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2章 7 元気の源?
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荷馬車に乗り込んで、荷物整理をしていると外に出ていたジャンが声をかけてきた。
「リアンナ様、村人がリアンナ様にお願いがあるそうで、訪ねて来ているのですが……」
「え? 私に?」
何だろう……? 果てしなくイヤな予感がする。
荷馬車から顔を出すと、具合が悪そうな女性と10歳ほどの少女がこちらを見上げて立っていた。
「あ! 聖女様だ! お母さん、この人が聖女様だよ!」
すると女の子が私を見て嬉しそうに指さしてきた。
「まぁ……この方が聖女様なのね? 美しい方だわ……」
うう~。私は聖女様なんかじゃないのに……罪悪感がこみ上げてくる。
「あ、あの~私に何か御用でしょうか? 実はこれから次の町に出発するのですが……」
こちらを心配そうに見つめているジャンとニーナをチラリと見る。すると少女がとんでもないことを言ってきた。
「お願い! 聖女様! お母さんを助けて!」
「えぇっ!? た、助けるって!?」
すると女性が私に頭を下げてきた。
「お母さん、もうずっと具合が悪いの! うちは貧しいからお医者様に診てもらうことなんて出来なくて……だから聖女様にお母さんの病気を治してほしいの! お願いします!」
「そ、そんな……」
どうしよう、困った。私が出来るのはマジックだけ。聖女などではないし、医療の知識だって無い。
そんな私が病気の女性を治せるはずなんて無いのに!
すると女性は私が困っている様子に気付いたのか、少女に声をかけた。
「およしなさい、マヤ。聖女様はこれから旅に出るのよ? お手間を取らせてはいけないわ。大丈夫……そのうち、良くなるわよ……」
けれど、女性は本当に具合が悪そうに見えた。おそらく、この宿屋にだって必死の思いで来たに違いない。
だけど、私は……。
「お力になれず……申し訳ありません……」
すると、少女は首を振った。
「そんなこと言わないでお願いします! お母さんを助けて! だって、皆聖女様の弾いた音楽を聞いて元気になれたって言ってたんだもの!」
「音楽を聞いて?」
あ~……きっと、それは「元気になれた」って意味じゃなくて「元気を分けてもらえた」って意味なんだろうけど……折角ここまで来てもらったのに、帰ってもらうのは非常に気が引けた。
「分かったわ、それじゃ楽器を弾くだけならいいわよ」
「え!? 本当に!?」
少女の目がキラキラ輝く。
「勿論。だって折角来てくれたのだから」
ウクレレを抱えながら、少女に笑顔で答える。
元気が出てきそうな短めの曲を1つでも弾いてあげれば、納得してくれるだろう。
そこで、少し考えて「大牧場はみどり」を弾き始めた。
すると、たちまちウクレレの音色が風にのってイナクに村に響き渡る。
演奏しながら母親と少女の様子を見ると、2人は笑顔で演奏を聞いている。
うん、やっぱり明るい曲は元気になれる気がする。最後まで明るいノリで演奏をおえると私は一度会釈した。
すると、たちまちその場にいた全員がパチパチと拍手する。
「やっぱりリアンナ様の演奏はいいですね」
「うん、最高だ」
ジャンとリアンナの様子を見たとき。
「まぁ! すごいわ!」
突然女性が驚きの声をあげた。
「どうかしましたか!?」
何かやらかしてしまっただろうか!?
「ありがとうございます! 聖女様! 今まで、体中がだるくて仕方なかったのに……今は、体中に元気が漲っています! 何なら、走って家に帰れそうです!」
女性が興奮気味に訴えてくる。
「お母さん! 本当?」
「ええ、本当よ。マヤ、やっぱり聖女様の力は本当なのね?」
抱き合って喜ぶ親子。
「あ……あははは……そ、それは良かったです……お役に立てて何よりです」
何だろう? 私の演奏でそんなに気力が漲ってきたのだろうか?
すると女性が深々と頭を下げてきた。
「聖女様、本当にありがとうございます。これでまた働くことが出来ます。何か、御礼を差し上げたいのですが……こんなものくらいしか用意できず、申し訳ありません」
女性はポケットから、木彫りのネックレスを取り出した。
「いえ! そんな、お礼なんていりませんから!」
だって、私は女性の病気を治したわけではない。単にウクレレを演奏しただけなのに?
