57 / 124
マルセルの章 ㉗ 君に伝えたかった言葉
しおりを挟む
何とかしてくれっ!イングリット嬢っ!君の両親が勝手に盛り上がってるぞっ?!
俺は必死になってイングリット嬢に目で訴えた。するとイングリット嬢はコクリと小さく頷く。
ひょっとして…俺の気持ちが通じたのかっ?!
「あの、お父様、お母様…それにマルセル様のお母様。少し私からお話宜しいでしょうか?」
イングリット嬢が口を開いた。
「ああ、言ってみなさい」
レイモンド氏が笑みを浮かべてイングリット嬢を見る。
「確かに、マルセル様はバーで私の事を『恋人』とおっしゃいましたけど…まだ私達は友達以上、恋人未満という関係なのです」
え?一体彼女は何を言い出すんだ?
「え?そうだったの?」
夫人が怪訝そうにイングリット嬢を見る。
「はい。何しろ私はブライアンと婚約解消したばかりで、まだ気持ちの整理もついておりませんし…いきなり結婚話なんて飛躍し過ぎだとは思いませんか?」
イングリット嬢はお茶を濁すつもりで話しているかもしれないが…そんな言い方では人によっては違う意味合いで取られてしまうのではないだろうか?
そして…俺の嫌な予感は的中する。
「うむ…確かにそうだな。少し我々は焦りすぎたかもしれん。ブライアンの顔も立てなければならないし…よし、分かった。では今後も2人は交際を続け…然るべきときが来たら結婚すれば良いだろう。ではまず仮婚約だけでも結んでおいたほうが良いな?」
「えっ?!仮婚約っ?!」
その言葉に思わず背筋が寒くなる。
「何だ?仮婚約では…不満かね?」
ジロリとこちらを見るレイモンド氏。まるで『逃げるつもりか?』と問われているような錯覚に陥ってしまう。
「はい、お父様。とりあえず仮婚約と言う形で…今は私とマルセル様をそっと見守って頂けないでしょうか?お願いします。いいですよね?マルセル様」
何故かイングリット嬢は俺に目配せしながら言う。
た、確かに…この場を逃げきるには今はこの形を取るのが最善のように思える。
「は、はい…。私からも宜しくおねがいします」
そして渋々頭を下げた―。
****
22時―
俺たちは全員で屋敷の外に出ていた。オルグレン親子の背後には馬車が既に待機している。
「いや~…それにしても有意義な時間を過ごすことが出来ました」
レイモンド氏は上機嫌だった。
「ええ、そうね。やはりハイム家に思い切ってお訪ねして良かったわ」
夫人も満足そうだった。イングリット嬢も笑みを浮かべている。
だが、俺はそうはいかない。まずい、非常にまずい…このままでは有耶無耶の内に流されて、結婚まで話を持っていかれそうだ。
きっと…イングリット嬢だって困っているに違いない。やはりイングリット譲と2人切りでじっくり話をする必要がある。
「イングリット嬢」
俺は真剣な眼差しでイングリット嬢を見た。
「は、はい」
「近い内に…必ずまた会いましょう。2人きりで…大切な話がしたいので」
「…分かりました…」
イングリット嬢は返事をした。
「おお…早速デートの申込みか」
レイモンド氏が笑みを浮かべた。
「えっ?!」
デ、デートッ?!
「嫌ですわ、お父様。からかわないで下さい」
イングリット嬢が言う。
「ええ、そうですよ。2人の事に首を突っ込むものではありません」
夫人の言葉に安堵した次の瞬間…。
「マルセル様。くれぐれもイングリットを宜しくお願いしますね?」
「は、はい…分かりました」
宜しく?宜しくって…どういう意味なんだ?
俺の背中から冷や汗が流れた。
「…」
母は先程から無言で俺を見つめているが…その視線が痛かった。
「それでは我々はこれで失礼しよう」
「ええ、そうですね」
夫妻は俺と母に挨拶してきた。
「マルセル様…ごきげんよう…」
イングリット嬢が俺を上目遣いに見た。
「え、ええ…また」
そして3人は馬車に乗って帰って行った…。
「マルセル」
馬車が走り去っていくと母が背後から声を掛けてきた。
「は、はい!」
恐る恐る母を振り返る。
「まぁ…マルセルがそれでいいなら…私からは何も言うことはないけれど…」
「…」
「せいぜい頑張りなさい。どんな結果になっても、貴方が決めることだから」
「母さん…」
「今夜は冷えるわね…中に入りましょう」
両肩を抱きかかえながら母が屋敷の中へと入って行く。
「…困ったことになった…」
夜空を見上げながら思わずポツリと呟いた―。
俺は必死になってイングリット嬢に目で訴えた。するとイングリット嬢はコクリと小さく頷く。
ひょっとして…俺の気持ちが通じたのかっ?!
「あの、お父様、お母様…それにマルセル様のお母様。少し私からお話宜しいでしょうか?」
イングリット嬢が口を開いた。
「ああ、言ってみなさい」
レイモンド氏が笑みを浮かべてイングリット嬢を見る。
「確かに、マルセル様はバーで私の事を『恋人』とおっしゃいましたけど…まだ私達は友達以上、恋人未満という関係なのです」
え?一体彼女は何を言い出すんだ?
「え?そうだったの?」
夫人が怪訝そうにイングリット嬢を見る。
「はい。何しろ私はブライアンと婚約解消したばかりで、まだ気持ちの整理もついておりませんし…いきなり結婚話なんて飛躍し過ぎだとは思いませんか?」
イングリット嬢はお茶を濁すつもりで話しているかもしれないが…そんな言い方では人によっては違う意味合いで取られてしまうのではないだろうか?
そして…俺の嫌な予感は的中する。
「うむ…確かにそうだな。少し我々は焦りすぎたかもしれん。ブライアンの顔も立てなければならないし…よし、分かった。では今後も2人は交際を続け…然るべきときが来たら結婚すれば良いだろう。ではまず仮婚約だけでも結んでおいたほうが良いな?」
「えっ?!仮婚約っ?!」
その言葉に思わず背筋が寒くなる。
「何だ?仮婚約では…不満かね?」
ジロリとこちらを見るレイモンド氏。まるで『逃げるつもりか?』と問われているような錯覚に陥ってしまう。
「はい、お父様。とりあえず仮婚約と言う形で…今は私とマルセル様をそっと見守って頂けないでしょうか?お願いします。いいですよね?マルセル様」
何故かイングリット嬢は俺に目配せしながら言う。
た、確かに…この場を逃げきるには今はこの形を取るのが最善のように思える。
「は、はい…。私からも宜しくおねがいします」
そして渋々頭を下げた―。
****
22時―
俺たちは全員で屋敷の外に出ていた。オルグレン親子の背後には馬車が既に待機している。
「いや~…それにしても有意義な時間を過ごすことが出来ました」
レイモンド氏は上機嫌だった。
「ええ、そうね。やはりハイム家に思い切ってお訪ねして良かったわ」
夫人も満足そうだった。イングリット嬢も笑みを浮かべている。
だが、俺はそうはいかない。まずい、非常にまずい…このままでは有耶無耶の内に流されて、結婚まで話を持っていかれそうだ。
きっと…イングリット嬢だって困っているに違いない。やはりイングリット譲と2人切りでじっくり話をする必要がある。
「イングリット嬢」
俺は真剣な眼差しでイングリット嬢を見た。
「は、はい」
「近い内に…必ずまた会いましょう。2人きりで…大切な話がしたいので」
「…分かりました…」
イングリット嬢は返事をした。
「おお…早速デートの申込みか」
レイモンド氏が笑みを浮かべた。
「えっ?!」
デ、デートッ?!
「嫌ですわ、お父様。からかわないで下さい」
イングリット嬢が言う。
「ええ、そうですよ。2人の事に首を突っ込むものではありません」
夫人の言葉に安堵した次の瞬間…。
「マルセル様。くれぐれもイングリットを宜しくお願いしますね?」
「は、はい…分かりました」
宜しく?宜しくって…どういう意味なんだ?
俺の背中から冷や汗が流れた。
「…」
母は先程から無言で俺を見つめているが…その視線が痛かった。
「それでは我々はこれで失礼しよう」
「ええ、そうですね」
夫妻は俺と母に挨拶してきた。
「マルセル様…ごきげんよう…」
イングリット嬢が俺を上目遣いに見た。
「え、ええ…また」
そして3人は馬車に乗って帰って行った…。
「マルセル」
馬車が走り去っていくと母が背後から声を掛けてきた。
「は、はい!」
恐る恐る母を振り返る。
「まぁ…マルセルがそれでいいなら…私からは何も言うことはないけれど…」
「…」
「せいぜい頑張りなさい。どんな結果になっても、貴方が決めることだから」
「母さん…」
「今夜は冷えるわね…中に入りましょう」
両肩を抱きかかえながら母が屋敷の中へと入って行く。
「…困ったことになった…」
夜空を見上げながら思わずポツリと呟いた―。
20
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。
秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」
私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。
「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」
愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。
「――あなたは、この家に要らないのよ」
扇子で私の頬を叩くお母様。
……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。
消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。
本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~
なか
恋愛
私は本日、貴方と離婚します。
愛するのは、終わりだ。
◇◇◇
アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。
初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。
しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。
それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。
この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。
レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。
全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。
彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……
この物語は、彼女の決意から三年が経ち。
離婚する日から始まっていく
戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。
◇◇◇
設定は甘めです。
読んでくださると嬉しいです。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる