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16.新たな婚約者候補は襲われる
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いきなり夕方に祖父が屋敷へと乗り込んできた。
あの夜会のあとに『三人の婚約者候補達から選ぶことは無理です、問題が有り過ぎます!!』と書いた長い手紙を送ったのでそれを読んで来たのだろう。
相変わらずの突撃の訪問だったから逃げ出す間もなかった。
なんだか晩ごはんの時間帯に大きなしゃもじを持った人に突撃訪問を受ける人達の気持ちが分かった気がする。
不意打ちは本当に困るものだ。
本当なら断りたいが、屋敷の前で居座られたら居留守だって使えない…。
むむっ、こんなことなら両親と一緒に出掛ければ良かったわ。
お兄様を心配するんじゃなかった…。
両親は友人夫妻に招かれて留守にしている。
私も誘われたが、フワフワしている兄がちょっとだけ心配だからと仏心を出して残ってしまったのだ。
ちょっとフワフワしているだけなら命の危険はない、切り捨てるべきだった。
後悔時すでに遅し…。
きっと新たな婚約者候補達の釣書が山ほど持ってきているに違いないと思いため息が出てきた。
祖父が優良物件なんて持ってくるわけがない。ひ孫誕生のスピードと顔だけを重視するから、おのずと訳ありしか集まらないのだろう。
何度繰り返しても選べないという結果になる気しかしない。
もう勘弁してください!
このままだと…お祖父様を毒薬で物理的に殺ってしまいそう。
うーん??でも呪いでも物理的にでも結果が同じならいいかしら?
過程は重要ではないわよね?
私が求めているのは結果?だから。
まあ…挑戦してもいいかな…。
たぶん…いいよね?!
バレなければいいのではないかと、甘い誘惑に負けそうになる私は悪くないはずだ。
そんなことを考えながら、祖父が待つ応接室へと向かった。
その手にはまだ毒薬はない。
こんな優しい私を誰かに褒めてもらいたい。
「お待たせいたしました、お祖父様」
心の中で毒薬を握りしめ笑顔で登場する。
『ほっほほほー』まさに完璧な令嬢だ。
今日、お祖父様の運命が決まる。
生か…はたまた死か…。
それはお祖父様の態度で決まる。
私は実行するのみ。
つまり決めるのはお祖父様だ。
計画者?は祖父自身で私はただの実行犯?。
ということは罪が重いのはお祖父様に決定!!
人間追い込まれるのと独自の理論で自己防衛に励むようだ。
きっと祖父が相手にならこれくらい許される。
いざ勝負と、部屋にいる祖父に目を向けるとなんと祖父の隣にはあのトナがいた。
え、ええっ…!どうして彼が!
なんで、どうして…。
でも…嬉しいな、うふふ。
わけが分からずに驚きと喜びでワタワタとしてしまう。すると祖父はそんな私に驚くべきことを告げてきた。
「あー、なんだな。彼はお前の新たな婚約者候補だ。
お勧めとは言い難いが、ひ孫の誕生の数には自信があると言うのでな連れてきた。まあまだまだ釣書は用意してあるから断ってもいいぞ。エミリアが決めなさい」
生まれて初めてお祖父様が良いことを言った。
…信じられない。
これは夢…?
きっと夢よね。だってお祖父様がトナを連れてきたうえに婚約者にしていいなんて。
彼もニコニコと笑ってくれている…。
なんて都合に良い夢なんだろうか。
いいよね、夢ならいいわよね…なにしても。
私はフラフラとしながらトナに向かって歩いていく。
彼の前まで来ると彼のほうが背が高いので目的が達成できないことを知る。でもここで諦めはしない、夢の中でも全力投球だ。
おもむろに近くにあった足置きをズズッと引き寄せその上にあがる。
完璧だった、目の前には愛おしいトナの顔がある。
むんずと彼の頬を両手で挟み逃げられないようにする。ぎょっとする彼にもお構いなしだ。
こんな表情は見慣れている。
大丈夫、これは夢だからなんでも許される。
なんだって叶う、叶えちゃう!!
自分で自分を全力で応援する。
勇気を出して彼の唇に自分の唇をそっと優しく重ねる。初めてだったからこれでいいか分からない。
だから何度も角度を変えて口づけを交わす。なんだか夢にしては生温かく凄く気持ちがいい。
うぁ~、なにこれ。
ドキドキとふわふわでボーとしちゃう。
夢の中でもこんなに素敵なんだ…。
遠慮しないで良かったわ。
名残惜しいけどそっとトナから唇を離す。
夢とはいえ、これ以上気持ちの良いことを続けていたら私は次に進もうとしてしまう。それにはまだ勉強が足りない、もっと兄がベットの下に隠し持っているお宝を熟読して自信をつけてから挑戦しよう。
「もう終わりか?エミリア。このなもんじゃ俺は満足できねーぞ、もっとしてくれ」
ちょっと意地悪そうにニヤリとするトナの顔が目の前にある。
…なんか嫌な予感がする。
ギギギっと音を立てながら首を祖父に向けると。
「これはすぐにでもひ孫誕生が期待できるな。
エミリア、遠慮はいらん。その調子で全力で頑張れ!多少順番が前後しても儂がなんとでもしてやるからな。心配はいらん」
…夢じゃなかった。
生まれて初めて私は貴族令嬢の十八番『儚げに失神』を使うことにした。
…もうこれしかない。
真っ赤な顔で彼の腕に収まりながら私は心の中で必死に穴を掘り進める。望み通りになったけど、今はこの現実から逃げる手段を必死になって探していた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
文中に『突撃!隣の○ごはん』という番組に関する表現があります。意味が変わらない読者様はお調べください♪
あの夜会のあとに『三人の婚約者候補達から選ぶことは無理です、問題が有り過ぎます!!』と書いた長い手紙を送ったのでそれを読んで来たのだろう。
相変わらずの突撃の訪問だったから逃げ出す間もなかった。
なんだか晩ごはんの時間帯に大きなしゃもじを持った人に突撃訪問を受ける人達の気持ちが分かった気がする。
不意打ちは本当に困るものだ。
本当なら断りたいが、屋敷の前で居座られたら居留守だって使えない…。
むむっ、こんなことなら両親と一緒に出掛ければ良かったわ。
お兄様を心配するんじゃなかった…。
両親は友人夫妻に招かれて留守にしている。
私も誘われたが、フワフワしている兄がちょっとだけ心配だからと仏心を出して残ってしまったのだ。
ちょっとフワフワしているだけなら命の危険はない、切り捨てるべきだった。
後悔時すでに遅し…。
きっと新たな婚約者候補達の釣書が山ほど持ってきているに違いないと思いため息が出てきた。
祖父が優良物件なんて持ってくるわけがない。ひ孫誕生のスピードと顔だけを重視するから、おのずと訳ありしか集まらないのだろう。
何度繰り返しても選べないという結果になる気しかしない。
もう勘弁してください!
このままだと…お祖父様を毒薬で物理的に殺ってしまいそう。
うーん??でも呪いでも物理的にでも結果が同じならいいかしら?
過程は重要ではないわよね?
私が求めているのは結果?だから。
まあ…挑戦してもいいかな…。
たぶん…いいよね?!
バレなければいいのではないかと、甘い誘惑に負けそうになる私は悪くないはずだ。
そんなことを考えながら、祖父が待つ応接室へと向かった。
その手にはまだ毒薬はない。
こんな優しい私を誰かに褒めてもらいたい。
「お待たせいたしました、お祖父様」
心の中で毒薬を握りしめ笑顔で登場する。
『ほっほほほー』まさに完璧な令嬢だ。
今日、お祖父様の運命が決まる。
生か…はたまた死か…。
それはお祖父様の態度で決まる。
私は実行するのみ。
つまり決めるのはお祖父様だ。
計画者?は祖父自身で私はただの実行犯?。
ということは罪が重いのはお祖父様に決定!!
人間追い込まれるのと独自の理論で自己防衛に励むようだ。
きっと祖父が相手にならこれくらい許される。
いざ勝負と、部屋にいる祖父に目を向けるとなんと祖父の隣にはあのトナがいた。
え、ええっ…!どうして彼が!
なんで、どうして…。
でも…嬉しいな、うふふ。
わけが分からずに驚きと喜びでワタワタとしてしまう。すると祖父はそんな私に驚くべきことを告げてきた。
「あー、なんだな。彼はお前の新たな婚約者候補だ。
お勧めとは言い難いが、ひ孫の誕生の数には自信があると言うのでな連れてきた。まあまだまだ釣書は用意してあるから断ってもいいぞ。エミリアが決めなさい」
生まれて初めてお祖父様が良いことを言った。
…信じられない。
これは夢…?
きっと夢よね。だってお祖父様がトナを連れてきたうえに婚約者にしていいなんて。
彼もニコニコと笑ってくれている…。
なんて都合に良い夢なんだろうか。
いいよね、夢ならいいわよね…なにしても。
私はフラフラとしながらトナに向かって歩いていく。
彼の前まで来ると彼のほうが背が高いので目的が達成できないことを知る。でもここで諦めはしない、夢の中でも全力投球だ。
おもむろに近くにあった足置きをズズッと引き寄せその上にあがる。
完璧だった、目の前には愛おしいトナの顔がある。
むんずと彼の頬を両手で挟み逃げられないようにする。ぎょっとする彼にもお構いなしだ。
こんな表情は見慣れている。
大丈夫、これは夢だからなんでも許される。
なんだって叶う、叶えちゃう!!
自分で自分を全力で応援する。
勇気を出して彼の唇に自分の唇をそっと優しく重ねる。初めてだったからこれでいいか分からない。
だから何度も角度を変えて口づけを交わす。なんだか夢にしては生温かく凄く気持ちがいい。
うぁ~、なにこれ。
ドキドキとふわふわでボーとしちゃう。
夢の中でもこんなに素敵なんだ…。
遠慮しないで良かったわ。
名残惜しいけどそっとトナから唇を離す。
夢とはいえ、これ以上気持ちの良いことを続けていたら私は次に進もうとしてしまう。それにはまだ勉強が足りない、もっと兄がベットの下に隠し持っているお宝を熟読して自信をつけてから挑戦しよう。
「もう終わりか?エミリア。このなもんじゃ俺は満足できねーぞ、もっとしてくれ」
ちょっと意地悪そうにニヤリとするトナの顔が目の前にある。
…なんか嫌な予感がする。
ギギギっと音を立てながら首を祖父に向けると。
「これはすぐにでもひ孫誕生が期待できるな。
エミリア、遠慮はいらん。その調子で全力で頑張れ!多少順番が前後しても儂がなんとでもしてやるからな。心配はいらん」
…夢じゃなかった。
生まれて初めて私は貴族令嬢の十八番『儚げに失神』を使うことにした。
…もうこれしかない。
真っ赤な顔で彼の腕に収まりながら私は心の中で必死に穴を掘り進める。望み通りになったけど、今はこの現実から逃げる手段を必死になって探していた。
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文中に『突撃!隣の○ごはん』という番組に関する表現があります。意味が変わらない読者様はお調べください♪
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