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第7章 2 グレースの呼び出し
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放課後―
グレースに声を掛けられたノラ、コリン、イワン達は老朽化して今は使われていない教会に呼び集められていた。
「全く・・・グレースの奴・・自分から呼び出しておいてまだ来ていないんだから嫌になるよな。」
コリンが教会の暖炉に火をくべながら言った。
「ああ。全くだよ。暖炉が無ければ寒すぎてこんな所、いつまでもいられないぜ。」
イワンは暖炉の前に手をかざしながらブルリと震えた。
「それにしても・・・いくら使われていない教会だからって・・・勝手に鍵を壊して中へ入っちゃったけど・・大丈夫だったのかしら?」
ノラが心配そうに言うと、背後からよく響く声が聞こえてきた。
「大丈夫に決まっているでしょう?」
「「「グレースッ!!!」」」
3人は振り返ると、同時にグレースの名を呼んだ。
「ねえ、一体どういうつもりなの?私達をこんな教会に呼びつけて・・・以前なら皆でグレースの家に集まっていたじゃない?」
ノラの言葉にグレースは冷たい声で言った。
「そんな事言って・・・本当は家に来てお茶とお菓子をご馳走になりたいだけなんじゃないの?」
「そ、それは・・・!」
ノラが言葉に詰まるとコリンが言った。
「おい!そんな言い方は無いだろう?俺達は封鎖された教会に勝手に上がり込んで大丈夫なのか、そっちの方が気がかりなんだよっ!」
「へえ~その割には堂々と暖炉に火をつけているじゃないの?あなた達・・・ひょっとしてそんなに寒いの?」
見るからに上質そうな毛皮のコートに帽子、手袋。そしてムートンブーツという井出達のグレースは他の貧しい友人達の薄い上着をチラリと見た。
「寒いに決まってるだろう?グレースの格好と一緒にするなよっ!」
イワンが抗議した。するとゆっくり近づきながらグレースはイライラした口調で言った。
「私だってねえ・・・好きであなた達をここへ呼んだわけじゃ無いわよ。これも全て・・・ヒルダのせいよっ!」
「え・・?何故ヒルダのせいになるんだよ?」
コリンが首を傾げた。
「私はね・・ヒルダのせいでルドルフと同じ学校の女子部を転校初日で2週間の停学処分にされてしまったのよっ!」
グレースが吐き捨てたように言った。
「え・・・?ヒルダのせいって・・・。」
ノラはグレースが停学処分になった理由を知っていた。・・と言うか多分グレースの近所に住む人たちは彼女が何故停学処分になったのかは全員知っているはずだ。何故ならグレースの家の隣には噂好きでお喋りな独り身の中年女性が住んでいた。彼女はヒルダが通っている学校の清掃員をしており、たまたまグレースが騒ぎを起こして
校長室に呼び出されて、停学処分を言い渡された所を盗み聞きしていたのだった。
そして彼女は近所中にこの事を面白おかしく吹聴してまわり・・・結局はグレース家周辺の住民たちの誰もが知る話となってしまったのだった。
「お陰で恥ずかしくて、転校初日で私はあの学校を辞めざるを得なかったのよ?そしてまた前の学校に戻って・・・あなた達を家に招いているのをご近所さん達に見られたら恥ずかしいでしょう?だからこの廃墟に呼び出したのよ。」
グレースはノラ達を指さすと言った。
「な・・何だって?俺達といるのが恥ずかしいなら呼び出すなよっ!」
イワンが抗議するとグレースは言った。
「いいの?そんな口を叩いて・・・私達はヒルダに足を怪我させた共犯なのよ?その事をヒルダの父にばらされたいの?」
「「「!」」」
それを言われた3人は途端に驚いて口を閉ざしてしまった。そんな3人を満足げに見渡しながらグレースは言った。
「ねえ・・・あなた達・・温かい上着が欲しいと思わない?もし私のお願いを聞いてくれたら・・皆に温かい上着をプレゼントしてあげるけど・・どう?」
グレースが怖くなった3人は・・・言いなりになるしか無かった―。
グレースに声を掛けられたノラ、コリン、イワン達は老朽化して今は使われていない教会に呼び集められていた。
「全く・・・グレースの奴・・自分から呼び出しておいてまだ来ていないんだから嫌になるよな。」
コリンが教会の暖炉に火をくべながら言った。
「ああ。全くだよ。暖炉が無ければ寒すぎてこんな所、いつまでもいられないぜ。」
イワンは暖炉の前に手をかざしながらブルリと震えた。
「それにしても・・・いくら使われていない教会だからって・・・勝手に鍵を壊して中へ入っちゃったけど・・大丈夫だったのかしら?」
ノラが心配そうに言うと、背後からよく響く声が聞こえてきた。
「大丈夫に決まっているでしょう?」
「「「グレースッ!!!」」」
3人は振り返ると、同時にグレースの名を呼んだ。
「ねえ、一体どういうつもりなの?私達をこんな教会に呼びつけて・・・以前なら皆でグレースの家に集まっていたじゃない?」
ノラの言葉にグレースは冷たい声で言った。
「そんな事言って・・・本当は家に来てお茶とお菓子をご馳走になりたいだけなんじゃないの?」
「そ、それは・・・!」
ノラが言葉に詰まるとコリンが言った。
「おい!そんな言い方は無いだろう?俺達は封鎖された教会に勝手に上がり込んで大丈夫なのか、そっちの方が気がかりなんだよっ!」
「へえ~その割には堂々と暖炉に火をつけているじゃないの?あなた達・・・ひょっとしてそんなに寒いの?」
見るからに上質そうな毛皮のコートに帽子、手袋。そしてムートンブーツという井出達のグレースは他の貧しい友人達の薄い上着をチラリと見た。
「寒いに決まってるだろう?グレースの格好と一緒にするなよっ!」
イワンが抗議した。するとゆっくり近づきながらグレースはイライラした口調で言った。
「私だってねえ・・・好きであなた達をここへ呼んだわけじゃ無いわよ。これも全て・・・ヒルダのせいよっ!」
「え・・?何故ヒルダのせいになるんだよ?」
コリンが首を傾げた。
「私はね・・ヒルダのせいでルドルフと同じ学校の女子部を転校初日で2週間の停学処分にされてしまったのよっ!」
グレースが吐き捨てたように言った。
「え・・・?ヒルダのせいって・・・。」
ノラはグレースが停学処分になった理由を知っていた。・・と言うか多分グレースの近所に住む人たちは彼女が何故停学処分になったのかは全員知っているはずだ。何故ならグレースの家の隣には噂好きでお喋りな独り身の中年女性が住んでいた。彼女はヒルダが通っている学校の清掃員をしており、たまたまグレースが騒ぎを起こして
校長室に呼び出されて、停学処分を言い渡された所を盗み聞きしていたのだった。
そして彼女は近所中にこの事を面白おかしく吹聴してまわり・・・結局はグレース家周辺の住民たちの誰もが知る話となってしまったのだった。
「お陰で恥ずかしくて、転校初日で私はあの学校を辞めざるを得なかったのよ?そしてまた前の学校に戻って・・・あなた達を家に招いているのをご近所さん達に見られたら恥ずかしいでしょう?だからこの廃墟に呼び出したのよ。」
グレースはノラ達を指さすと言った。
「な・・何だって?俺達といるのが恥ずかしいなら呼び出すなよっ!」
イワンが抗議するとグレースは言った。
「いいの?そんな口を叩いて・・・私達はヒルダに足を怪我させた共犯なのよ?その事をヒルダの父にばらされたいの?」
「「「!」」」
それを言われた3人は途端に驚いて口を閉ざしてしまった。そんな3人を満足げに見渡しながらグレースは言った。
「ねえ・・・あなた達・・温かい上着が欲しいと思わない?もし私のお願いを聞いてくれたら・・皆に温かい上着をプレゼントしてあげるけど・・どう?」
グレースが怖くなった3人は・・・言いなりになるしか無かった―。
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