すると女性は首を振る。
「そんなこと、おっしゃらずに受け取って下さい。これでも私はここでは腕の良いアクセサリー職人なのです。是非、聖女様に差し上げたいのです」
するとニーナが耳打ちしてきた。
「リアンナ様。ここまで言われているのですから、受けとって差し上げたらいかがですか?」
「ニーナ……そうね。分かったわ。それでは、頂きますね」
「ありがとうございます!」
私がネックレスを受け取ると、女性は嬉しそうに笑った――
「リアンナ様、村人がリアンナ様にお願いがあるそうで、訪ねて来ているのですが……」
「え? 私に?」
何だろう……? 果てしなくイヤな予感がする。
荷馬車から顔を出すと、具合が悪そうな女性と10歳ほどの少女がこちらを見上げて立っていた。
「あ! 聖女様だ! お母さん、この人が聖女様だよ!」
すると女の子が私を見て嬉しそうに指さしてきた。
「まぁ……この方が聖女様なのね? 美しい方だわ……」
うう~。私は聖女様なんかじゃないのに……罪悪感がこみ上げてくる。
「あ、あの~私に何か御用でしょうか? 実はこれから次の町に出発するのですが……」
こちらを心配そうに見つめているジャンとニーナをチラリと見る。すると少女がとんでもないことを言ってきた。
「お願い! 聖女様! お母さんを助けて!」
「えぇっ!? た、助けるって!?」
すると女性が私に頭を下げてきた。
「お母さん、もうずっと具合が悪いの! うちは貧しいからお医者様に診てもらうことなんて出来なくて……だから聖女様にお母さんの病気を治してほしいの! お願いします!」
「そ、そんな……」
どうしよう、困った。私が出来るのはマジックだけ。聖女などではないし、医療の知識だって無い。
そんな私が病気の女性を治せるはずなんて無いのに!
すると女性は私が困っている様子に気付いたのか、少女に声をかけた。
「およしなさい、マヤ。聖女様はこれから旅に出るのよ? お手間を取らせてはいけないわ。大丈夫……そのうち、良くなるわよ……」
けれど、女性は本当に具合が悪そうに見えた。おそらく、この宿屋にだって必死の思いで来たに違いない。
だけど、私は……。
「お力になれず……申し訳ありません……」
すると、少女は首を振った。
「そんなこと言わないでお願いします! お母さんを助けて! だって、皆聖女様の弾いた音楽を聞いて元気になれたって言ってたんだもの!」
「音楽を聞いて?」
あ~……きっと、それは「元気になれた」って意味じゃなくて「元気を分けてもらえた」って意味なんだろうけど……折角ここまで来てもらったのに、帰ってもらうのは非常に気が引けた。
「分かったわ、それじゃ楽器を弾くだけならいいわよ」
「え!? 本当に!?」
少女の目がキラキラ輝く。
「勿論。だって折角来てくれたのだから」
ウクレレを抱えながら、少女に笑顔で答える。
元気が出てきそうな短めの曲を1つでも弾いてあげれば、納得してくれるだろう。
そこで、少し考えて「大牧場はみどり」を弾き始めた。
すると、たちまちウクレレの音色が風にのってイナクに村に響き渡る。
演奏しながら母親と少女の様子を見ると、2人は笑顔で演奏を聞いている。
うん、やっぱり明るい曲は元気になれる気がする。最後まで明るいノリで演奏をおえると私は一度会釈した。
すると、たちまちその場にいた全員がパチパチと拍手する。
「やっぱりリアンナ様の演奏はいいですね」
「うん、最高だ」
ジャンとリアンナの様子を見たとき。
「まぁ! すごいわ!」
突然女性が驚きの声をあげた。
「どうかしましたか!?」
何かやらかしてしまっただろうか!?
「ありがとうございます! 聖女様! 今まで、体中がだるくて仕方なかったのに……今は、体中に元気が漲っています! 何なら、走って家に帰れそうです!」
女性が興奮気味に訴えてくる。
「お母さん! 本当?」
「ええ、本当よ。マヤ、やっぱり聖女様の力は本当なのね?」
抱き合って喜ぶ親子。
「あ……あははは……そ、それは良かったです……お役に立てて何よりです」
何だろう? 私の演奏でそんなに気力が漲ってきたのだろうか?
すると女性が深々と頭を下げてきた。
「聖女様、本当にありがとうございます。これでまた働くことが出来ます。何か、御礼を差し上げたいのですが……こんなものくらいしか用意できず、申し訳ありません」
女性はポケットから、木彫りのネックレスを取り出した。
「いえ! そんな、お礼なんていりませんから!」
だって、私は女性の病気を治したわけではない。単にウクレレを演奏しただけなのに?
すると女性は首を振る。
「そんなこと、おっしゃらずに受け取って下さい。これでも私はここでは腕の良いアクセサリー職人なのです。是非、聖女様に差し上げたいのです」
するとニーナが耳打ちしてきた。
「リアンナ様。ここまで言われているのですから、受けとって差し上げたらいかがですか?」
「ニーナ……そうね。分かったわ。それでは、頂きますね」
「ありがとうございます!」
私がネックレスを受け取ると、女性は嬉しそうに笑った――
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