25 / 566
第2章 9 月の夜、2人きりで
しおりを挟む
「ヒルダ様、僕が寝込んでしまっていた時・・・お見舞いに来て下さったのですか?」
ルドルフは真剣な眼つきでヒルダを見つめている。その視線が恥ずかしく、ヒルダは思わず頬が熱くなるのを感じながら答えた。
「え、ええ・・・。バスケットにお見舞いの食べ物を入れて届けに行ったの・・。でも先約がいたから・・帰って来てしまったの・・・。」
顔を赤らめながら消え入りそうな声で言うと、突然ヒルダは隣に座っていたルドルフに手を握られた。
「え?」
ヒルダは驚き、思わず顔を上げるとそこには嬉しそうに笑みを湛えたルドルフがいた。
「嬉しいです。ヒルダ様・・・僕なんかの為にお見舞いに来てくれていたなんて。でも・・結局ヒルダ様を追い返してしまった事になりましたね・・。申し訳ございませんでした。それで・・先約がいたと言われていましたが・・誰だか分かりますか?」
「え、ええ。分かるわ。亜麻色の髪の少女よ。確か・・グレースと呼ばれていたと思うけど・・・?」
「え・・?グレース・・・彼女だったのですか・・・?」
何故かそこでルドルフの顔が曇る。
「ルドルフ・・・?」
(どうしたのかしら、ルドルフ・・。)
「あ、あの・・・その時の僕達の様子・・どんなでしたか・・?」
ルドルフはヒルダの手を力を込めて握りしめて来た。
「グレースさんは・・ル、ルドルフに・・お粥の様な物を食べさせてあげていたわ・・・。」
「それで・・・ヒルダ様は帰ってしまわれたのですね・・・・?」
何故か落胆したようなルドルフの言葉はヒルダの心を浮きたたせた。
(ひょっとしてルドルフ・・・私にお見舞いに来て欲しかったの・・?)
ヒルダにはどうしても確認しておきたい事があったが、果たしてそれを告げても良いのだろうかと思い悩んでいたことがあった。でも今なら聞いても大丈夫かもしれない・・・。
「あ、あの・・それではルドルフ。お見舞いの品は・・受け取ってくれているのかしら・・・?」
ヒルダは遠慮がちに尋ねてみた。
「お見舞いの品?あの・・・一体何の事でしょうか・・?」
ルドルフはキョトンとした顔でヒルダを見た。それでヒルダは確信した。
「い、いいえ。何でも無いの。」
(間違い無いわ・・・私が置いて行ったバスケットは・・・きっとグレースさんが・・持ち去ってしまったかもしれない・・。)
「ヒルダ様・・・。」
俯いているとすぐ側でルドルフの声が聞こえ、顔を上げると至近距離でルドルフがヒルダを見つめていた。
「え・・・?な、何・・?ルドルフ・・・。」
「ヒルダ様、正直にお答えください。あの日・・・グレースが僕のお見舞いに来てくれた日の事をもう一度教えて頂けますか?」
真剣な顔つきのルドルフにヒルダは正直に話す事にした。
「実はあの日・・・料理長さんにお願いしてお料理を作って貰ってバスケットに詰めてルドルフの家に行ったの。でもグレースさんがお見舞いに来ていて・・ルドルフにお粥を食べさせているのを見てしまって・・・邪魔をしてはいけないと思って・・・バスケットを玄関の前に置いて帰ってしまったのよ。」
「そうですか・・・そんな事があったのですね?」
何故かルドルフは悲し気に言った。
「ルドルフ・・・?」
するとルドルフはヒルダの両手を取ると言った。
「ヒルダ様。どうか・・グレースの取った行動を・・お許し頂けますか・・?恐らくバスケットを何処かへやってしまったのは・・・・グレースだと思うのですが・・。きっと反省していると思うんです。ですから・・・。」
「ルドルフ・・・?」
ルドルフがグレースの代わりにヒルダに許しを乞う姿を見て思った。
(ルドルフ・・・もしかするとグレースの事が・・好きなの・・・・?)
だからヒルダはこう答えた。
「ええ、私は気にしていないから大丈夫よ。」
と―。
ルドルフは真剣な眼つきでヒルダを見つめている。その視線が恥ずかしく、ヒルダは思わず頬が熱くなるのを感じながら答えた。
「え、ええ・・・。バスケットにお見舞いの食べ物を入れて届けに行ったの・・。でも先約がいたから・・帰って来てしまったの・・・。」
顔を赤らめながら消え入りそうな声で言うと、突然ヒルダは隣に座っていたルドルフに手を握られた。
「え?」
ヒルダは驚き、思わず顔を上げるとそこには嬉しそうに笑みを湛えたルドルフがいた。
「嬉しいです。ヒルダ様・・・僕なんかの為にお見舞いに来てくれていたなんて。でも・・結局ヒルダ様を追い返してしまった事になりましたね・・。申し訳ございませんでした。それで・・先約がいたと言われていましたが・・誰だか分かりますか?」
「え、ええ。分かるわ。亜麻色の髪の少女よ。確か・・グレースと呼ばれていたと思うけど・・・?」
「え・・?グレース・・・彼女だったのですか・・・?」
何故かそこでルドルフの顔が曇る。
「ルドルフ・・・?」
(どうしたのかしら、ルドルフ・・。)
「あ、あの・・・その時の僕達の様子・・どんなでしたか・・?」
ルドルフはヒルダの手を力を込めて握りしめて来た。
「グレースさんは・・ル、ルドルフに・・お粥の様な物を食べさせてあげていたわ・・・。」
「それで・・・ヒルダ様は帰ってしまわれたのですね・・・・?」
何故か落胆したようなルドルフの言葉はヒルダの心を浮きたたせた。
(ひょっとしてルドルフ・・・私にお見舞いに来て欲しかったの・・?)
ヒルダにはどうしても確認しておきたい事があったが、果たしてそれを告げても良いのだろうかと思い悩んでいたことがあった。でも今なら聞いても大丈夫かもしれない・・・。
「あ、あの・・それではルドルフ。お見舞いの品は・・受け取ってくれているのかしら・・・?」
ヒルダは遠慮がちに尋ねてみた。
「お見舞いの品?あの・・・一体何の事でしょうか・・?」
ルドルフはキョトンとした顔でヒルダを見た。それでヒルダは確信した。
「い、いいえ。何でも無いの。」
(間違い無いわ・・・私が置いて行ったバスケットは・・・きっとグレースさんが・・持ち去ってしまったかもしれない・・。)
「ヒルダ様・・・。」
俯いているとすぐ側でルドルフの声が聞こえ、顔を上げると至近距離でルドルフがヒルダを見つめていた。
「え・・・?な、何・・?ルドルフ・・・。」
「ヒルダ様、正直にお答えください。あの日・・・グレースが僕のお見舞いに来てくれた日の事をもう一度教えて頂けますか?」
真剣な顔つきのルドルフにヒルダは正直に話す事にした。
「実はあの日・・・料理長さんにお願いしてお料理を作って貰ってバスケットに詰めてルドルフの家に行ったの。でもグレースさんがお見舞いに来ていて・・ルドルフにお粥を食べさせているのを見てしまって・・・邪魔をしてはいけないと思って・・・バスケットを玄関の前に置いて帰ってしまったのよ。」
「そうですか・・・そんな事があったのですね?」
何故かルドルフは悲し気に言った。
「ルドルフ・・・?」
するとルドルフはヒルダの両手を取ると言った。
「ヒルダ様。どうか・・グレースの取った行動を・・お許し頂けますか・・?恐らくバスケットを何処かへやってしまったのは・・・・グレースだと思うのですが・・。きっと反省していると思うんです。ですから・・・。」
「ルドルフ・・・?」
ルドルフがグレースの代わりにヒルダに許しを乞う姿を見て思った。
(ルドルフ・・・もしかするとグレースの事が・・好きなの・・・・?)
だからヒルダはこう答えた。
「ええ、私は気にしていないから大丈夫よ。」
と―。
0
お気に入りに追加
725
あなたにおすすめの小説
真実の愛とやらの結末を見せてほしい~婚約破棄された私は、愚か者たちの行く末を観察する~
キョウキョウ
恋愛
私は、イステリッジ家のエルミリア。ある日、貴族の集まる公の場で婚約を破棄された。
真実の愛とやらが存在すると言い出して、その相手は私ではないと告げる王太子。冗談なんかではなく、本気の目で。
他にも婚約を破棄する理由があると言い出して、王太子が愛している男爵令嬢をいじめたという罪を私に着せようとしてきた。そんなこと、していないのに。冤罪である。
聞くに堪えないような侮辱を受けた私は、それを理由に実家であるイステリッジ公爵家と一緒に王家を見限ることにしました。
その後、何の関係もなくなった王太子から私の元に沢山の手紙が送られてきました。しつこく、何度も。でも私は、愚かな王子と関わり合いになりたくありません。でも、興味はあります。真実の愛とやらは、どんなものなのか。
今後は遠く離れた別の国から、彼らの様子と行く末を眺めて楽しもうと思います。
そちらがどれだけ困ろうが、知ったことではありません。運命のお相手だという女性と存分に仲良くして、真実の愛の結末を、ぜひ私に見せてほしい。
※本作品は、少し前に連載していた試作の完成版です。大まかな展開は、ほぼ変わりません。加筆修正して、新たに連載します。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる