余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
56 / 124

マルセルの章 ㉖ 君に伝えたかった言葉

しおりを挟む
 一体これはどういう状況なのだろうか…?

俺は左右に座るイングリットの両親と母を交互に見た。

「申し訳ございません。折角足を運んで頂いたのに夫のウォルターは只今『キーナ』に単身赴任中でして…」

母がオルグレン夫妻に頭を下げた。

「いいえ、どうぞ気になさらないで下さい。何しろウォルター先生と言えば、この『リンデン』の名士ではありませんか」

レイモンド氏は上機嫌で答える。

「ええ、私どもも本当に驚いているんですの。まさかイングリットがあのウォルター先生のご子息とお付きあいしていたなんて…ねぇ、あなた」

夫人がレイモンド氏に微笑みかける。

「「え?!」」

驚いたのは俺とイングリット嬢だ。慌てて隣に座るイングリット嬢を見るも、彼女は目を見開いて首を左右に振る。

「ええ…私も正直驚いております。まさかマルセルが御令嬢とお付き合いしていたなんて…何も私に報告がありませんでしたから」

母は戸惑った様子で俺を見る。いや、ちょっと待ってくれ。一番戸惑っているのはこの俺の方なのだがっ?!このままではまずい!これは誤解だと弁明しなければ。だけど…何処からが誤解なのだ?とりあえず何か言わなければ…。

「あ、あの…」

するとレイモンド氏が言った。

「きっと照れていたのでしょう…それに2人とも、もう立派な大人だ。一々交際の報告をする必要は無いと思ったのでしょう。」

「はぁ…なる程…そういうことですのね…」

言いながら母はチラリと俺を見た。

「ですので私達から動く事に致しましたの。もう適齢期ですから…そうよね?イングリット?貴女なら良く分かるわよね?その辺りの事は」

夫人はイングリット嬢を見つめながら、妙に含みをもたせた言い方をする。

「は…はい、そうです…ね…」

イングリット嬢が曖昧な返事をした。ちょっと待ってくれっ!何故、そんな誤解を招くような返事をするんだっ?!俺は驚いてイングリット嬢を見るも彼女は視線を合わせない。

「ほら、娘はよく分かっている。何しろ結婚にも適齢期があるでしょう?男性はともかく、女性ともなれば…結婚は早ければ早いほうが良いでしょう?」

「えっ?結婚ですか?」

母が驚きの声を上げる。

何っ?!け、結婚っだってっ?!

「ちょ、ちょっと待って下さいっ!そんないきなり、結婚だなんてっ!」

思わず席を立つと、レイモンド氏が言った。

「まさか…遊びで付き合っている…はずはありませんよね?」

夫人が俺を見る。

「ああ、当然だろう?ただの遊びで未婚の女性と一緒にお酒を飲みに行く事はあるまいし。それに…たまたまあの店には私の知り合いがいたのですよ。店に入った時に店内が騒がしく…彼は様子を見に行ったそうなのです。すると娘のイングリットをかばうように男性が立っていて…娘の事を恋人と言ったそうですから」

言いながらレイモンド氏が俺を見た。

「あ…」

その言葉に思わず顔が青くなる。そうだ、あの時俺は確かにイングリット嬢を酔っ払いから助ける為に「恋人」と言った。

まさか…その言葉がこんな形で自分に返ってくるなんて…。

俺は助けを求めるべく、隣に座るイングリット嬢を見つめた―。






しおりを挟む
感想 205

あなたにおすすめの小説

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」  私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。 「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」  愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。 「――あなたは、この家に要らないのよ」  扇子で私の頬を叩くお母様。  ……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。    消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。

本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~

なか
恋愛
 私は本日、貴方と離婚します。  愛するのは、終わりだ。    ◇◇◇  アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。  初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。  しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。  それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。  この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。   レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。    全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。  彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……  この物語は、彼女の決意から三年が経ち。  離婚する日から始まっていく  戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。  ◇◇◇  設定は甘めです。  読んでくださると嬉しいです。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...