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第121話 葬儀の席で
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参列者達の好奇の目に晒されながら、私はセシルの押す車椅子で最前列へとやってきた。
「来たのか…エルザ」
「会うのは2日ぶりね…」
礼拝堂の最前列に座っていたお義父様とお義母様が、すっかりやつれ切った様子で私に声を掛けてきた。
奥の席にはお父様の姿も見える。
「申し訳ございません…ずっと体調が良くなかったものですから」
「いいのよ、まだ出産したばかりなのだから無理も無いわ。それより式に参列して大丈夫だったの?貴女の身体が心配だわ」
「ああ、そうだ。葬儀に参列したい気持ちは分かるが…もし少しでも体調が悪くなったらいつでも言いなさい」」
結婚後、初めてお義父様とお義母様に優しい言葉を掛けてもらえた。
「はい…お気遣い、ありがとうございます…」
「エルザはベンチに座らずにそのまま車椅子に座っていろ。移動するときは俺が車椅子を押してやるから」
「…ありがとう、セシル。でも…」
先程、参列者達の好奇心に満ちた目と…聞こえてきた囁き声が耳について離れない。
「何も気にすることは無いわ、エルザ」
すると今迄口を閉ざしていた母が声を掛けてきた。
「お母様…」
「そうだ、エルザ。あんな言葉は聞く耳を保つ必要は無い。毅然とした態度を取っていればいいんだ」
「セシル…。分かったわ」
セシルの言葉に頷き、私は祭壇に目を向けた。
そうだ、今はフィリップのお葬式…。
私の愛する彼との最後のお別れの式なのだから、集中しなければ…。
手の中にある、黒いハンカチをギュッと握りしめた―。
やがて、神父様が祭壇に現れると祈りの言葉が読み上げられる。
体調は良くは無かったが、私は神父様の言葉に耳を傾け…じっと最後のお別れの刻を待った。
**
神父様の言葉が終わり、パイプオルガンに合わせて賛美歌を歌い終わるといよいよ最後の手向けの花を供える儀式が訪れた。
最前列に並んだお義父様とお義母様は真っ白なユリとカーネーションを手に、棺の中のフィリップと別れを告げている。
お義父様とお義母様の顔は涙で真っ赤になっていた。
それを見ているだけで私はまだフィリップの顔すら見ていないのに泣けてしまいそうになってくる。
「…ッ…」
下唇をギュッと噛みしめ、俯いていると右側に座ったセシルが私の握りしめた手に触れてきた。
「セシル…」
顔を上げてセシルを見た。セシルの顔も今にも泣きそうになっていた。
こんなことをしてはいけないのに。
ますます参列者達の好奇の目に晒されてしまうのに…セシルの上から重ねられた温かで大きな手が…何よりも嬉しかった。
ありがとう…セシル。
貴方だって辛いのに…私を慰めてくれて…。
私は心の中でセシルに感謝の言葉を述べた。
やがて、お義父様とお義母様が席に戻ってくると次は私のお別れの番だった。
これ以上好奇の目に晒されるのは嫌だったので、私は1人で車椅子を動かしたかったのにセシルは当然のように立ち上がると、私の車いすを棺に向かて押していく。
ざわ…っ
礼拝堂の雰囲気が変わった。
人々の視線が背後から突き刺さってくるようだった。
何故、そんな目で見られなければならないのだろう?私は静かにフィリップと最後の別れをしたいのに…どうしてそっとしておいてくれないのだろう?
すると、私の心を察したのかセシルが囁くように言った。
「エルザ、何も気にするな。兄さんが…エルザを待ってるんだ。行こう」
フィリップが私を待っている…。
そうだ、フィリップは私を待っていてくれる。
周りなんか関係ない。
だって、私には何もやましいことは一つもないのだから。
「フィリップ…今、会いに行くわ…」
セシルの押す車いすの上で、私はそっと呟いた――。
「来たのか…エルザ」
「会うのは2日ぶりね…」
礼拝堂の最前列に座っていたお義父様とお義母様が、すっかりやつれ切った様子で私に声を掛けてきた。
奥の席にはお父様の姿も見える。
「申し訳ございません…ずっと体調が良くなかったものですから」
「いいのよ、まだ出産したばかりなのだから無理も無いわ。それより式に参列して大丈夫だったの?貴女の身体が心配だわ」
「ああ、そうだ。葬儀に参列したい気持ちは分かるが…もし少しでも体調が悪くなったらいつでも言いなさい」」
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「はい…お気遣い、ありがとうございます…」
「エルザはベンチに座らずにそのまま車椅子に座っていろ。移動するときは俺が車椅子を押してやるから」
「…ありがとう、セシル。でも…」
先程、参列者達の好奇心に満ちた目と…聞こえてきた囁き声が耳について離れない。
「何も気にすることは無いわ、エルザ」
すると今迄口を閉ざしていた母が声を掛けてきた。
「お母様…」
「そうだ、エルザ。あんな言葉は聞く耳を保つ必要は無い。毅然とした態度を取っていればいいんだ」
「セシル…。分かったわ」
セシルの言葉に頷き、私は祭壇に目を向けた。
そうだ、今はフィリップのお葬式…。
私の愛する彼との最後のお別れの式なのだから、集中しなければ…。
手の中にある、黒いハンカチをギュッと握りしめた―。
やがて、神父様が祭壇に現れると祈りの言葉が読み上げられる。
体調は良くは無かったが、私は神父様の言葉に耳を傾け…じっと最後のお別れの刻を待った。
**
神父様の言葉が終わり、パイプオルガンに合わせて賛美歌を歌い終わるといよいよ最後の手向けの花を供える儀式が訪れた。
最前列に並んだお義父様とお義母様は真っ白なユリとカーネーションを手に、棺の中のフィリップと別れを告げている。
お義父様とお義母様の顔は涙で真っ赤になっていた。
それを見ているだけで私はまだフィリップの顔すら見ていないのに泣けてしまいそうになってくる。
「…ッ…」
下唇をギュッと噛みしめ、俯いていると右側に座ったセシルが私の握りしめた手に触れてきた。
「セシル…」
顔を上げてセシルを見た。セシルの顔も今にも泣きそうになっていた。
こんなことをしてはいけないのに。
ますます参列者達の好奇の目に晒されてしまうのに…セシルの上から重ねられた温かで大きな手が…何よりも嬉しかった。
ありがとう…セシル。
貴方だって辛いのに…私を慰めてくれて…。
私は心の中でセシルに感謝の言葉を述べた。
やがて、お義父様とお義母様が席に戻ってくると次は私のお別れの番だった。
これ以上好奇の目に晒されるのは嫌だったので、私は1人で車椅子を動かしたかったのにセシルは当然のように立ち上がると、私の車いすを棺に向かて押していく。
ざわ…っ
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セシルの押す車いすの上で、私はそっと呟いた――。
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