嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
64 / 566

第5章 12 ヒルダの気遣い

しおりを挟む
 ルドルフの言葉はヒルダの心を大きく揺さぶった。

(ルドルフ・・・どうしてそんな事を言うの・・?貴女はグレースさんの恋人なんでしょう?それとも本当は・・・私の事を好きなの・・?)

「ルドルフ・・・私は・・。」

思わず愛しいルドルフを見上げ、名まえを呼んだその時―。

「ルドルフッ!」

ヒルダの背後からグレースの声が響き渡った。

「グ、グレース・・・。」

ルドルフは狼狽しながらグレースの名を口にした。ヒルダはとっさにルドルフから離れると背を向けた。

「ルドルフ、探したわ。待ち合わせ場所に貴方がいないんだもの。約束したでしょう?これからルドルフの送り迎えは私がするって。」

ルドルフの右手をしっかり両手で握りしめながらグレースは言う。

(今のうちにここから立ち去ろう。)

ヒルダは2人に背を向けたまま立ち去ろうとした時、背後からルドルフの声が追いかけてきた。

「ヒルダ様っ!待って下さいっ!」

(お願い・・・っ!もう私の名前を呼ばないで・・・!)

ヒルダは耳を塞ぎたい気持ちを殺して、杖を突きながら足を引きずりながら歩いていく。
そしてグレースの声が風に乗って聞こえてきた。

「ルドルフ、ヒルダさんは足が不自由なのよ?彼女の事は諦めて頂戴。ヒルダさんと一緒にいると貴方まで笑い者にされてしまうわ・・・。」

グレースの言葉は事実だったが、ヒルダの心は大きく傷ついた。

(そうよ、ルドルフ。もうまともに歩くことが出来ない私は貴方にふさわしくないのよ。どうかもう私には構わないで・・・。)

そしてヒルダはスコットとシャーリーの元へ向かうと2人はまだ会話をしていた。
スコットもシャーリーも楽し気に笑いあっている。

(良かった・・・。2人は気が合ってるみたいで・・・。)

ヒルダが近づいていくと、真っ先にシャーリーが気付いた。

「ヒルダ、ジュース飲んできたの?」

「ええ、オレンジジュースを飲んできたの。美味しかったわ。」

しかし、親友のシャーリーはヒルダの元気の無い様子を察した。

「ヒルダ・・何かあったの?」

「え?そうなんですか?」

スコットが驚いた顔でヒルダを見る。

「え?ま、まさか・・・何も無かったわ。」

「本当に?ヒルダ。」

シャーリーは尚も食い下がって来るのでヒルダは笑顔で答えた。

「本当に何も無いってば。それより2人共、とても楽しそうにお話し出来たみたいで良かったわ。」

すると途端にシャーリーとスコットの頬が赤く染まった。

(え・・?この反応・・・ひょっとして・・2人は本当に・・?私は2人の事が好きだから恋人同士になってくれるといいな・・・。)

「そ、それではヒルダ様も戻られたことですし・・帰りましょうか。」

スコットは慌てたように言う。

「え・・?もういいの?2人でもっとお話ししなくても大丈夫?」

ヒルダの言葉にシャーリーとスコットは慌てたように言う。

「だ、大丈夫よ。ね?スコットさん。」

「え、ええ。そうですね、シャーリーさん。」

「そうなの・・?」

(私・・戻って来るの早すぎちゃったかしら・・・。)

その時、ヒルダにいい考えが浮かんだ。

「そうだ・・・。ねえ、シャーリー。今度の週末私の家に久しぶりに遊びに来ない?とても美味しいハーブティーがあるのよ?」

するとシャーリーが嬉しそうに言った。

「ほんとう?それじゃ久しぶりにお邪魔しようかしら?」

「ええ、是非そうして?お母様もきっと喜んでくれると思うから。」

そんな2人の会話をスコットは黙って聞いている。

「ええ、喜んでお邪魔させて頂くわね。それじゃ私もそろそろ行くわ。ヒルダ、また明日ね。そして・・・ス、スコットさんも・・。」

シャーリーは頬を少し赤らめてスコットを見た。

「はい、シャーリーさん。また明日。」

するとシャーリーは笑顔で手を振ると自分の馬車へ向かって歩き去って行った。その後ろ姿を見送りながらスコットはヒルダに声を掛けた。

「それではヒルダ様。帰りましょうか?」

「ええ、そうね。スコットさん。」

そしてヒルダは馬車に乗り込んだ。
スコットはその様子を見届けると自分も御者台に乗り、邸宅へ向けて出発させた―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。 目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。 「あなたは、どなたですか?」 その一言に、彼の瞳は壊れた。 けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。 セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。 優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。 ――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。 一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。 記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。 これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】 私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。 そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、 死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。 「でも、子供たちの心だけは、 必ず取り戻す」 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。 それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。 これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

【完結】王妃を廃した、その後は……

かずきりり
恋愛
私にはもう何もない。何もかもなくなってしまった。 地位や名誉……権力でさえ。 否、最初からそんなものを欲していたわけではないのに……。 望んだものは、ただ一つ。 ――あの人からの愛。 ただ、それだけだったというのに……。 「ラウラ! お前を廃妃とする!」 国王陛下であるホセに、いきなり告げられた言葉。 隣には妹のパウラ。 お腹には子どもが居ると言う。 何一つ持たず王城から追い出された私は…… 静かな海へと身を沈める。 唯一愛したパウラを王妃の座に座らせたホセは…… そしてパウラは…… 最期に笑うのは……? それとも……救いは誰の手にもないのか *************************** こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

処理中です...