転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
83 / 108

4章15 学園の役割

しおりを挟む
「……気に入らないな」

3人で教員室へ向って歩いているとフレッドがボソリと言った。

「何が気に入らないんだ?」

セシルがフレッドに尋ねる。

「決まっているだろう? あのザカリーとかいう男だ。何だって、あいつは何かというと絡んでくるんだ? アンディならまだしも」

明らかに私に向けられている言葉ではあったが、その問いに答えることは出来なかった。
ザカリーが私の正体を知っていることは絶対にバレるわけにはいかない。

「アンディの親友だから、クラリスのことが気になるんじゃないか? そう思わないかい?」

「そ、そうね。そうかもしれないわ。」

いきなりセシルに話を振られてドキリとしたが、余計な話をするのはやめた。
秘密をバラした罪で、魔術師協会から監禁されるのだけはイヤだった。
6年間も眠り続け、目覚めれば監視下に置かれている。
これ以上自由を奪われたくはない。

「それより、どうして先生のところに行こうとしているんだい? 差し支えなければ話してもらえないかな」

セシルが話題を変えてきた。

「ロザリンとリオンの履修科目を教えてもらえないかと思って……私、あの2人と同じ授業には出たくなくて」

「頼めば教えてくれるんじゃないか?」

フレッドが返事をした。

「そうよね……、きっと教えてくれるわよね?」

私は自分自身に言い聞かせた――


****

 
 私達は魔術課の教員室へやってきた。

「いきなり訪ねて大丈夫だったかしら……」

扉の前にいざ来ると、躊躇してしまう。何しろ、私はこれから頼みにくい話をするからだ。

「何してるんだよ」

私が躊躇っていたからだろう。フレッドが前に出てくると扉をノックした。

――コンコン

『はい』

すぐに返事があり、扉が開かれると偶然にも兄が現れて怪訝そうに首を傾げた。

「クラリス……それに君たち。一体どうしたんだ?」

「クラリスが先生に話があるそうですよ」

セシルが私の代わりに返事をした。

「大事な話なのかい?」

「はい、大事な話です」

その言葉に頷くと、兄は少し考える素振りを見せて部屋から出てきた。

「なら場所を移そう」

兄がニコリと笑った――


連れてこられたのは面談室だった。
細長い机に向かい合わせに椅子が3脚ずつ置かれている。

「とりあえず座りなさい」

兄に言われ、私を真ん中に左にフレッド。右にセシルが座った。
それを見届けた兄は部屋に鍵をかけて向かい合わせに座ると、早速質問してきた。

「それで、話というのは何かな?」

「はい……あの、まずは謝らせて下さい……」

ギュッとわたしはスカートを握りしめる。

「謝る? 何のことだい?」

「あれほど、リオンに接触しないように言われていたのに……リオンと、婚約者のロザリンに関わってしまいました」

「……え? 何だって?」

その言葉に兄の眉がピクリと上がる。

「言っておくけどな、クラリスから近づいたわけじゃないからな? あれはたまたまだったんだよ」

フレッドが話に入ってきた。

「たまたま? どういうことだい?」

一瞬、兄はフレッドに視線を移すと再び私に尋ねてくる。

「それは……」

そこで私は今まであった経緯を全て説明した。
次のガイダンスへ行くために、中庭を通り抜けたところ口論をしていたロザリンとリオンに遭遇したこと。
そして盗み聞きをしたとロザリンに目をつけられてしまったことを。

「……なるほど。そんなことがあったのか……でもまさか入学早々、そんなことになるとは……」

「ですが先生。同じ大学へいるのですから、遅かれ早かれ、リオン達とクラリスが遭遇してしま可能性はありましたよね? だったら、他の大学に入学させるべきだったのでは?」

普段穏やかなセシルの口調が何処か強い。

「仕方ないよ。この大学はそういう学生を受け入れるための大学でもあるからね」

兄が肩を竦める。

「そういう学生……? 一体、どういう意味ですか?」

次の瞬間、兄の口から耳を疑うセリフが飛び出した。

「この『ニルヴァーナ』学園にはね、クラリスのように他にも禁忌魔法を使ってしまった人たちがいる。そんな彼らをまとめて管理下におく役割も果たしているんだよ」

「え……?」

その言葉は衝撃だった。これにはさすがのフレッドもセシルも驚いている。

「他にもいるって……一体誰なんだよ」

フレッドが尋ねるも兄は首を振った。

「それは流石に教えるわけにはいかない。禁忌魔法を使った人物は重要秘密事項なんだよ」

「「「……」」」

その言葉に、私達は口を閉ざすしか無かった。

「もうこの話はいいかな? それじゃ本題に入ってくれるかい?」

兄は膝を組み直し、私をじっと見つめてきた――

しおりを挟む
感想 362

あなたにおすすめの小説

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

こな
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい

廻り
恋愛
 王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。 『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。  ならばと、シャルロットは別居を始める。 『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。  夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。  それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。

処理中です...