99 / 204
第97話 2人で一緒に
しおりを挟む
「フィリップ。少し話が長くなるかもしれないけど…仕事の方は大丈夫なの?」
「うん、大丈夫だよ。今は仕事のほとんどをセシルに任せてあるんだ。僕は今はセシルのサポート役のようなものだよ」
「セシルには説明しなくても平気なの?」
「平気だよ。エルザの所へ行ってくると伝えてあるからね」
穏やかに答えるフィリップ。
「そう…なら、ソファに座って話をしない?」
「うん、そうだね。そうしよう」
私とフィリップはソファに並んで座り、母とどんな会話を交わしたのか説明を始めた。
「母に赤ちゃんが出来たことを…まず報告したのよ。その時まではフィリップの病気のことは全く話そうとはおもっていなかったの。だけど…」
私は目を伏せた。
「エルザ…?どうしたの?」
フィリップが心配そうに声を掛けてきた。
「あ、あのね…。フィリップは時々病院に通っているでしょう?」
「うん、そうだね」
「その時、いつの話かは分からないけれど父が…知り合いが入院しているので病院にお見舞いに行った時、貴方を病院で見たらしいの」
「え…?」
フィリップの顔が曇った。
「貴方は車椅子に乗せられていて…看護婦さんが車椅子を押していたそうよ。その時酷く青い顔をしていたって父が話していたそうなの」
「そうだったのか…。確かに僕は最近よく病院に通ってはいるけれど…まさかエルザのお父さんがお見舞いに行っていたなんて…」
「それで、母に追及されて…本当はフィリップの許可を得てから病気のことを話そうと思っていたのに…どうしても説明せざるを得なかったの…。ごめんなさい、貴方に相談もせずに…」
勝手に病気のことを話してしまった申し訳なさで、項垂れた。
「いいんだよ、エルザ。君は僕の妻なんだから…僕の許可を得なくてもご両親に病気のことを話してもらっても全然かまわないからね?」
フィリップは私の髪を撫でながら語りかけてくる。
「フィリップ…」
彼の優しい言葉と仕草に、思わず涙が目に浮かぶ。
「エルザ?ど、どうしたの?」
私が突然涙ぐんだからだろう。フィリップが困った様子で私の顔を覗き込んできた。
「ご、ごめんなさい…フィリップ。は、母が…酷いことを言ったの…」
「酷いこと…?」
「ええ…。フィリップの病気のことを告げたら…貴方が亡くなった後はどうするつもりだって問い詰められたの」
「そう…なんだ…。それで?」
「そんな…貴方が…な、亡くなった後のことなんて…私にはまだ分からないわ。だから今考えている最中だって伝えようとしたのに…母が…」
「何て言われたんだい?」
「当然アンバー家を出て、子供も一緒にこの家に戻ってくるのよね?って母に言われたわ…」
「!」
私の言葉に一瞬、フィリップの肩がピクリと動いた。
「ごめんなさい…フィリップ…は、母が…酷いことを…」
私の目から、とうとうこらえきれずに涙が溢れてきた。
フィリップが死ぬことなんて考えたくも無いのに、そう遠くない未来に彼を失ってしまうなんて…。
母から突き付けられた現実が辛くてたまらなかった。
「エルザ…ごめん。不安な思いをさせてしまって…でも大丈夫。君は何も心配することは無いよ。今は子供を無事に出産する事だけを考えていればいいからね?僕が…何とかしてあげるから」
フィリップが私を抱き寄せてきた。
「何とかって…?どうするつもりなの?」
フィリップにしがみつきながら尋ねた。
「…僕もまだどうすればいいか、分からないから…よく考えてみるよ」
「ええ…2人で一緒に考えましょう?」
「うん。でも…話してくれてありがとう。それじゃ僕は仕事に戻るよ。」
フィリップが立ち上がった。
「ええ」
返事をするとフィリップは笑みを浮かべて部屋から出て行った。
パタン…
扉が閉じられ、再び私は1人になった。
「フィリップに相談して良かったわ…」
少し心の負担が減って、私は安堵のため息をついた。
けれど、この時…すでにフィリップの心にはある決意があったのだ。
私がそのことを知るのはもう少し後のことになる―。
