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5章 12 私が本物の聖女なら……
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オスカーは何処までも飛んでいく。時折木の上に停まっては、私がやってくるのを待ってくれている。
「い、一体何処まで飛んでいくのよ……」
裸足で草原を小走りしているので、私の足は傷だらけだった。
うう……こんなことなら倒れている騎士のブーツでも拝借してくれば良かった。
だけどサイズなんか合うはず無いし、スリッパならまだしもブーツを履くのは抵抗感が半端ではなかった。
「足の怪我なんか構っていられないわ。まずはカインの元へ急がなくちゃ」
カインは、もはや殿下に逆らった騎士とみなされている。縛られて無抵抗な状態で、ひどい暴力を受けている可能性だってある。
もしくは……。
恐ろしい考えが脳裏に浮かび、ブンブン首を振る。大丈夫、カインは強い。他の騎士たちに負けるはずなんかないんだから!
足の痛みを堪え、必死でオスカーの後を追っていくと港が見えてきた。港には大きなレンガ造りの建物が立ち並び、その中の一つに向かってオスカーは飛んでいく。
多分、あの中にカインがいるに違いない!
すると思っていた通り、オスカーは開いていた窓の中に飛び込んでいった。
「カイン……ッ!」
私も建物へ駆け寄り……激しい金属音が耳に飛び込んできた。
キィイインッ!!
ガキッ!!
ま、まさか……?
恐る恐る窓から覗き込むと、カインが2人の騎士相手に剣で戦っていた。
足元には3人の倒れた騎士がいる。
もしかして、カインが倒したのだろうか?
カインは次々と襲ってくる3人の騎士の攻撃を剣で受け止めて戦っている。
すると1人の騎士が叫んだ。
「バカな奴だ!! 剣を抜かずに我らと戦えるとでも思っているのか!?」
「え?」
よく見ると、カインは剣を鞘から抜かずに戦っている。
「そうだ!! リアンナ様がそれを望んでいるからだ!!」
カインが叫びながら、鞘つきの剣で相手の攻撃を避けている。
「貴様! 偽物聖女に絆されたか!?」
「殿下に捨てられるような女だぞ!!」
「裏切り者め!!」
「黙れっ! リアンナ様を侮辱するな!! あの方は本物の聖女だ!!」
カインの言葉に息を呑む。
カインは私が本物の聖女だと信じている。
私は頭上を見上げた。
空には多くのカモメが空を飛んでいる。
もし……もし、私が本物の聖女なら……!!
「お願いっ!! カインを……助けてっ!!」
私はウクレレを奏でた。
それは今まで弾いたことも無い不思議な音楽。身体が勝手に動いて、音楽を奏でる。
すると、突然空を旋回していたカモメたちが一斉に急降下して窓の中へ次々と飛び込んでいく。その中には鳶もいた。
「ぎゃあああッ!!」
「な、何だッ!! 何故鳥が……!」
「痛いッ! やめろっ! 突っつくな!」
その声に私は入口から中へ飛び込んだ。
すると、そこには無数の鳥たちに突かれて襲われている騎士たちの姿があった。
そしてその様子を呆然と見ているカイン。
「カインッ!!」
扉の前で叫ぶと、カインが顔を上げて驚きの表情を浮かべる。
「リアンナ様っ!?」
「助けに来たわ!! 今のうちに逃げましょう!」
カインは少しの間、鳥たちに襲われて悲鳴を上げている騎士たちを見つめ……。
「はい! リアンナ様っ!」
笑顔で返事をすると、私の元へ駆け寄ってきた。
「リアンナ様、良く無事で……」
「話は後よ! 今のうちにここから離れましょう!」
鳥たちに襲われている騎士達は私達に気づいていない。
「はい!」
カインは頷くと、私の手を握りしめて駆け出した――
「い、一体何処まで飛んでいくのよ……」
裸足で草原を小走りしているので、私の足は傷だらけだった。
うう……こんなことなら倒れている騎士のブーツでも拝借してくれば良かった。
だけどサイズなんか合うはず無いし、スリッパならまだしもブーツを履くのは抵抗感が半端ではなかった。
「足の怪我なんか構っていられないわ。まずはカインの元へ急がなくちゃ」
カインは、もはや殿下に逆らった騎士とみなされている。縛られて無抵抗な状態で、ひどい暴力を受けている可能性だってある。
もしくは……。
恐ろしい考えが脳裏に浮かび、ブンブン首を振る。大丈夫、カインは強い。他の騎士たちに負けるはずなんかないんだから!
足の痛みを堪え、必死でオスカーの後を追っていくと港が見えてきた。港には大きなレンガ造りの建物が立ち並び、その中の一つに向かってオスカーは飛んでいく。
多分、あの中にカインがいるに違いない!
すると思っていた通り、オスカーは開いていた窓の中に飛び込んでいった。
「カイン……ッ!」
私も建物へ駆け寄り……激しい金属音が耳に飛び込んできた。
キィイインッ!!
ガキッ!!
ま、まさか……?
恐る恐る窓から覗き込むと、カインが2人の騎士相手に剣で戦っていた。
足元には3人の倒れた騎士がいる。
もしかして、カインが倒したのだろうか?
カインは次々と襲ってくる3人の騎士の攻撃を剣で受け止めて戦っている。
すると1人の騎士が叫んだ。
「バカな奴だ!! 剣を抜かずに我らと戦えるとでも思っているのか!?」
「え?」
よく見ると、カインは剣を鞘から抜かずに戦っている。
「そうだ!! リアンナ様がそれを望んでいるからだ!!」
カインが叫びながら、鞘つきの剣で相手の攻撃を避けている。
「貴様! 偽物聖女に絆されたか!?」
「殿下に捨てられるような女だぞ!!」
「裏切り者め!!」
「黙れっ! リアンナ様を侮辱するな!! あの方は本物の聖女だ!!」
カインの言葉に息を呑む。
カインは私が本物の聖女だと信じている。
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もし……もし、私が本物の聖女なら……!!
「お願いっ!! カインを……助けてっ!!」
私はウクレレを奏でた。
それは今まで弾いたことも無い不思議な音楽。身体が勝手に動いて、音楽を奏でる。
すると、突然空を旋回していたカモメたちが一斉に急降下して窓の中へ次々と飛び込んでいく。その中には鳶もいた。
「ぎゃあああッ!!」
「な、何だッ!! 何故鳥が……!」
「痛いッ! やめろっ! 突っつくな!」
その声に私は入口から中へ飛び込んだ。
すると、そこには無数の鳥たちに突かれて襲われている騎士たちの姿があった。
そしてその様子を呆然と見ているカイン。
「カインッ!!」
扉の前で叫ぶと、カインが顔を上げて驚きの表情を浮かべる。
「リアンナ様っ!?」
「助けに来たわ!! 今のうちに逃げましょう!」
カインは少しの間、鳥たちに襲われて悲鳴を上げている騎士たちを見つめ……。
「はい! リアンナ様っ!」
笑顔で返事をすると、私の元へ駆け寄ってきた。
「リアンナ様、良く無事で……」
「話は後よ! 今のうちにここから離れましょう!」
鳥たちに襲われている騎士達は私達に気づいていない。
「はい!」
カインは頷くと、私の手を握りしめて駆け出した――
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