75 / 81
5章 13 試したいこと
しおりを挟む
「うっ! 痛っ!」
手を取られて、駆け出した途端に両足に激痛が走る。
「え? リアンナ様?」
カインは驚き、直ぐに足を止めた。
「どうしたのですか? 何処か痛むのですか?」
「う、うん……ちょっと足の裏が……」
「足の裏? ……失礼します」
「え? キャアッ!」
突然カインは私を抱き上げると、歩き始めた。
「え? カ、カイン? 何するの!?」
「足の怪我を見せて下さい」
私を抱き上げたままカインはスタスタ歩き、建物の脇に置かれていた空き箱の上に私を降ろした。
「う、うん」
カインに足をそっと出すと、カインは「失礼します」と言って私の足を手に取った。
「……これは酷い……」
眉を顰め、カインは顔を上げた。
「リアンナ様、この足の怪我はどうされたのですか?」
「目が覚めたら、この姿のまま小屋の様な場所で転がっていたの。それで殿下が入ってきて……」
「え? 殿下が来たのですか!? 何もされませんでしたか!?」
顔色を変えて突然私の両肩を掴んできた。
「何もされなかったけど、聖女の力を見せてみろと言われたの。もし嘘だったら私を牢屋に入れると言ってたし、本物だったら妻に娶るって……」
「何ですって!? 殿下がそんなことを!?」
「う、うん。そうだけど……?」
何をそんなに驚いているのだろう? 元々私は殿下の后候補者だったはずなのに。
「……それで、その後はどうしたのですか?」
「とにかく牢屋にも入れられたくないし殿下と結婚なんて、もっと嫌だったから……って。え? 何で今度は笑ってるの?」
先程までの顔とは、打って変わって笑顔のカイン。
「いえ、笑っていません」
「そうかなぁ……? まぁ、いいわ。でも、聖女の力なんて見せようにもマジックの道具がないから出来ないでしょう? そこで、殿下の心を落ち着かせるためにウクレレで演奏したのよ。そうしたら、深い眠りに就いたというわけ。いくら声をかけてもつついてみても起きないから逃げ出してきのよ。でも外に出たら驚いたわ。見張りの騎士まで眠っていたのだから」
「そうだったのですか。でもよく僕の居場所が分かりましたね」
「それはオスカーのおかげよ」
「え? オスカーの?」
いつの間にか、オスカーはカインの肩に止まっている。
「オスカーが飛んできて、カインの元まで導いてくれたのよ。それでここまで来ることができたの。だけど、裸足だったから……」
「それで、こんな怪我をしてしまったのですね……?」
私の足裏は酷いことになっていたのだろう。カインが眉をひそめる。
「すぐに手当をしましょう。一旦ホテルに戻れば……」
「ちょっと待って、カイン」
立ち上がったカインを止めた。
「どうしたのですか?」
「私、試してみたいことがあるのよ」
ウクレレを小脇に抱えた。
鳥たちに助けを求めたあのとき、私は自分の知らない曲を勝手に引き出していた。今もそれが出来そうな気がする。
一度深呼吸すると、ウクレレを奏で始めた。
その曲は、やはり自分の知らない曲だった。
どうか、足の裏の怪我が治るようにと心の中で祈りながら――
手を取られて、駆け出した途端に両足に激痛が走る。
「え? リアンナ様?」
カインは驚き、直ぐに足を止めた。
「どうしたのですか? 何処か痛むのですか?」
「う、うん……ちょっと足の裏が……」
「足の裏? ……失礼します」
「え? キャアッ!」
突然カインは私を抱き上げると、歩き始めた。
「え? カ、カイン? 何するの!?」
「足の怪我を見せて下さい」
私を抱き上げたままカインはスタスタ歩き、建物の脇に置かれていた空き箱の上に私を降ろした。
「う、うん」
カインに足をそっと出すと、カインは「失礼します」と言って私の足を手に取った。
「……これは酷い……」
眉を顰め、カインは顔を上げた。
「リアンナ様、この足の怪我はどうされたのですか?」
「目が覚めたら、この姿のまま小屋の様な場所で転がっていたの。それで殿下が入ってきて……」
「え? 殿下が来たのですか!? 何もされませんでしたか!?」
顔色を変えて突然私の両肩を掴んできた。
「何もされなかったけど、聖女の力を見せてみろと言われたの。もし嘘だったら私を牢屋に入れると言ってたし、本物だったら妻に娶るって……」
