29 / 81
2章 6 巡礼の旅
しおりを挟む
村人たちは可愛らしいギンバトたちがくわえている布袋に次々とお金を投げ入れていく。
「リアンナ様……いったいこれはどういうことなのでしょう……?」
「ひょっとして、いつの間にかお金を回収してくるように調教したのですか?」
ニーナとジャンが驚いた様子で私に尋ねてくる。
「まさか! 知らないわよ!」
私にはハトを調教する能力などあるはずない。ましてや、お金を回収しているなんて……私が一番驚いているに違いない。
けれど、これは好都合。
人々は喜んで、お金を放り込んでくれている。
やがてお金の回収が終わったのか、ギンバトたちは布袋をくわえて私の元へ飛んできた。
すると、村人たちが一斉に私達の元へ駆け寄ってくると次々に質問を投げかけてきた。
「聖女様! お名前を教えてください!」
「どちらからいらしたのですか? ここへは何をしに来たのですか?」
「これから何処へ行くのでしょう!」
「ちょっと待って! 皆さん! 落ち着いて下さい!」
「そんなに一気に話しかけられてもお答えできません!」
ニーナとジャンが私の前に立ちはだかって、人々を静止する。
これは大変な騒ぎになってしまった……かくなる上は、私が出るしか無い。
どうせもう二度とこの村に立ち寄ることは無いのだから、ハッタリを言って人々を落ち着かせなければ。
「皆さん! 私の名前はリアンナと申します。今、供を連れて巡礼の旅をしている最中です。皆様から頂いた寄付金は、旅の資金としてありがたく使わせて頂きます。本当にありがとうございました」
巡礼の旅、という言葉にジャンとニーナは驚きの表情で私を見つめている。
そんな2人に目配せすると、私は続けた。
「私達はこれから海の向こうの大陸を目指して巡礼の旅を続けます。以上が質問の答えになります。それでは先を急ぐので失礼致しますね」
早口で言うと一礼し、私達は逃げるようにその場を後にした――
****
「ふぅ~……それにしてもすごい騒ぎでしたね……一時はどうなることかと思いましたよ」
宿屋に戻ると、ジャンがため息を付いた。
「ええ、そうね。何だかすごい騒ぎになってしまったわ」
こんな小さな村であれ程の騒ぎになるとは思ってもいなかった。
「どうしますか? これからも今のようにマジックを披露するのですか?」
ニーナが尋ねてくる。
「うん……」
確かに、毎回今日みたいな騒ぎになっては後が大変だ。けれど、旅を続けるにはお金がいる。お金を稼ぐには、やはりマジックショーは必要だ。
「人々は、リアンナ様が聖女だと思って騒ぎになるのですよね……でも、それは無理もないかもしれませんね。本当にマジックは魔法みたいに見えますから」
「……そうだわ! いい考えがある」
ジャンの話を聞いて、ある考えが浮かんだ。
「良い考えって何ですか?」
再びニーナが尋ねる。
「大抵何処の村や町にも神様を信仰する場所ってあるのかしら?」
あえて「神殿」や「教会」と単語は使わずに2人に尋ねてみた。
「ええ。教会なら何処にでもありますよ」
ジャンが返事をする。
「そう! 教会があるのね? だったら、これから教会に許可を取って、そこでマジックショーをさせてもらうのよ! 最初から聖女のフリをして、マジックを披露すれば、大騒ぎになることは無いと思わない?」
「なるほど! それは良い考えですね!」
私の言葉にニーナがパチンと手を叩く。
「確かに、そうですね。人々を騙すには少々気が引けますが……」
ジャンが痛いところをついてくる。
「し、仕方ないじゃない。だって私達にはお金が必要なんだから。そうと決まれば、早速次の町に向かって出発しましょう!」
「「はい!」」
私の言葉に、ジャンとニーナが力強く頷いた――
「リアンナ様……いったいこれはどういうことなのでしょう……?」
「ひょっとして、いつの間にかお金を回収してくるように調教したのですか?」
ニーナとジャンが驚いた様子で私に尋ねてくる。
「まさか! 知らないわよ!」
私にはハトを調教する能力などあるはずない。ましてや、お金を回収しているなんて……私が一番驚いているに違いない。
けれど、これは好都合。
人々は喜んで、お金を放り込んでくれている。
やがてお金の回収が終わったのか、ギンバトたちは布袋をくわえて私の元へ飛んできた。
すると、村人たちが一斉に私達の元へ駆け寄ってくると次々に質問を投げかけてきた。
「聖女様! お名前を教えてください!」
「どちらからいらしたのですか? ここへは何をしに来たのですか?」
「これから何処へ行くのでしょう!」
「ちょっと待って! 皆さん! 落ち着いて下さい!」
「そんなに一気に話しかけられてもお答えできません!」
ニーナとジャンが私の前に立ちはだかって、人々を静止する。
これは大変な騒ぎになってしまった……かくなる上は、私が出るしか無い。
どうせもう二度とこの村に立ち寄ることは無いのだから、ハッタリを言って人々を落ち着かせなければ。
「皆さん! 私の名前はリアンナと申します。今、供を連れて巡礼の旅をしている最中です。皆様から頂いた寄付金は、旅の資金としてありがたく使わせて頂きます。本当にありがとうございました」
巡礼の旅、という言葉にジャンとニーナは驚きの表情で私を見つめている。
そんな2人に目配せすると、私は続けた。
「私達はこれから海の向こうの大陸を目指して巡礼の旅を続けます。以上が質問の答えになります。それでは先を急ぐので失礼致しますね」
早口で言うと一礼し、私達は逃げるようにその場を後にした――
****
「ふぅ~……それにしてもすごい騒ぎでしたね……一時はどうなることかと思いましたよ」
宿屋に戻ると、ジャンがため息を付いた。
「ええ、そうね。何だかすごい騒ぎになってしまったわ」
こんな小さな村であれ程の騒ぎになるとは思ってもいなかった。
「どうしますか? これからも今のようにマジックを披露するのですか?」
ニーナが尋ねてくる。
「うん……」
確かに、毎回今日みたいな騒ぎになっては後が大変だ。けれど、旅を続けるにはお金がいる。お金を稼ぐには、やはりマジックショーは必要だ。
「人々は、リアンナ様が聖女だと思って騒ぎになるのですよね……でも、それは無理もないかもしれませんね。本当にマジックは魔法みたいに見えますから」
「……そうだわ! いい考えがある」
ジャンの話を聞いて、ある考えが浮かんだ。
「良い考えって何ですか?」
再びニーナが尋ねる。
「大抵何処の村や町にも神様を信仰する場所ってあるのかしら?」
あえて「神殿」や「教会」と単語は使わずに2人に尋ねてみた。
「ええ。教会なら何処にでもありますよ」
ジャンが返事をする。
「そう! 教会があるのね? だったら、これから教会に許可を取って、そこでマジックショーをさせてもらうのよ! 最初から聖女のフリをして、マジックを披露すれば、大騒ぎになることは無いと思わない?」
「なるほど! それは良い考えですね!」
私の言葉にニーナがパチンと手を叩く。
「確かに、そうですね。人々を騙すには少々気が引けますが……」
ジャンが痛いところをついてくる。
「し、仕方ないじゃない。だって私達にはお金が必要なんだから。そうと決まれば、早速次の町に向かって出発しましょう!」
「「はい!」」
私の言葉に、ジャンとニーナが力強く頷いた――
930
お気に入りに追加
1,837
あなたにおすすめの小説
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる