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2話 魔法使いの命令

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「そうだよ、シンデレラ。他に誰がシンデレラだっていうのかい?」

まるで魔法使いに見えるおばあさんが首を傾げる。まさか……!

「わ、私がシンデレラですか!? あの、人違いじゃありませんか? 私の名前は美里といいます。シンデレラなんかじゃありませんよ?」

「さっきから何を言っているんだい? 突然雷に打たれたかのように硬直したかと思えば、魔法使いのコスプレだとか畑のように見えるとか……言っておくけれど、私は本物の魔法使いだよ。今夜はお前をお城の舞踏会に参加させる為、忙しい最中にわざわざ出向いてあげたのだから。感謝しなさい」

妙に恩着せがましい言い方をする。

「はい、申し訳ございません……」

ここは素直に謝っておこう。反抗してもろくな目にあわないことは社会人になって、身に染みて分かっている。

「分かればいいのだよ。分かれば。さて、それではシンデレラ。早速畑に行って野菜を取って来なさい」

杖で畑を差す、おばあさん。

「ええ!? わ、私がですか!?」

「何だい? お前は年寄りの私に畑で野菜を収穫して来いと言うのかい? これだから最近の若い者は……」

「い、いえ! 行きます! どうか私に野菜を取りに行かせてください!」

慌てて手を上げる。年寄りの説教は長い。そんなものを聞く位なら、おばあさんの言う事を聞いた方がマシだ。何より、一刻も早く今の自分の状況を知りたい。

「なら、早く取りに行っておいで! 急がないと舞踏会に間に合わないよ!」

「はい! 行ってきます!」

私は履きなれない靴のまま、畑に足を踏み入れた。 
うん? よく見れば私は随分貧しそうな身なりをしている。茶色のスカートの上からつけた白いエプロンは裾に切れ目まである。

この世界はきっと「シンデレラ」の世界で、私はヒロインのシンデレラ。
恐らく、あの時私……美里は交通事故に遭って死んでしまった。そしてシンデレラとして転生したのだ。
と、私は頭の中で整理した。

「つまり、今の状況はカボチャを収穫して魔法で馬車にしてもらう場面なのよね。きっと」

チラリと畑の前に立つコスプレ……もとい、魔法使いのおばあさんを見ると腰に手を当ててこちらを凝視している。

「ほら! 何やってるの! 早く持ってきなさい! 時間がなくなるわよ!」

「はーい! 今引き抜きます!」

それにしても、せっかちな魔法使いだ。……もっと優しい人だろと思っていただけに、これは違う気がする。

「それにしても素手でカボチャを引き抜くなんて……え? でも待って。カボチャって土の中に埋まっているんだっけ……?」

おかしい、何か変だ。
でも、ここは小説の世界。何でもアリなのだろう。

「う~ん……何だか葉っぱの形も違う気がするけれど……まぁ、いいか」

深く考えても仕方がない。とりあえず、畑から大量に生えている葉っぱを適当に選び、引き抜いてみた。

「う、う~ん……な、なかなか引き抜けないわね……」

渾身の力を込めて、葉っぱを引き抜き‥‥…

ズボッ!

音を立てて、ソレを引き抜くことが出来た。

「え……? そ、そんな……嘘でしょう!?」

私は自分が引き抜いた野菜を見て目を見開いた—―





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