「何ですって!? 殿下がそんなことを!?」
「う、うん。そうだけど……?」
何をそんなに驚いているのだろう? 元々私は殿下の后候補者だったはずなのに。
「……それで、その後はどうしたのですか?」
「とにかく牢屋にも入れられたくないし殿下と結婚なんて、もっと嫌だったから……って。え? 何で今度は笑ってるの?」
先程までの顔とは、打って変わって笑顔のカイン。
「いえ、笑っていません」
「そうかなぁ……? まぁ、いいわ。でも、聖女の力なんて見せようにもマジックの道具がないから出来ないでしょう? そこで、殿下の心を落ち着かせるためにウクレレで演奏したのよ。そうしたら、深い眠りに就いたというわけ。いくら声をかけてもつついてみても起きないから逃げ出してきのよ。でも外に出たら驚いたわ。見張りの騎士まで眠っていたのだから」
「そうだったのですか。でもよく僕の居場所が分かりましたね」
「それはオスカーのおかげよ」
「え? オスカーの?」
いつの間にか、オスカーはカインの肩に止まっている。
「オスカーが飛んできて、カインの元まで導いてくれたのよ。それでここまで来ることができたの。だけど、裸足だったから……」
「それで、こんな怪我をしてしまったのですね……?」
私の足裏は酷いことになっていたのだろう。カインが眉をひそめる。
「すぐに手当をしましょう。一旦ホテルに戻れば……」
「ちょっと待って、カイン」
立ち上がったカインを止めた。
「どうしたのですか?」
「私、試してみたいことがあるのよ」
ウクレレを小脇に抱えた。
鳥たちに助けを求めたあのとき、私は自分の知らない曲を勝手に引き出していた。今もそれが出来そうな気がする。
一度深呼吸すると、ウクレレを奏で始めた。
その曲は、やはり自分の知らない曲だった。
どうか、足の裏の怪我が治るようにと心の中で祈りながら――
947
あなたにおすすめの小説
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない
あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。
王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。
だがある日、
誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。
奇跡は、止まった。
城は動揺し、事実を隠し、
責任を聖女ひとりに押しつけようとする。
民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。
一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、
奇跡が失われる“その日”に備え、
治癒に頼らない世界を着々と整えていた。
聖女は象徴となり、城は主導権を失う。
奇跡に縋った者たちは、
何も奪われず、ただ立場を失った。
選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。
――これは、
聖女でも、英雄でもない
「悪役令嬢」が勝ち残る物語。
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
聖女の妹、『灰色女』の私
ルーシャオ
恋愛
オールヴァン公爵家令嬢かつ聖女アリシアを妹に持つ『私』は、魔力を持たない『灰色女(グレイッシュ)』として蔑まれていた。醜聞を避けるため仕方なく出席した妹の就任式から早々に帰宅しようとしたところ、道に座り込む老婆を見つける。その老婆は同じ『灰色女』であり、『私』の運命を変える呪文をつぶやいた。
『私』は次第にマナの流れが見えるようになり、知らなかったことをどんどんと知っていく。そして、聖女へ、オールヴァン公爵家へ、この国へ、差別する人々へ——復讐を決意した。
一方で、なぜか縁談の来なかった『私』と結婚したいという王城騎士団副団長アイメルが現れる。拒否できない結婚だと思っていたが、妙にアイメルは親身になってくれる。一体なぜ?
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる