1 / 11
1話 シンデレラと呼ばれて
しおりを挟む
今夜はハロウィン。町はハロウィン一色で染まっていた。
「ねぇ~美里、本っ当にパーティーに参加しないの?」
雑踏を歩きながらの仕事帰り、同僚の奈々が声をかけてきた。
「うん、行かない」
素っ気なく答える。
「あ~無理無理、美里のカボチャ嫌いは学生時代から有名だったもの。全く24歳にもなって、まだ食べ物の好き嫌いがあるんだからねぇ~」
学生時代からの友人、ひかりが笑いながら私の肩を叩く。
「え~なんでカボチャが嫌いなの? パンプキンパイとか、最高に美味しいじゃない」
首を傾げるのは、同僚の真帆。
彼女たちはこれから会社の一番近くに住む奈々のマンションでハロウィンパーティと称して、カボチャパーティーを開くのだ。
「大体何よ、カボチャパーティーって。ハロウィンパーティーって言えばいいじゃないの」
友人たちに訴える。
「いいじゃない、だって本当にカボチャ料理を作って、皆で食べ尽くすんだもの」
「そうそう、カボチャのサラダにカボチャのシチュー、カボチャのプリンにパンプキンパイ」
「どれも絶品だよね~」
3人の友人たちがカボチャ料理で楽しそうに盛り上がっているが、私は聞いているだけで胸やけがしそうだ。
カボチャなんて切りにくいし種は邪魔だし、妙に甘いだけの野菜じゃないの。
「とにかく、今夜は遠慮する。3人だけでカボチャパーティーを楽しんで頂戴。それじゃ、私は帰るから」
そして一人、駅に向かう為に横断歩道を歩き始めた時――
突然右から眩しいライトがを浴びせられた。
「え?」
驚いて振り向くと、1台の車が私につっ込んでくるのが見えた。
「美里!!」
ひかりが私の名前を悲痛な声で叫んだ瞬間。
ドンッ!!
身体に激しい衝撃が加わり、そこから先の私の意識は途絶えた――
****
「……レラ! シンデレラ!」
不意に誰かに名前を呼ばれ、ハッとして声の聞こえた方向を見る。
すると、そこには怪訝そうな顔で私を見つめるおばあさんが立っていた。
フード付きの紫のマント姿のおばあさんは日常生活を過ごすにはとても奇異な姿に見える。しかもご丁寧に短い杖を持っている。
まるで魔法使いのコスプレしているみたいだ。
「コスプレ……?」
口にしかけて、あることを思い出す。そうだ、今夜はハロウィンだった。それなら納得いく。
「今夜はハロウィンでしたね? だから魔法使いのコスプレ姿をしているのですね?」
「は? ハロウィン? 魔法使いのコスプレ……? 一体何を言っているの?」
おばあさんはますます困惑の表情を浮かべる。けれど、かまわず言葉を続ける。
「その魔法使いの衣装、とてもお似合いですよ。それにしても……」
辺りを見渡すと、街灯すらない場所に立っていることに改めて気付いた。しかもここは何だか畑のようにも見える。
「ここはどこなの? 街灯も無いし、何だか畑のようにも見えるし……」
「畑のように見える…‥ではなく、畑よ。さっきから一体どうしてしまったのかい?
シンデレラ」
「え……? シンデレラ……?」
魔法使いのコスプレをしたおばあさんは私のことを「シンデレラ」と呼んだ――
「ねぇ~美里、本っ当にパーティーに参加しないの?」
雑踏を歩きながらの仕事帰り、同僚の奈々が声をかけてきた。
「うん、行かない」
素っ気なく答える。
「あ~無理無理、美里のカボチャ嫌いは学生時代から有名だったもの。全く24歳にもなって、まだ食べ物の好き嫌いがあるんだからねぇ~」
学生時代からの友人、ひかりが笑いながら私の肩を叩く。
「え~なんでカボチャが嫌いなの? パンプキンパイとか、最高に美味しいじゃない」
首を傾げるのは、同僚の真帆。
彼女たちはこれから会社の一番近くに住む奈々のマンションでハロウィンパーティと称して、カボチャパーティーを開くのだ。
「大体何よ、カボチャパーティーって。ハロウィンパーティーって言えばいいじゃないの」
友人たちに訴える。
「いいじゃない、だって本当にカボチャ料理を作って、皆で食べ尽くすんだもの」
「そうそう、カボチャのサラダにカボチャのシチュー、カボチャのプリンにパンプキンパイ」
「どれも絶品だよね~」
3人の友人たちがカボチャ料理で楽しそうに盛り上がっているが、私は聞いているだけで胸やけがしそうだ。
カボチャなんて切りにくいし種は邪魔だし、妙に甘いだけの野菜じゃないの。
「とにかく、今夜は遠慮する。3人だけでカボチャパーティーを楽しんで頂戴。それじゃ、私は帰るから」
そして一人、駅に向かう為に横断歩道を歩き始めた時――
突然右から眩しいライトがを浴びせられた。
「え?」
驚いて振り向くと、1台の車が私につっ込んでくるのが見えた。
「美里!!」
ひかりが私の名前を悲痛な声で叫んだ瞬間。
ドンッ!!
身体に激しい衝撃が加わり、そこから先の私の意識は途絶えた――
****
「……レラ! シンデレラ!」
不意に誰かに名前を呼ばれ、ハッとして声の聞こえた方向を見る。
すると、そこには怪訝そうな顔で私を見つめるおばあさんが立っていた。
フード付きの紫のマント姿のおばあさんは日常生活を過ごすにはとても奇異な姿に見える。しかもご丁寧に短い杖を持っている。
まるで魔法使いのコスプレしているみたいだ。
「コスプレ……?」
口にしかけて、あることを思い出す。そうだ、今夜はハロウィンだった。それなら納得いく。
「今夜はハロウィンでしたね? だから魔法使いのコスプレ姿をしているのですね?」
「は? ハロウィン? 魔法使いのコスプレ……? 一体何を言っているの?」
おばあさんはますます困惑の表情を浮かべる。けれど、かまわず言葉を続ける。
「その魔法使いの衣装、とてもお似合いですよ。それにしても……」
辺りを見渡すと、街灯すらない場所に立っていることに改めて気付いた。しかもここは何だか畑のようにも見える。
「ここはどこなの? 街灯も無いし、何だか畑のようにも見えるし……」
「畑のように見える…‥ではなく、畑よ。さっきから一体どうしてしまったのかい?
シンデレラ」
「え……? シンデレラ……?」
魔法使いのコスプレをしたおばあさんは私のことを「シンデレラ」と呼んだ――
1
あなたにおすすめの小説
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる