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第97話 2人で一緒に
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「フィリップ。少し話が長くなるかもしれないけど…仕事の方は大丈夫なの?」
「うん、大丈夫だよ。今は仕事のほとんどをセシルに任せてあるんだ。僕は今はセシルのサポート役のようなものだよ」
「セシルには説明しなくても平気なの?」
「平気だよ。エルザの所へ行ってくると伝えてあるからね」
穏やかに答えるフィリップ。
「そう…なら、ソファに座って話をしない?」
「うん、そうだね。そうしよう」
私とフィリップはソファに並んで座り、母とどんな会話を交わしたのか説明を始めた。
「母に赤ちゃんが出来たことを…まず報告したのよ。その時まではフィリップの病気のことは全く話そうとはおもっていなかったの。だけど…」
私は目を伏せた。
「エルザ…?どうしたの?」
フィリップが心配そうに声を掛けてきた。
「あ、あのね…。フィリップは時々病院に通っているでしょう?」
「うん、そうだね」
「その時、いつの話かは分からないけれど父が…知り合いが入院しているので病院にお見舞いに行った時、貴方を病院で見たらしいの」
「え…?」
フィリップの顔が曇った。
「貴方は車椅子に乗せられていて…看護婦さんが車椅子を押していたそうよ。その時酷く青い顔をしていたって父が話していたそうなの」
「そうだったのか…。確かに僕は最近よく病院に通ってはいるけれど…まさかエルザのお父さんがお見舞いに行っていたなんて…」
「それで、母に追及されて…本当はフィリップの許可を得てから病気のことを話そうと思っていたのに…どうしても説明せざるを得なかったの…。ごめんなさい、貴方に相談もせずに…」
勝手に病気のことを話してしまった申し訳なさで、項垂れた。
「いいんだよ、エルザ。君は僕の妻なんだから…僕の許可を得なくてもご両親に病気のことを話してもらっても全然かまわないからね?」
フィリップは私の髪を撫でながら語りかけてくる。
「フィリップ…」
彼の優しい言葉と仕草に、思わず涙が目に浮かぶ。
「エルザ?ど、どうしたの?」
私が突然涙ぐんだからだろう。フィリップが困った様子で私の顔を覗き込んできた。
「ご、ごめんなさい…フィリップ。は、母が…酷いことを言ったの…」
「酷いこと…?」
「ええ…。フィリップの病気のことを告げたら…貴方が亡くなった後はどうするつもりだって問い詰められたの」
「そう…なんだ…。それで?」
「そんな…貴方が…な、亡くなった後のことなんて…私にはまだ分からないわ。だから今考えている最中だって伝えようとしたのに…母が…」
「何て言われたんだい?」
「当然アンバー家を出て、子供も一緒にこの家に戻ってくるのよね?って母に言われたわ…」
「!」
私の言葉に一瞬、フィリップの肩がピクリと動いた。
「ごめんなさい…フィリップ…は、母が…酷いことを…」
私の目から、とうとうこらえきれずに涙が溢れてきた。
フィリップが死ぬことなんて考えたくも無いのに、そう遠くない未来に彼を失ってしまうなんて…。
母から突き付けられた現実が辛くてたまらなかった。
「エルザ…ごめん。不安な思いをさせてしまって…でも大丈夫。君は何も心配することは無いよ。今は子供を無事に出産する事だけを考えていればいいからね?僕が…何とかしてあげるから」
フィリップが私を抱き寄せてきた。
「何とかって…?どうするつもりなの?」
フィリップにしがみつきながら尋ねた。
「…僕もまだどうすればいいか、分からないから…よく考えてみるよ」
「ええ…2人で一緒に考えましょう?」
「うん。でも…話してくれてありがとう。それじゃ僕は仕事に戻るよ。」
フィリップが立ち上がった。
「ええ」
返事をするとフィリップは笑みを浮かべて部屋から出て行った。
パタン…
扉が閉じられ、再び私は1人になった。
「フィリップに相談して良かったわ…」
少し心の負担が減って、私は安堵のため息をついた。
けれど、この時…すでにフィリップの心にはある決意があったのだ。
私がそのことを知るのはもう少し後のことになる―。
「うん、大丈夫だよ。今は仕事のほとんどをセシルに任せてあるんだ。僕は今はセシルのサポート役のようなものだよ」
「セシルには説明しなくても平気なの?」
「平気だよ。エルザの所へ行ってくると伝えてあるからね」
穏やかに答えるフィリップ。
「そう…なら、ソファに座って話をしない?」
「うん、そうだね。そうしよう」
私とフィリップはソファに並んで座り、母とどんな会話を交わしたのか説明を始めた。
「母に赤ちゃんが出来たことを…まず報告したのよ。その時まではフィリップの病気のことは全く話そうとはおもっていなかったの。だけど…」
私は目を伏せた。
「エルザ…?どうしたの?」
フィリップが心配そうに声を掛けてきた。
「あ、あのね…。フィリップは時々病院に通っているでしょう?」
「うん、そうだね」
「その時、いつの話かは分からないけれど父が…知り合いが入院しているので病院にお見舞いに行った時、貴方を病院で見たらしいの」
「え…?」
フィリップの顔が曇った。
「貴方は車椅子に乗せられていて…看護婦さんが車椅子を押していたそうよ。その時酷く青い顔をしていたって父が話していたそうなの」
「そうだったのか…。確かに僕は最近よく病院に通ってはいるけれど…まさかエルザのお父さんがお見舞いに行っていたなんて…」
「それで、母に追及されて…本当はフィリップの許可を得てから病気のことを話そうと思っていたのに…どうしても説明せざるを得なかったの…。ごめんなさい、貴方に相談もせずに…」
勝手に病気のことを話してしまった申し訳なさで、項垂れた。
「いいんだよ、エルザ。君は僕の妻なんだから…僕の許可を得なくてもご両親に病気のことを話してもらっても全然かまわないからね?」
フィリップは私の髪を撫でながら語りかけてくる。
「フィリップ…」
彼の優しい言葉と仕草に、思わず涙が目に浮かぶ。
「エルザ?ど、どうしたの?」
私が突然涙ぐんだからだろう。フィリップが困った様子で私の顔を覗き込んできた。
「ご、ごめんなさい…フィリップ。は、母が…酷いことを言ったの…」
「酷いこと…?」
「ええ…。フィリップの病気のことを告げたら…貴方が亡くなった後はどうするつもりだって問い詰められたの」
「そう…なんだ…。それで?」
「そんな…貴方が…な、亡くなった後のことなんて…私にはまだ分からないわ。だから今考えている最中だって伝えようとしたのに…母が…」
「何て言われたんだい?」
「当然アンバー家を出て、子供も一緒にこの家に戻ってくるのよね?って母に言われたわ…」
「!」
私の言葉に一瞬、フィリップの肩がピクリと動いた。
「ごめんなさい…フィリップ…は、母が…酷いことを…」
私の目から、とうとうこらえきれずに涙が溢れてきた。
フィリップが死ぬことなんて考えたくも無いのに、そう遠くない未来に彼を失ってしまうなんて…。
母から突き付けられた現実が辛くてたまらなかった。
「エルザ…ごめん。不安な思いをさせてしまって…でも大丈夫。君は何も心配することは無いよ。今は子供を無事に出産する事だけを考えていればいいからね?僕が…何とかしてあげるから」
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「…僕もまだどうすればいいか、分からないから…よく考えてみるよ」
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「うん。でも…話してくれてありがとう。それじゃ僕は仕事に戻るよ。」
フィリップが立ち上がった。
「ええ」
返事をするとフィリップは笑みを浮かべて部屋から出て行った。
パタン…
扉が閉じられ、再び私は1人になった。
「フィリップに相談して良かったわ…」
少し心の負担が減って、私は安堵のため息をついた。
けれど、この時…すでにフィリップの心にはある決意があったのだ。
私がそのことを知るのはもう少し後のことになる―。
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