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第191話 セシルの頼み
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私とセシルの沈黙が少しだけ降りた。
外ではまだ雨が激しく降り続いている。
「……外は相変わらず凄い雨だな……」
セシルがポツリと呟いた。
「ええ。そうね……」
私は少しだけ寒さで身体を震わせた。
互いに服を着ないで毛布にくるまっている気恥ずかしさから、暖炉の前にいるセシルとは少し距離を置いた場所に座っていたからだ。
「エルザ、寒いんだろう?もっと暖炉の側に来いよ」
「え……。で、でも……」
こんな無防備な姿でセシルの近くに行くのは抵抗があった。
するとセシルがからかうように声を掛けてきた。
「何だ?ひょっとしてお互いこんな格好だから警戒しているのか?俺に何かされるんじゃないかと思っているのか?」
「そ、それは……!」
顔が熱くなり、思わず俯くとセシルは苦笑した。
「ごめん……。今のはほんの冗談だ、大体俺はまだ馬車の怪我のせいで身体の自由がよく利かない。そんな身体でエルザに何か出来るはずないだろう?」
何か…?
一体それはどういう意味で言っているのだろう?その言葉にますます顔が赤くなる。
「また…俺は意地の悪いことを言ってしまっているな……どうしてもエルザを見ていると、からかいたくなってしまう。本当に最低な男だ」
セシルは随分落ち込んでいるようだった。でも、彼にそんな思いを抱かせてしまうのは私のせいでもある。
「ごめんなさい……セシル」
するとセシルは目を瞬いた。
「何故エルザが謝るんだ?何一つ悪いことなどしていないじゃないか」
「だけど…。クシュンッ!」
「エルザ、ほらもっと暖炉の側に来いよ。…安心しろ。もう…何もしやしないから」
「……」
私は何と返事をしたら良いか分からず、無言で暖炉の近くに行くとセシルから距離を取るように座った。
「…温かいわ……」
「エルザ、屋敷には……連絡してあるのか?」
「ええ、私達の着替えを持ってきてもらうように御者の人に頼んだの。…もう1時間近く経過しているわ」
「そうか。それならもうすぐここに来るかも知れないな」
「ええ、そうね」
セシルは暖炉の火をじっと見つめていた。
「エルザ」
「何?」
「明日……もし、雨が止んだならブライトン家に戻るんだ」
セシルの突然の言葉に驚いた。
「セシル……?ど、どうしたの?突然」
「俺の記憶はもう戻ったんだ。エルザは…俺の妻では無かった。兄さんの…妻だった。だからもうアンバー家にいる必要は何処にもないだろう?」
「だ、だけど……」
折角、セシルの仕事を手伝うのが楽しくなってきたのに?
フィリップがいなくなった世界でルークの他に、アンバー家の仕事を手伝うという生き甲斐が見いだせるようになってきたのに……?
「それに、ブライトン家ではエルザが実家に戻ってくるのを望んでいるんだろう?」
「そ、それ…は……」
「頼む、エルザ。実家に戻って来れ……。俺の為にも」
「セシルの為……?一体、それはどういう意味なの……?」
するとセシルは苦しげに言った。
「エルザがそばにいると……俺はつい、幻想を抱いてしまいそうになってくるんだ……。エルザとルークは……家族なのだと……」
「セシル……」
「お願いだ、エルザ。馬鹿な男の願いをどうか聞き入れてくれ」
そしてセシルは私に頭を下げてきた――。
外ではまだ雨が激しく降り続いている。
「……外は相変わらず凄い雨だな……」
セシルがポツリと呟いた。
「ええ。そうね……」
私は少しだけ寒さで身体を震わせた。
互いに服を着ないで毛布にくるまっている気恥ずかしさから、暖炉の前にいるセシルとは少し距離を置いた場所に座っていたからだ。
「エルザ、寒いんだろう?もっと暖炉の側に来いよ」
「え……。で、でも……」
こんな無防備な姿でセシルの近くに行くのは抵抗があった。
するとセシルがからかうように声を掛けてきた。
「何だ?ひょっとしてお互いこんな格好だから警戒しているのか?俺に何かされるんじゃないかと思っているのか?」
「そ、それは……!」
顔が熱くなり、思わず俯くとセシルは苦笑した。
「ごめん……。今のはほんの冗談だ、大体俺はまだ馬車の怪我のせいで身体の自由がよく利かない。そんな身体でエルザに何か出来るはずないだろう?」
何か…?
一体それはどういう意味で言っているのだろう?その言葉にますます顔が赤くなる。
「また…俺は意地の悪いことを言ってしまっているな……どうしてもエルザを見ていると、からかいたくなってしまう。本当に最低な男だ」
セシルは随分落ち込んでいるようだった。でも、彼にそんな思いを抱かせてしまうのは私のせいでもある。
「ごめんなさい……セシル」
するとセシルは目を瞬いた。
「何故エルザが謝るんだ?何一つ悪いことなどしていないじゃないか」
「だけど…。クシュンッ!」
「エルザ、ほらもっと暖炉の側に来いよ。…安心しろ。もう…何もしやしないから」
「……」
私は何と返事をしたら良いか分からず、無言で暖炉の近くに行くとセシルから距離を取るように座った。
「…温かいわ……」
「エルザ、屋敷には……連絡してあるのか?」
「ええ、私達の着替えを持ってきてもらうように御者の人に頼んだの。…もう1時間近く経過しているわ」
「そうか。それならもうすぐここに来るかも知れないな」
「ええ、そうね」
セシルは暖炉の火をじっと見つめていた。
「エルザ」
「何?」
「明日……もし、雨が止んだならブライトン家に戻るんだ」
セシルの突然の言葉に驚いた。
「セシル……?ど、どうしたの?突然」
「俺の記憶はもう戻ったんだ。エルザは…俺の妻では無かった。兄さんの…妻だった。だからもうアンバー家にいる必要は何処にもないだろう?」
「だ、だけど……」
折角、セシルの仕事を手伝うのが楽しくなってきたのに?
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「それに、ブライトン家ではエルザが実家に戻ってくるのを望んでいるんだろう?」
「そ、それ…は……」
「頼む、エルザ。実家に戻って来れ……。俺の為にも」
「セシルの為……?一体、それはどういう意味なの……?」
するとセシルは苦しげに言った。
「エルザがそばにいると……俺はつい、幻想を抱いてしまいそうになってくるんだ……。エルザとルークは……家族なのだと……」
「セシル……」
「お願いだ、エルザ。馬鹿な男の願いをどうか聞き入れてくれ」
そしてセシルは私に頭を下げてきた――。
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