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第148話 病室のセシル

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 馬車に40分程揺られて、セシルの入院する赤十字総合病院に到着した。

私の後に母が馬車から降り、御者の男性が積んでいたベビーカーを降ろしてくれた。

「どうもありがとうございます」

母が馬車代を支払い、私達は急いで病院の正面口に向かった。


「すみません。入院患者のセシル・アンバーの部屋を教えて下さい。私は彼の身内なのです」

病院入り口の総合受付に座る女性に私は尋ねた。

「セシル・アンバー様ですね?南棟の203号室の個室で入院されております」

「どうもありがとうございます」
「ありがとうございます」

母と2人で受付の女性にお礼を述べると、私と母は急いで203号室を目指した――。


****

「ここね……」

私は息を呑み、部屋番号を確認した。

「ええ、そうね。ノックしてみましょう?」

母に促され、私は扉をノックした。


コンコン

すると――。

ガチャッ…

扉が開かれ、姿を表したのは義母だった。

「エルザ……ありがとう、来てくれて」

義母の髪は乱れ、目の下には大きなクマが出来ていた。

「お義母様…ご無沙汰しておりました。それで…セシルの様子は…」

「ええ、まだ手術後目が醒めないのよ。中に入ってくれる?」

「はい」

義母に促され、私は病室へ入った。
母も義母に挨拶をすると一緒に入ってきた。

「セシル…ッ!」

病室に足を踏み入れた私は思わず口元を覆ってしまった。
セシルは全身に包帯を巻かれ、右足が吊るされていた。

「両腕と…右足が骨折しているそうなの。全身もかなり強く打ったようで……幸い頭の方は強く打たなかったそうなのだけど…まだ、目が覚めなくて…」

義母は涙声だった。

「セシル…」

すると母が義母に尋ねた。

「あの、夫人。夫はどこへ行ったのでしょう?」

「私の夫と…ベルクール家の御家族達と一緒に控室で話をしているの」

「あの、もしかするとコレット様も同席されているのですか?」

私が尋ねると義母は戸惑いの表情を浮かべた。

「エルザ…やはりコレット令嬢のことをご存知だったのね?」

「はい。一度セシルとカフェでお茶を飲んでいる所をお会いしました。そしてその日の夜にブライトン家にお父上と一緒にいらっしゃいました」

「そう…それは迷惑をかけてしまったわね…」

義母はため息をついた。

「コレット令嬢は…ずっとセシルと貴女の仲を疑っていて、以前からセシルに貴女に会わせるように迫っていたのよ。…ひょっとしてこの話は知っていたかしら?」

「はい。コレット様から伺いました」

「そうだったのね。コレット令嬢の話によれば、昨夜セシルに会った時にその話をしたところ…口論になってしまったそうなの。それでコレット令嬢は怒って帰ろうとした時に、暴走した馬車が突然現れて…危うく轢かれそうになったところをセシルが身を挺してかばったらしくて…代わりに、事故に…」

義母の目に涙が浮かんだ――。
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