挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

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第136話 切なさのこめられた手紙

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 エルザへ

 兄さんが亡くなり、エルザもルークも去って行ったことでアンバー家は火が消えたように静かになってしまったよ。
欲を言えばエルザにはずっとアンバー家に残って貰いたかったし、俺の仕事を手伝って貰いたかった。
その代わり、俺が兄さんの代わりにルークの父親代わりになれればと考えていたけれどもそれは甘い考えだったみたいだ。

 本当は兄さんが癌でもう長くないということを両親が知った直後から、すぐに見合いの話が出ていたんだ。

恐らく両親は俺の気持ちを知っていたから無理やりにでも見合いをさせて、そのまま婚約を結ばせようとしていたんだろうな。

けど、今は兄さんがこんな状態で見合いの話なんかしている場合じゃないと両親に伝えて先延ばしにして貰っていた。
そうすることでいつか、見合いの話が流れてしまうことを密かに祈っていたけれどもやはりそんな簡単にはいかないものだ。

 あの時、エルザから俺の結婚話が出てきたときは正直驚いたよ。
まさか両親から何か聞かされているのかと思ったけど、そんな様子でも無かったし。

つまり、エルザは俺が貴族令嬢と結婚して所帯を持つのが望ましいと思ったってことだよな?

 両親はエルザをアンバー家から自由にさせてやりたかったみたいだし、ブライトン家ではルークを跡取りにしたいって考えているなら俺の取るべき道は一つしかない。

エルザを快くアンバー家から出してやることだってね。


 この間、以前から勧められていた令嬢と見合いをしてきたよ。
相手の女性はまだ18歳と年若いが、どうやら俺は彼女に気に入られたらしい。

気が早いけど、2週間後に彼女と婚約することが決定したよ。
結婚式は兄さんの喪が明ける1年後になると思う。

 本当はエルザに直接会って婚約することを報告したかったけれど、両親にエルザと2人で会うことを禁じられてしまったんだ。

婚約が決まったのに別の女性と、ましてや亡くなった兄嫁と会うなんてとんでもないことだと釘を刺されてしまったんだ。

そんなわけで、もうエルザとは会えなくなってしまった。

こんなことになるのだったら、その前に躊躇わないで自分の気持ちを伝えていればよかったと今では激しく後悔している。

でも今更過ぎたことだから後悔しても手遅れだけどな。


 エルザの荷物はそれで全てだと思う。
もし不足分があるなら、執事のチャールズに連絡を入れてくれ。


エルザ、元気でな。

ルークと2人の幸せを祈っている。


追伸

婚約式は行わないけれど、来年の結婚式には少し成長したルークと一緒に出席して欲しいと考えている。
その時は招待状を送るから、前向きに出席を検討してもらえないかな?


セシルより


****


「セシル……」

手紙は…そこで終わっていた――。
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