「うん、大丈夫だよ。今は仕事のほとんどをセシルに任せてあるんだ。僕は今はセシルのサポート役のようなものだよ」
「セシルには説明しなくても平気なの?」
「平気だよ。エルザの所へ行ってくると伝えてあるからね」
穏やかに答えるフィリップ。
「そう…なら、ソファに座って話をしない?」
「うん、そうだね。そうしよう」
私とフィリップはソファに並んで座り、母とどんな会話を交わしたのか説明を始めた。
「母に赤ちゃんが出来たことを…まず報告したのよ。その時まではフィリップの病気のことは全く話そうとはおもっていなかったの。だけど…」
私は目を伏せた。
「エルザ…?どうしたの?」
フィリップが心配そうに声を掛けてきた。
「あ、あのね…。フィリップは時々病院に通っているでしょう?」
「うん、そうだね」
「その時、いつの話かは分からないけれど父が…知り合いが入院しているので病院にお見舞いに行った時、貴方を病院で見たらしいの」
「え…?」
フィリップの顔が曇った。
「貴方は車椅子に乗せられていて…看護婦さんが車椅子を押していたそうよ。その時酷く青い顔をしていたって父が話していたそうなの」
「そうだったのか…。確かに僕は最近よく病院に通ってはいるけれど…まさかエルザのお父さんがお見舞いに行っていたなんて…」
「それで、母に追及されて…本当はフィリップの許可を得てから病気のことを話そうと思っていたのに…どうしても説明せざるを得なかったの…。ごめんなさい、貴方に相談もせずに…」
勝手に病気のことを話してしまった申し訳なさで、項垂れた。
「いいんだよ、エルザ。君は僕の妻なんだから…僕の許可を得なくてもご両親に病気のことを話してもらっても全然かまわないからね?」
フィリップは私の髪を撫でながら語りかけてくる。
「フィリップ…」
彼の優しい言葉と仕草に、思わず涙が目に浮かぶ。
「エルザ?ど、どうしたの?」
私が突然涙ぐんだからだろう。フィリップが困った様子で私の顔を覗き込んできた。
「ご、ごめんなさい…フィリップ。は、母が…酷いことを言ったの…」
「酷いこと…?」
「ええ…。フィリップの病気のことを告げたら…貴方が亡くなった後はどうするつもりだって問い詰められたの」
「そう…なんだ…。それで?」
「そんな…貴方が…な、亡くなった後のことなんて…私にはまだ分からないわ。だから今考えている最中だって伝えようとしたのに…母が…」
「何て言われたんだい?」
「当然アンバー家を出て、子供も一緒にこの家に戻ってくるのよね?って母に言われたわ…」
「!」
私の言葉に一瞬、フィリップの肩がピクリと動いた。
「ごめんなさい…フィリップ…は、母が…酷いことを…」
私の目から、とうとうこらえきれずに涙が溢れてきた。
フィリップが死ぬことなんて考えたくも無いのに、そう遠くない未来に彼を失ってしまうなんて…。
母から突き付けられた現実が辛くてたまらなかった。
「エルザ…ごめん。不安な思いをさせてしまって…でも大丈夫。君は何も心配することは無いよ。今は子供を無事に出産する事だけを考えていればいいからね?僕が…何とかしてあげるから」
フィリップが私を抱き寄せてきた。
「何とかって…?どうするつもりなの?」
フィリップにしがみつきながら尋ねた。
「…僕もまだどうすればいいか、分からないから…よく考えてみるよ」
「ええ…2人で一緒に考えましょう?」
「うん。でも…話してくれてありがとう。それじゃ僕は仕事に戻るよ。」
フィリップが立ち上がった。
「ええ」
返事をするとフィリップは笑みを浮かべて部屋から出て行った。
パタン…
扉が閉じられ、再び私は1人になった。
「フィリップに相談して良かったわ…」
少し心の負担が減って、私は安堵のため息をついた。
けれど、この時…すでにフィリップの心にはある決意があったのだ。
私がそのことを知るのはもう少し後のことになる―。
193
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる