余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
75 / 124

ヤンの章 ④ アゼリアの花に想いを寄せて

しおりを挟む
「ねぇ、ヤン」

教会を出て、緑に囲まれた坂道を歩き始めるとすぐにメロディが声を掛けて来た。

「何?」

「どうせなら家まで来ない?」

メロディが僕を見上げる。

「え?そんな…悪いからいいよ。今日は土曜日だから皆家にいるんじゃないの?」

「お父さんはいないわよ。仕事が忙しいみたいだから休みの日も会社に行ってるもの。お陰でお母さんはずっと機嫌が悪いわ。目なんかこーんな釣り上げちゃってさ」

メロディは自分の両眼の端を指で釣り上げた。

「ハハハ…ローラさんらしいね。でも忙しいのは仕方ないよ。オリバーさんは副編集長だからね。それにしてもまだ30代なのに凄いよね。尊敬するよ」

するとメロディがじっと僕を見つめている。

「な、何?」

「ううん。やっと笑ったなって思って」

「え…?」

「今日はアゼリア様の月命日だったから…お墓参りしてきたんでしょう?」

「うん…」

歩きながら話している内に僕たちはいつの間にか町中に降りて来ていた。往来を人々が行き交いし、『リンデン』の町は今日も賑わいを見せている。

「…いつまで引きずっているの?」

不意にメロディが神妙な顔つきになるとぽつりと言った。

「え?」

「だから…アゼリア様が亡くなった事…いつまで引きずっているのかって尋ねているのよ。もう10年も経ったのよ?」

「だけど…僕は…」

俯く僕にメロディは言った。

「まさか、本当にアゼリア様が亡くなったのは自分のせいだと思っているの?」

「そ、それは…だけど僕が気付いていれば…」

「だっかっらっ!」

メロディは右足を大きく踏み鳴らした。その有様に通行人達が驚いたようにこちらを見る。しかし、人々の視線をものともせずにメロディは声を荒げて僕に言う。

「ヨハン先生もカイ先生、マルセル先生にケリーさんだって…みんなみんな、ヤンのせいじゃないって言ってくれてるじゃない!私だってそう思ってる!」

「メロディ…」

「誰か1人でもヤンを責めた?どうしてアゼリア様の様子に気付かなかったんだって?何故呼びに来なかったんだって?」

「そ、それは責められてはいないけど…僕がまだ子供だったから…」

「子供とか、そんなのは関係ないわよっ!ヨハン先生が言ってたじゃない!もう既にアゼリア様は息を引き取っていたって…だからヤンのせいじゃないのよ!」

「だけど…」

「あ~全く…。男のくせにいつまでもイジイジして…よし、決めた!やっぱり今日は家でお昼ご飯食べていくのよ!」

「え?な、何でそうなるのさ?」

「お腹一杯食べれば幸せな気分になれるでしょう?そんな辛気臭い顔、こっちだって見ていたくないのよ。ほら、行くわよ!」

そしてメロディは僕の前に立って歩き出す。仕方なしに僕はその後をついて行く。

メロディはああ言ってくれているけど…それでも僕は自分を責めてしまう。

アゼリア様の寝顔がとても綺麗だったから…僕は見とれていた。人を呼ぶのも忘れて。


だって…アゼリア様は僕の初恋の人だったから―。
しおりを挟む
感想 205

あなたにおすすめの小説

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」  私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。 「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」  愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。 「――あなたは、この家に要らないのよ」  扇子で私の頬を叩くお母様。  ……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。    消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~

なか
恋愛
 私は本日、貴方と離婚します。  愛するのは、終わりだ。    ◇◇◇  アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。  初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。  しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。  それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。  この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。   レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。    全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。  彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……  この物語は、彼女の決意から三年が経ち。  離婚する日から始まっていく  戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。  ◇◇◇  設定は甘めです。  読んでくださると嬉しいです。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...