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2章 15 ヒルダと2人のクラスメイト
しおりを挟む 夕方4時半
ヒルダは薪ストーブの上にかけてある鍋の蓋を開けた。すると途端に鍋の中からはコンソメのおいしそうな香りが漂う。
今夜の食事はロールキャベツ。ヒルダが初めて挑戦する料理だった。
「良い具合に煮えているけど・・味はどうかしら?」
ヒルダはおたまでスープをすくって小皿に取り分けると、味見をした。
お肉の味とコンソメに野菜の出しがよく効いている。
「おいしい・・・。フフ・・最近料理が楽しくなってきたわ・・・・。」
ヒルダは本棚に並んでいるレシピ本を見た。今ヒルダはお菓子作りの本とパン作りの本、そして家庭向け料理の本を持っている。
「今度本屋さんへ行って新しいレシピ本を買いに行こうかしら。」
その時。
コンコン
玄関でドアノッカーが叩かれる音が聞こえた。
「あ・・・もしかして今日もステラさんが来たのかしら・・・。」
足を引きずりながら玄関まで向かうとヒルダはドアを開けた。
「こんにちは、ヒルダさん!」
やはりそこに立っていたのはステラだった。コートにマフラー、帽子をかぶったステラは白い息を吐きながら、興奮気味に言った。
「聞いて、ヒルダさんっ!明日からヒルダさんは学校へ行ってもいいのよ。謹慎処分が解けたのっ!」
「え・・?どうして・・・・?」
ヒルダは訳が分からずに首をかしげると、ステラの背後からフランシスが顔をのぞかせると言った。
「アデルの財布を盗んだ本当の犯人が分かったんだよっ!」
「え?ランドルフさん?」
ヒルダはまさかフランシスまで一緒に来ているとは思わずに驚いた。
フランシスはヒルダに言った。
「ヒルダ。犯人はダフネだったんだ。そしてダフネは他の3人の女子生徒たちからアデルの財布を盗んだ事がバレて、脅迫されていたんだよ。そしてダフネを含め、その3人が今度は謹慎処分になったのさ。」
「そ、そうだったの・・・?」
ヒルダは急展開でついていけなかった。
「だからヒルダさん。明日からまた登校していいのよ?私がそれを伝えに来たの。」
ステラは嬉しそうに言う。
「俺だって来てるぞ?」
フランシスはステラばかり目立つのが気に入らず、思わず張り合う。
「はい、ヒルダさん。これ、今日の分のノート。」
ステラはいつものようにヒルダにノートを差し出してくる。
「ありがとう・・・ステラさん。」
ヒルダは礼を言って受け取ると、ステラはモジモジしながら言う。
「い、いいの・・・。お礼なんか。だって・・・わ、私ヒルダさんの役に立ちたいから・・・。」
「・・・。」
ヒルダはステラの言葉に驚いたが、少しだけ口元に笑みを浮かべると言った。
「ありがとう。ステラさん。」
「「!」」
ステラとフランシスは初めて少しだけヒルダが笑みを浮かべた姿を見て、思わず顔が真っ赤になってしまった。
(うわあ・・・やっぱりヒルダさんて・・美人・・・。)
一方のフランシスは感動して頭の中で叫んでいた。
(ウオオオッ!ヒルダが・・・ほんの少しだけ・・俺の為に笑ってくれたっ!もう今夜は感動して眠れないかもしれない・・・っ!)
