本日当番医だったおかげで私の足の具合もすっかり良くなりました。」

「しかし完全に良くなったとは言い難い。ヒルダ、私も帰るからついでに家まで送ってやろうか?」

「いえ、大丈夫です。それにアレン先生。1人の生徒だけを特別扱いするのは良くないと思います。」

ヒルダの冷静な言葉にアレンは言葉を失った。

「確かにそうかもしれないが・・。」

しかし、アレンはヒルダだけを特別扱いしているつもりは毛頭なかった。ただヒルダは自分の昔の姿とかぶってしまい、つい過剰に同情してしまった事は認める。

「私は歩いて帰れます。それにリハビリが必要とおっしゃったのはアレン先生ですよ?」

その時、ノックの音と同時にドアが開けられた。

「ヒルダ。」

そこに立っていたのはマイクだった。

「あらマイク。どうしたの?」

「いや、ヒルダのカバンとコートを持ってきたのさ。」

「あ・・・どうもありがとう。」

「僕はクラス委員長だからね。当然の事さ。はい、コートだよ。」

マイクはヒルダにコートを手渡すと言った。

「廊下も寒いからね。すぐにコートを着た方がいいよ。」

「ええ、そうね。」

言われたヒルダはコートを着た。その様子を黙って見つめていたアレン。するとふいにマイクが振り向き、アレンを見るとニヤリと笑った。それはどこか挑発的な笑みだった。

(!なんだ・・・?あの少年の態度は・・?)

アレンもマイクを見ると、すぐにマイクは視線をそらしてヒルダに話しかけた。

「ヒルダ、家まで送るよ。さあ、一緒に帰ろう。」

「いえ、大丈夫よ。」

ヒルダはにべもなく断った。

「!」

(この僕の誘いを断るなんて・・っ!)

マイクが下唇を悔しそうに噛むのをアレンは見逃さなかった。

(そうか・・・あの少年はヒルダに気があるから・・俺の事を目の敵の様に見ていたのか・・。)

「だけど、ヒルダ。あんな寒い地下倉庫に1時間近くも過ごしていたんだよ?僕が君を見つけなければ最悪どうなっていたか・・・。」

「ええ、それについては感謝しているわ。だけど私は足のリハビリの為にも歩きたいのよ。気持ちだけ受け取っておくわ。カバンも持ってきてくれてありがとう。」

そしてヒルダは立ち上がるとアレンの方を向いた。

「アレン先生、今日はお世話になりました。」

「ああ。気にすることはない。家に帰ったら足のマッサージをするんだぞ?」

「はい、分かりました。」

ヒルダは頭を下げると保健室を出て行った。

「あ!待ってよ、ヒルダッ!」

置いてけぼりを食らったマイクは慌ててヒルダの後を追った。そしてなおもヒルダに声を掛ける。

「ねえ、ヒルダ。本当に遠慮することはないんだよ。馬車は楽だし、快適だ。何も苦労して歩く必要は・・・!」

そこまで言いかけてマイクは息を飲んだ。ヒルダが何とも言えない悲し気な表情で、マイクを見つめていたからだ。

「な、何・・?ヒルダ・・・。」

「マイク。今はご両親がいらっしゃるからいいかもしれないけど・・いざ頼れる親がいなくなった場合・・・苦労するのは自分なのよ?だから・・あまり楽な生き方をしない方が・・自分の為になると私は思うのよ。」

「ヒ、ヒルダ・・・。」

マイクは思いがけない言葉を投げつけられて言葉がうまく見つからなかった。ヒルダはそんなマイクを見ると言った。

「さよなら、マイク。またね。」

そして背を向けて足を引き釣りながらゆっくりと歩き去って行った。


「・・・。」

1人残されたマイクは少しの間、茫然としていた。

(今の物言い・・・。間違いない、ヒルダは・・・絶対過去に何かがあったんだ。そうでなければあんな言葉がでてくるはずがない・・・!)

「ヒルダ・・・僕はますます君に興味がわいてきたよ・・・。」

そして笑みを浮かべた―。
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