フランシスはヒルダが自分の為だけに微笑んでくれたのだと、すっかり自惚れてしまった。
「そ、それじゃ私たちもう帰るわね。また明日学校で会いましょう?ほら、帰るわよ。フランシス。」
ステラはフランシスの背中を押した。
「ええっ?!もう帰るのかっ?!」
フランシスは名残惜しそうにヒルダを見ながら言う。
「ええ、当然でしょう?御者の人を寒空の下でいつまでも待たせていたら迷惑でしょう?そうよね?ヒルダさん。」
「ええ、そうね。」
ヒルダは頷くと尋ねた。
「2人は同じ馬車でここまで来たの?」
「ええ、そうよ。」
「ああ。」
ステラとフランシスは同時に答えるとヒルダは言った。
「そう、2人はとても仲がいいのね。」
「え?まさかっ!」
「そ、そうだっ!俺とステラは単なるクラスメイトだ!」
ステラとフランシスは全力でそれを否定する。しかし、ヒルダの目から見ると2人はとても仲が良いように見えた。
「それじゃ、また明日ねっ!」
「ヒルダ・・ま、また明日・・。」
「ええ、さよなら。」
ヒルダはステラとフランシスに手を振ると、玄関のドアは閉められて途端に部屋の中は静かになった。
「明日からまた登校できるのね・・・。」
そしてヒルダはリビングへと戻って行った―。
ヒルダは薪ストーブの上にかけてある鍋の蓋を開けた。すると途端に鍋の中からはコンソメのおいしそうな香りが漂う。
今夜の食事はロールキャベツ。ヒルダが初めて挑戦する料理だった。
「良い具合に煮えているけど・・味はどうかしら?」
ヒルダはおたまでスープをすくって小皿に取り分けると、味見をした。
お肉の味とコンソメに野菜の出しがよく効いている。
「おいしい・・・。フフ・・最近料理が楽しくなってきたわ・・・・。」
ヒルダは本棚に並んでいるレシピ本を見た。今ヒルダはお菓子作りの本とパン作りの本、そして家庭向け料理の本を持っている。
「今度本屋さんへ行って新しいレシピ本を買いに行こうかしら。」
その時。
コンコン
玄関でドアノッカーが叩かれる音が聞こえた。
「あ・・・もしかして今日もステラさんが来たのかしら・・・。」
足を引きずりながら玄関まで向かうとヒルダはドアを開けた。
「こんにちは、ヒルダさん!」
やはりそこに立っていたのはステラだった。コートにマフラー、帽子をかぶったステラは白い息を吐きながら、興奮気味に言った。
「聞いて、ヒルダさんっ!明日からヒルダさんは学校へ行ってもいいのよ。謹慎処分が解けたのっ!」
「え・・?どうして・・・・?」
ヒルダは訳が分からずに首をかしげると、ステラの背後からフランシスが顔をのぞかせると言った。
「アデルの財布を盗んだ本当の犯人が分かったんだよっ!」
「え?ランドルフさん?」
ヒルダはまさかフランシスまで一緒に来ているとは思わずに驚いた。
フランシスはヒルダに言った。
「ヒルダ。犯人はダフネだったんだ。そしてダフネは他の3人の女子生徒たちからアデルの財布を盗んだ事がバレて、脅迫されていたんだよ。そしてダフネを含め、その3人が今度は謹慎処分になったのさ。」
「そ、そうだったの・・・?」
ヒルダは急展開でついていけなかった。
「だからヒルダさん。明日からまた登校していいのよ?私がそれを伝えに来たの。」
ステラは嬉しそうに言う。
「俺だって来てるぞ?」
フランシスはステラばかり目立つのが気に入らず、思わず張り合う。
「はい、ヒルダさん。これ、今日の分のノート。」
ステラはいつものようにヒルダにノートを差し出してくる。
「ありがとう・・・ステラさん。」
ヒルダは礼を言って受け取ると、ステラはモジモジしながら言う。
「い、いいの・・・。お礼なんか。だって・・・わ、私ヒルダさんの役に立ちたいから・・・。」
「・・・。」
ヒルダはステラの言葉に驚いたが、少しだけ口元に笑みを浮かべると言った。
「ありがとう。ステラさん。」
「「!」」
ステラとフランシスは初めて少しだけヒルダが笑みを浮かべた姿を見て、思わず顔が真っ赤になってしまった。
(うわあ・・・やっぱりヒルダさんて・・美人・・・。)
一方のフランシスは感動して頭の中で叫んでいた。
(ウオオオッ!ヒルダが・・・ほんの少しだけ・・俺の為に笑ってくれたっ!もう今夜は感動して眠れないかもしれない・・・っ!)
フランシスはヒルダが自分の為だけに微笑んでくれたのだと、すっかり自惚れてしまった。
「そ、それじゃ私たちもう帰るわね。また明日学校で会いましょう?ほら、帰るわよ。フランシス。」
ステラはフランシスの背中を押した。
「ええっ?!もう帰るのかっ?!」
フランシスは名残惜しそうにヒルダを見ながら言う。
「ええ、当然でしょう?御者の人を寒空の下でいつまでも待たせていたら迷惑でしょう?そうよね?ヒルダさん。」
「ええ、そうね。」
ヒルダは頷くと尋ねた。
「2人は同じ馬車でここまで来たの?」
「ええ、そうよ。」
「ああ。」
ステラとフランシスは同時に答えるとヒルダは言った。
「そう、2人はとても仲がいいのね。」
「え?まさかっ!」
「そ、そうだっ!俺とステラは単なるクラスメイトだ!」
ステラとフランシスは全力でそれを否定する。しかし、ヒルダの目から見ると2人はとても仲が良いように見えた。
「それじゃ、また明日ねっ!」
「ヒルダ・・ま、また明日・・。」
「ええ、さよなら。」
ヒルダはステラとフランシスに手を振ると、玄関のドアは閉められて途端に部屋の中は静かになった。
「明日からまた登校できるのね・・・。」
そしてヒルダはリビングへと戻って行った―。
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